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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter3:東の砂漠の黄昏
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果てなき戦

氷炎魔法エル・ブレーラ


 小鳥のさえずりのような美しい詠唱、それとともに赤と青の花弁が白い塊を包み込む。


 白いフード、悪魔信仰者ディモニストたちは成すすべもなく、ただただ花弁の舞の中へと呑まれていく。


 しかし、いくら氷炎魔法エル・ブレーラを撃っても悪魔信仰者ディモニストが減る様子はない。


「なんて数なの……!?」


 サリアは両手と魔素をフル稼働させながらも、あまりの敵の多さに思わず愚痴をこぼす。


 その一瞬の隙、それを見逃さなかった一人の悪魔信仰者ディモニストがここぞとばかりに刀を振り上げる。


 振り上げた刀は気づかれることなくサリアの背後へと迫っていく。


ーーーーーーあっ……!


 刀がすぐそばまで迫って初めてその存在に気づき、サリアは死を悟った。


 防ぐ手立てはない。


 こんなところで死ぬのか……と後悔しながら、仲間を、ゲツヤのことを想いながらサリアは静かに目を瞑るのであった……。


 だが、それはすぐに杞憂に終わる。


幻の如き薄氷の剣撃ファントム・フロスティア


 存在するのかしないのか、ただ分かるのはほんの少しばかり陽の光がキラキラと輝いているということだけ。


 それほどまでに薄く形成された氷の刃が、サリアの命を刈り取らんとする悪魔信仰者ディモニストを胴で二分する。


 斬り口は瞬間的に凍結され、そこから血飛沫が上がることはない。


 故に、サリアが血糊に汚れることはなかった。


 2つに割かれた死体をどけ、サリアの背にレミーナの背が合わさる。


「お怪我は?」


「ないわ」


 レミーナの心配にサリアはそれを払拭しようと力強く返事をする。


 しかし、すぐその後に力強さが抜け、弱々しい声がレミーナに届いた。


「でも……敵が多すぎて……いつかは捕まるかもね……。」


 サリアは辺りを見渡す。


 そこには、一進一退互いに勝利を譲ろうとはしない悪魔信仰者ディモニストとテオドア帝国兵の衝突……そんな光景が広がっている。


 今はサリアたちの活躍のおかげか、ここらの戦況は多少帝国側が優勢ではあるが……。


 途方も無い戦争、それに対しサリアはため息を1つ。


 それを見たレミーナは、疲弊し息を切らしている中、サリアの顔を眺め微笑む。


「レミーナたちが負けるわけありません!きっとすぐにゲツヤくんが……。それにミツヒさん、あの人はゲツヤくんが認めた人です。きっとあの人もすごい人なんです。ゲツヤくんたちなら戦況を変えてくれますよ!」


 レミーナのゲツヤを信じてやまない曇りなき眼差しが、弱音を吐くサリアを突き刺した。


 そして、少し間を開けたのちに、サリアの口角が少し上がり、唇が動かされる。


「……それもそうね!私たちが弱音を吐いてる場合じゃ無いわよね!」


 荒れ狂う戦場の中、互いに目と目を合わせるサリアとレミーナ。


 二人は決意を新たに、ワンド銀嶺突剣フロスト・レイピアを握る力を強めるのであった。

 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



神撃火魔法メシアフレーラ


究極光魔法アルティマシャイーラ



 全てを焼き尽くす獄炎と全てを掻き消す裁きの光が、迫り来る悪魔信仰者ディモニストを一人残さず呑み込み、彼方へと消し去っていく。


「ボクと同じくらい……ううん、もっとすごい魔法だ……。お兄さん、やるね!」


「君こそ、小さいのにこんな凄い魔法を使うなんて!」


 戦場……そんな中で、出会って間もないメーナとミツヒの間には既に絆が芽生えているようであった。


 高いの力を認めつつも、二人は競い合うような形で次々と敵を倒していく。


 一つ火柱が天に伸びれば、すぐ後に一筋の閃光が迸る。


 次から次に繰り出される強大な魔法攻撃に悪魔信仰者ディモニストたちは身を震わせている。


 火炎と閃光の共演がそんな彼らをどんどん消し去っていく。


 そんなメーナとミツヒの活躍は、周辺の帝国兵の士気を大いに高めている。


 それ故か、メーナとミツヒの周辺は帝国軍が圧倒的優勢を誇っている。


 勢いに乗った帝国兵は次々と悪魔信仰者ディモニストを斬り伏せている。


 その光景を眺め、メーナとミツヒはより一層活躍せねば……と再び魔力を練りだすのであった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 


 サリア、レミーナ、メーナ、ミツヒ……四人のうち誰もが勝利をこの手に掴もうと必死に体と頭を動かして奮戦している。


 その心には不安の欠片すら存在していない。


 精一杯の活躍、それにより戦争の早期解決を目指し、戦いへと身を投じる。


 そんなときであった……戦場が閃熱に包み込まれたのは。


 目を開けられないほどの赤黒く不吉な光が一つ。


 それを追いかけるかのように戦場を駆け抜ける身が焼かれるかのような熱風。


 それらの根源たる魔力爆発が並大抵のものでないことは、戦場にいる誰もが把握できた。


 それと同時に、中心地にいるのが自分ではなく助かった……そう思うものが大半であった。


 悪魔信仰者ディモニスト軍の本体の近く、そこが爆心地であろうと手練れた者には分かるのであった。


 しばらくして、熱と光が終焉を迎え、辺りに涼しい風が吹き優しい陽の光が戻った頃、一つの笛の音が鳴り響いた。


 美しくどこか悲しげなその音色、それとともに悪魔信仰者ディモニストらは音色の来た方向へと集結して行く。


 それはラルトと外界を隔てる壁、その出入り口となる東西南北4つの門……そのうちの一つ、北門であった。


 現状、そこは帝国側の戦力が最も薄い場所でもあり、集結した悪魔信仰者ディモニストらはそこに突撃して血路を開き撤退を開始した。


 それを見て、好機だと追撃をかけようと帝国兵らが剣を構える。


 しかし深追いは厳禁、それをさせまいとアリスが全軍を制止する。


 開戦当初、空の中央に陣取っていた太陽は、西の砂丘へと呑み込まれ、砂を赤く染め上げている。


 こうして、テオドア帝国における戦争初日が終えていくのであった……。



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