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絶望の救世主(仮題)  作者: ぜるとなぁ
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第一話 逆行した世界

……きて…て……


 真黒の意識の中、俺は泳いでいた。

感覚の無い現状泳いでいたと表現するには難が有るが、それでも俺は泳いでいた。


…ば……って…


 懐かしい声が聞こえる気がする。

今、俺が居る此処は死後の世界なのか?東の国で、一度聞いた事のある様な


「起きてってば!!!!!!!」

「うおぅ!?!」


 顔に力強い衝撃を受けた俺は、情けない声を出しながら跳び跳ねた。

俺はベッドに横になっていたらしく、かぶっていた布団を吹き飛ばしながら起き上がり。

真っ先に目に入った人の顔を見て、時間が止まった。


「もう……、一体何回声をかけたと思ってるの?」

「お、え……、あ?」


 情けない声しか連続で出ていない。

だけど、俺は理解できない。ありえないからだ。

嘘だ、ありえない。


「シルフィーちゃーん!リューク起きたー?」

「おばさーん!まだぼーっとしてるー!」


 それを否定するかの様に、遠くから聞こえてくる声。

漸く視界に入る物が理解出来てくる。今、俺は俺の部屋に居る。

少し年季の入った壁に、ボロいベッド。

聞こえてきた声も、俺のお袋で。今、目の前に居るのは


「シル……、フィ?」

「んー?シルフィだよ、リュークどうしたの?」


 俺が守れなかった、シルフィが不思議そうに俺の顔を眺めている。

その銀色の髪を揺らしながら、くりくりとした可愛い目が俺を見つめている。

俺の手は自然と彼女の頬へと伸び、彼女は拒絶しなかった為その頬をなでた。

暖かい、最後に触った彼女の躯とは異なり彼女は生きている。

理由は分からない、だけど生きている。


 それだけの事実で、俺は涙が止まらなかった。


「え、え、リューク?えっ、本当にどうしちゃったの?」


 言葉にならない声で、嗚咽混じりにせき込み。俺は号泣しながら、シルフィのその柔らかい身体を抱きしめて。彼女は驚きながらも、俺の背中をずっと撫でてくれていた。




________________________



「二人とも若いのは分かるけど。朝からそういった行為はダメよ?」

「もー、おばさんってば。そうじゃないですって!」


 泣いた目をこすった事で、軽く腫れた目を俺は撫でながら。慣れ親しんだ木造である俺の家で、一番広い部屋で食事を摂っていた。俺がシルフィを抱きしめていた姿をお袋に見られ、それを茶化されている姿を見て心が落ち着くのが分かった。


 だけど、それでも俺の疑問は止まらない。

なぜ、シルフィが生きているんだ。死者を蘇らせる魔法は存在していない。それが原因で、一つの村が滅びかけそうになったのを助けた事もある。だから、それは確かだ。


「なぁ、今日って何年だったっけ」

「今日?変な言葉のまわし方だねー、今年は陽歴三六八年だよ?」


 頭が回っていないのか、シルフィに少しバカにされながら。俺は一つの答えに辿り着いた。

ただ、その答えすらも有りえない。

今、俺は十二年前に戻っている。証拠として、俺が魔王を倒した年三八零年だった。

世界が戻っている。そして、それを覚えているのは俺だけ。少なくとも、シルフィとお袋は覚えていない。


「ねぇ、リューク。そろそろ行かないと魔力検査に遅れちゃうよ?」


 そして、今日が俺の絶望への旅が始まる日だった。

俺は、成人を迎える者が行う魔力を測定する為の検査にて。歴代の勇者を凌ぐ潜在魔力を測定された。

それにより、国から勇者としての任務を与えられ。俺はそれが光栄に思え、世界を救う旅に出た。


 また、同じ道を辿るのか?

また、シルフィを殺すのか?


 また、俺は何も守れないのか?


「リューク……?大丈夫?朝から凄くしんどそうだよ?」


 そんな俺を心配するように軽くうつむいた俺の顔を覗き込みながら、頭をなでてくるシルフィ。

そうだよな、同じ道は辿る訳には行かない……よな?

少しだけ体調が悪かったと、もう大丈夫だよ。と、シルフィに伝えながら。俺は、コレからの自分の行動を頭の中で想定していく。

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