表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶望の救世主(仮題)  作者: ぜるとなぁ
1/3

Pr.  魔王を倒した勇者

「あぁ……、貴様の様な勇者に殺されるのも悪くない」


 たった今、俺が斬り伏せた"魔王"が満足気な顔で呟いた。魔王を象徴するような黒いローブに身を包んだ、悪魔の様な相貌をした男。ソイツが俺に手を伸ばしながら言葉を続けた。


「そして、そんなお前の絶望に満ちた顔を見れて私は満足____


 言葉を言い終える前に、魔王の首が跳んだ。俺が、斬り飛ばした。

"魔軍"に属する者の特徴である黒い血を、剣を振り払い周囲に散らしていく。赤色の血液と、黒い血液が混じった景色。

無言で空を見上げる俺を、真っ赤な夕日が照らしている。周りの俺が殺した敵。


 そして、死んだ俺の仲間達の躯を。

全部終わった。勇者としての使命を受けて、約十二年。苦楽を共にしてきた味方。

俺と、一生の愛を誓ってくれた"シルフィ"。俺が好きな彼女の銀色の髪が、倒れ伏した為に赤と黒で染まるのが目に入って来る。

ゆっくりと近付いて、俺のポケットから出したハンカチで彼女の髪をぬぐい始める。


「……なんで、なんで綺麗にならないんだよ」


 どれだけ拭っても、彼女の髪は元の色には戻らなかった。魔王を殺す為に枯渇した魔力では、浄化する為の魔法すらも唱えられない。

なにより、俺の身体が黒く染まっていた。百を超える魔軍を殺した俺の身体は、黒い血液により染め上げられている。当然のように、ポケットから出したハンカチも汚れていて。

 

 俺が、彼女の髪を更に汚している事実に慟哭した。

細い彼女の両腕は、力を象徴していた魔軍の幹部に消し飛ばされたままだ。その顔の一部は、地面で何度も吹き飛ばされ転がされた影響か抉れている。

眼球も、片方がこぼれ掛けていた。戻らない、綺麗な彼女の姿に。


 叫んだ、俺は一体何をしているのかと。

泣いた、俺は何を守りたかったのだと。

俺は、彼女の躯を抱きかかえ。使命を果たした剣を捨て、ゆっくりと歩き出した。



 半刻もの間、歩き続けた俺は海の見える崖へと辿り着いた。

魔軍が占拠していたこの島に辿り着いたのは数時間前。

その時はまだシルフィも生きて、他の仲間も生きていて。俺達は笑い合っていた。

バカな事を言い合って、俺は、俺は_____



「俺もそっちへ、行くからな」

 

 魔力を使い果たした俺の身体は一般人と変わらない。

彼女の躯を抱きかかえたまま、俺は崖から脚を踏み出し。そのまま遥か下方へと見える海へと____

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ