蟻の足掻き
久々の投稿です、遅れてごめんなさいm(__)m
アイディアの枯渇からは脱出できた?ので、これからはまた投稿ペースが上がると思うので応援宜しくお願いします!
魔素切れを起こし地に伏したサリア。
それほどまでに消耗してまで放った氷炎魔法でさえも悪魔を倒すに至らなかった。
相反する二つの力による消滅の魔法、その力の奔流に呑まれてなお健在の悪魔には傷一つついておらず、薄気味悪く光っている羊の仮面の黒い塗料ですら欠けらも削れていなかった。
何事もなかったかのように佇む羊仮面の悪魔、先ほどの出来事が蚊が止まったか何か……その程度にしかとらえていないような態度。
そんな化け物に対しレミーナは銀嶺突剣を、メーナは人差し指を突き出した手を構える。
無論、二人とも今すぐにでもサリアの元へと駆けつけたい……だが、下手に動こうものならこの悪魔に命を刈られかねない。
かの悪魔から滲み出ているどす黒いオーラは、実際には見えていなくとも身体がひしひしと感じ取っている。
不幸中の幸いか、サリアの生命維持を果たすだけの魔素は辛うじて残っているようだ。
仮にそれが尽きていようものなら呼吸すらままならないはず……倒れたサリアの身体が呼吸に合わせ上下する様から無事なのが分かる。
ひとまず安心した。
すぐに駆けつけて治療する必要がない、故の臨戦態勢である。
勿論、急いで治癒した方がいい。
それゆえ、一分一秒でも早くこの状況を打開することが必要である……。
万に一つの可能性すら無かろうとも……。
そのために打ち破るべき目の前の悪魔、そいつの体から滲み出る雰囲気にレミーナとメーナは息を飲む。
立ちはだかるあまりにも高い壁、蟻が城壁を越えようとしているに等しいであろう。
その上退くことも許されない。
前方に城壁、後方に大河……3匹の蟻がどうこうできるような状況でないことをレミーナとメーナは理解している、理解しているけれども……
「「逃げるわけにはいかないんだ!(です!)」」
受けに回れば確実に殺される、ならば……
「メーナ!」
「うん!」
息のあった掛け声、それが戦闘開始の狼煙となる。
「神撃火魔法」
一度防がれた獄炎、それが再び世に顕現する……が、無論この大気を焦がすほどの火炎は、彼の悪魔に通用しない。
だが、それでもメーナは自身における最大のこの魔法を精一杯放つ。
唯一可能性の持てる魔法なのだから……。
そのメーナ渾身の魔法、それをまたしても避ける気を見せず直撃を許す悪魔。
依然として仮面の穴から覗かせる眼は無表情のようで、迫る獄炎を気にもとめず冷たい視線を送る。
そして……その冷たい視線が実際に冷気を宿していたかのように、獄炎は悪魔の目の前で消滅した……。
「なっ!?」
渾身の魔法、それが突如消失した衝撃にメーナは呆気にとられていた。
だが、それはメーナだけではなかった……。
炎を滅した張本人、ここまで感情を一切露わにしてこなかった羊仮面の悪魔が目を細めていた。
身動きは全くとっていない……それでも手に取れるほどの変化が悪魔の瞳から把握できた。
そしてさらなる変化が……悪魔の唇に起こった。
「……ムフフ、相殺で済ませるとは……ムフフフフフ!」
「……やっぱり何かしたんだな……!」
突如笑みを浮かべて声を発しだした悪魔、それを見て己の魔法が何かの力で掻き消されたことをメーナは悟る。
同等威力の魔法に相殺されたとすれば、魔力同士の衝突により途轍もないエネルギーの爆発が生じたであろうが、その様子がこれっぽっちもなかった。
むしろ、神撃火魔法がひとりでに消えていったかのような感覚。
気持ちの悪い感覚であった。
喉から出発した声が、口から放たれるのを寸前にして消えてしまうかのような気持ちの悪いもどかしさ、メーナを襲う不快感は正にそのようなものと言って良いだろう。
ほんのコンマ数秒前まで覚悟を決めて魔法を繰り出していたとは思えないほどの豹変ぶりであった。
危険を感じる。
自分ではない。
仮面の悪魔が炎に巻かれる、もしくは何かしらの魔法で炎を相殺にかかっているこの瞬間を逃すまいと手筈通りに動いているレミーナに。
実際にはそんな隙など生じなかったのだから……。
「レ、レミィィィナァァ!」
後ろから耳に届く叫び声、それが何を意味するのかは何と無く想像がつく。
それでも足を動かした限りはもう止まれない……これが最後の攻撃なのだから……。
ーーーーーー幻影の如き薄氷の剣撃
馬鹿の一つ覚え、そう思われても仕方あるまい……それでも、今のレミーナにはこの攻撃以外にこの強敵に通用する攻撃があるとは思えなかった。
無論、これでも通用することはないであろう……それでも少しでも確率の高いものを選ばない手はない。
例えそれがつい先ほど破られたばかりの技であろうとも……。
例えこの攻撃を最後にこの身が朽ち果てようとも……。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
迫真の形相……己の全てを込めた一撃、それを悪魔の頭へと叩き込む。
「ムフフ……フ、フフ……ムムッ?」
レミーナの銀嶺突剣が悪魔の首に触れるほんの手前、そんな瞬間に悪魔の注意がレミーナから逸れた。
ーーーーーーいまだ!
「ムムムッ!?」
首を落とさんとする剣撃、それに気づいた悪魔。
もうほとんど刀身が首に触れそうなそのときだった。
レミーナたちの視界は暗黒にその全てを呑み込まれた……。
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突如訪れた夜、瞳孔が開きようやく黒い空に目が慣れてきた頃であった。
膝を地面につけ呆然とするレミーナの前には、悪魔の首……ではなく、悪魔の着用している羊仮面の左角が一本落ちていた……。
辺りを見回せど、あの悪魔の姿はどこにもない。
サリアもメーナも無事である。
一体何が起こったと言うのだろうか、この不思議な状況を前に何故か心が落ち着くレミーナであった……。
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翼をはばたかせる音がはるか上空に響く。
「ムフフフフフフフ歩みを妨げ、未知なる力の損失を妨げる……これで良いのですね、海神様?」
非現実的な漆黒の空、その中で黒く大きな翼を羽ばたかせる悪魔がニヤリと何処か嬉しそうな笑みを浮かべていたことは誰も知らない……。




