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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter3:東の砂漠の黄昏
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暗雲の立ち込める開戦

 行き交う街の人々、あちらこちらから聞こえてくる明るい話し声、他愛もないゲツヤたちのやり取り……それら全てが一瞬にして巨大な爆音により塗り替えられた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ミツヒが仲間となり、サリアとメーナは新規加入のミツヒに興味を示し話をする。その一方でゲツヤは依然としてレミーナの機嫌をとるべく、落ち込んだようなレミーナに優しく声をかけていた……そのときだった。


「全員……ふせろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 突如、ゲツヤの叫びが街中に響いた。ゲツヤはレミーナの体を倒し、ことに気づいたミツヒもサリアとメーナを伏せさせる。


 そして、街の中心を起点に爆炎が巻き起こった。


 光がそこにいた人々全員の視界を奪い、熱風が皮膚を焼く。


 ようやく視界が戻ると、待っていたのは悲惨な有様。回避できなかった者たちは体が吹き飛んでいたり、焼け焦げていたりと直視できない光景が広がっている。


 鼻の奥を刺激するのは肉の焦げた匂い。その匂いの元を理解した人々は、嘔吐を繰り返す。


 爆心地付近の家々は完全に焼失し、そこから離れた建物は燃えている。その炎は街を紅く染め上げる。


「みなさん、落ち着いてください!すぐに避難所に移動してください!第2波が来る前に!」


 皇帝、アリスの声が街中を包み込む。


 街全体に設置された魔道具マジックアイテムには反射魔法リフレクションが宿されており、アリスは自分の声を風魔法ウインラに乗せ、魔道具マジックアイテムに反射させることで声を街中に届けている。


 その緊急伝達手段は慌てふためき、絶望に溺れていた人民に冷静な対処を即座に取らせたのであった。それ程までにアリスの一挙一動には効果があった。


 街中の人々が避難所に指定されているエトナ城に逃げ込む。幸い、緊急時に備えてエトナ城は広く設計されており全ての人々が避難をすることができる。だが……


「第2波が来ます!みなさん伏せてください!」


 アリスの指示、だが彼女が気づいた時点で遅かった。放物線を描く巨大な火球が首都ラルトの上空に既に迫っていた。


 全員が避難のために城に集まっている……それを狙っているかのように街から城に入れる唯一の大通り、そこに落ちようとしていた。


 火球の炸裂、それとともに大勢の人々の命が瞬時にして炎の中に散る。灼熱は全てを焼き尽くし、生き残った人々からは気力を根こそぎ奪い取る。


 そんな地獄のような光景が訪れようとしていた。身に迫る危機に誰もが絶望の声を上げる。それでも……と城に逃げ込もうと走る人もいる。そんな中……


「へぇ……火魔法フレーラ土魔法ガイーラの混合魔法か……。」


 人の流れに逆らい、火球へと歩み寄る長い黒髪の少年。身に纏う白いワイシャツと黒のズボンは、彼がこの国の人物でないことを証明する。


「試させてもらう……」


 地面から数えて10mもしないところまで火球は迫っている。誰もが死地にその足を進める少年を愚かだと……自分たちは死ぬのだと嘆く。


 その少年、ゲツヤは右の掌を天空に突き刺し、魔力を込める。変換するイメージは……全てを飲み込む闇。


神撃闇魔法メシアヘルーラ


 少年の掌から生じた半径10mほどの巨大な暗黒の渦。地面から石や瓦礫がその暗黒に呑まれていく。無論、上空の火球も例外ではない。とどまるところを知らない闇に呑み込まれていく。


 その異様な光景に誰もが息を飲む。中には呼吸を忘れて見入る者もいる。


「ひ……火の玉が……」


 群衆の中、誰かが言った……。


「火の玉が消えた!」


 火球は少年の闇に消し去られた。それを目にした人は誰もが歓喜を上げる。当然だ、命が助かったのだから……。それ故に次のアリスの一言、加えてゲツヤの行動に人々は再び絶望に打ちひしがれるのであった。


「第3波が来ます!しかも、火球の数は3!ゲツヤさん、レジストできますか!?」


 アリスの期待、だがそれにゲツヤが応えることはできない。火球は今もなお闇の中に存在している……もし、今ここで闇魔法ヘルーラを解除すれば、まだ飲み込みきれていない爆発の衝撃が街を包んでしまう。それに、一度に4つもあの火球を吞み込めるほどの容量は無い。


 現状を正常に把握した上でゲツヤは首を横に振る。それに対し人々が青い顔をするのに反し、ゲツヤは平静を保ったままであった。


「頼む!」


 そう一言、ゲツヤは力強く声をあげた。それと同時に4つの影が次から次に空へ飛び出す。


究極光魔法アルティマシャイーラ

氷炎魔法エル・ブレーラ

幻の如き薄氷の剣撃ファントムフロスティア


 3つの声が同時に響く。


 天空に浮かぶ金に輝く魔法陣、そこから顔を出した一丁のライフルが、その銃口から光を放つ。1本の光の線が1つの火球を穿ち、被弾点を中心に爆散させる。


 金髪の少女の合わせた両手から、美しく煌めく炎と氷の花弁が渦巻きを形成し、その赤と青の巨大で……美しく……綺麗で……強大な竜巻が火球を包み込み爆発させる。


 可視と不可視の中間点、研ぎ澄まされた凍てつく氷の刃が一太刀、また一太刀。銀髪の少女は火球の前から後ろへと通り過ぎていた。薄い刃は砕け散り、日の光を反射させ、過ぎ去った後の火球は四分されて爆破する。


 天空で火球は爆散……だが、砕け散り細分化された小さな火の玉がいくつもいくつも街に降り注ぐ。


神撃火魔法メシアフレーラ


 だが、小さな火球を遥かに強大な獄炎が呑み込む。小さな獣族の少女の掌からほとばしる炎は、街を破滅へと導く火球群に引導を与えた。


 時間にしては一瞬の出来事ではあったが、その一瞬の出来事が街の人々に希望を与える。歓声が湧き上がり、ゲツヤたちを讃えている。


「早く避難を!」


 アリスの号令、それとともに希望を取り戻した人々は足を早めて城へ向かう。それと入れ替わるようにゾロゾロと城から兵士が出てくる。


 テオドア帝国の兵士、彼らの標準兵装はルナヒスタリカ王国の兵のように重厚な鉄の鎧……ではなく、頭にターバンを巻き、体はマントで包まれている。軽装故に防御力が無いように見えるが、1つ1つが魔道具マジックアイテムであり、防御魔法プロテクションが繊維に込められているため、防御力も申し分ない。全員が腰に曲刀シミターを装備しているが、これも威力は低めであるが水魔法アクーラが刀身に打ち込まれている。


 そんな軍隊の後方、ターバンは同じように装備しているが、服装は紫と白のドレスを身につけた水色髪の少女、アリスが馬に乗っている。


「みなさん、間者からの情報です。先程の火球は敵の先制攻撃。遠距離からの魔法攻撃です。そして……敵は悪魔信仰者ディモニスト、数にして2000……私たちの4倍の兵力です!」


 アリスの言葉で兵たちの間に動揺が走る。同じくして、ミツヒも動揺を隠せなかった。だが、ゲツヤたちは手口からして悪魔信仰者ディモニストであろうとは予想していた……それに兵力に差があろうことも。


「4倍……ですが、帝国軍はルナヒスタリカ王国の聖騎士に勝るとも劣らない。それに私たちの軍の強みは軽装備による機動力です。そこに勝機があります!」


「敵は遠距離攻撃……しかも強力なものを備えております。策はいかがいたしましょうか!?」


 1人の老齢な兵がアリスに問う。彼の頬に刻まれた傷からかなりの修羅場をくぐっていることがゲツヤには想像できた。


「まずは……」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 城と街から少し離れたテュポン砂漠の中、2000の白装束の軍勢が敵の行動を伺っていた。


「大司教様、いかがなされましょうか?」


 砂漠の中、馬にまたがる中年の男……全体として白い髪、そこに一筋だけ走る黒い線が印象的である。大司教、そう呼ばれた彼は掠れた声で答える。


「ふむ……俺があと3発ほど炸裂岩ロック・ボムを撃つ。2発まずは撃って、そのあと1発だ。これで全てがレジストされるなら、奴らに炸裂岩ロック・ボムを防ぐ手段があるということだ。それならば別の方法で攻め入るまで。」


 そう言い、彼は己の上空に魔力を込める。


 その光景を少し離れたところから見ていた悪魔信仰者ディモニストが近くの他の信者に小さな声で問いかける。


「大丈夫ですかね……大司教様?」


「そうか……新入りのお前は知らねぇのか!あの人はな……昔、真なる魔導師(アポリト・マゴス)と呼ばれた伝説クラスの魔法使いだからな!心配はいらねぇさ!我らが悪魔の下の清浄なる世界のために働くのが俺らのすることだ、余計な心配はするな!」


 その先輩の発言に、新入りの悪魔信仰者ディモニストは深く頷くのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


炸裂岩ロック・ボム


 中年の男の詠唱の下、2つの火球がテオドア帝国の首都ラルトに向かって飛んでいく。


「さあ……どうなるか?」


 興味深げな声で男は結果を見定めようとする。そして、ラルトの上空に迫った火球はどちらも街に着弾するスレスレで撃ち落とされた。


「あと1発……くらいな!」


 そう言って、上空に用意してあったもう1つの火球を投げ飛ばす。


 そして……


 ラルトから爆音が響くとともに、街から火の手が上がった。立ち昇る黒い煙の本数から相当な数の建物が燃えていると男は推測する。


「城にいる一般人どもには用はない。奴らは今後の改宗者だと思え!生き残っている武装しているものは殺せ!」


 大司教の掛け声の下、悪魔信仰者ディモニストたちはラルト内へと進軍するのであった。

 


 

 

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