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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter3:東の砂漠の黄昏
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ミツヒ加入

「それではミツヒさん、それにゲツヤさん、お二人にお話をさせていただきますわ!」


 エトナ城の玉座、そこに深く腰を下ろした夏の薄色の青空のような髪のアリス。玉座の前には皇帝を前にしながらも平伏すことなく立ち尽くす2人の少年、ゲツヤとミツヒ。


 彼ら2人を前にして、アリスは大切な一言一言を声に出すべく、手始めに深く息を吸う。


「では、まずこの世界が現在どのようになっているかは知っておりますか?」


「知らないです……来たばかりですからね」


「ゲツヤさんは?」


「俺は……少し前に転移したから少しはわかる……が、最も注視すべき事はつい先日知ったばかりだ……。」


「はい、ではその事とは?」


悪魔信仰者ディモニストの侵攻……。」


 ゲツヤの答えにアリスは深く頷く。その言葉を待ってたと言わんばかりに。


「彼らは北の国を滅ぼし、さらには我が国はおろか、この大陸の国々全てに攻め入っております。」


 ゲツヤの脳裏に浮かぶ先日のサザンカでの戦い。あれが世界各地で起こっている……そう考えただけでゲツヤは怒りが湧く。


「そして……それこそ最近、大陸でも随一の国力を誇っていたルナヒスタリカ王国が滅ぼされました。」


「なっ!?」


 予想外の言葉、ゲツヤはあまりの出来事に驚きを隠せない。サザンカの侵攻は防いだはず……それなのに……それなのに……。


「そこで私たちは考えました。どうすれば自国を守ることができるのかと……。」


「それで……僕を呼び出した……って訳ですね!」


 核心をついたとミツヒは右人差し指をアリスに差し、決めポーズをする。アリスは苦笑いをし、ゲツヤに助けを求めるが……案の定、ゲツヤはそっぽを向いていた。


「え……ええ!その通りです。ゲツヤさんに至っては神の気まぐれ……ありがたい限りです。」


「それで、僕とゲツヤさんに何をしろと?」


「はい、悪魔信仰者ディモニストを打ち滅ぼす……奴らの教祖を打ち倒す旅に出て頂けないでしょうか?」

「断る」


 アリスの頼み、それは瞬時にしてゲツヤの否定に遮られた。あまりの即答にアリスは目を丸くし……その否定という結果を理解すると焦りだした。


「えっ……でも……じゃなきゃ私の国は……」


「悪いが……先約がいる。俺がサリアを賢者にするまでは……」


「あの……賢者って?」


 話が全く分からないミツヒが恐る恐る挙手し、気になる単語「賢者」について説明を求めた。


 ゲツヤは、かつてセルジュークに受けた説明をそのまま流用しミツヒに説明した。


「なぁるほど、そういう事か……。ならいい提案があるよ!」


 先ほどの恐縮したものとは違い、今度は自身をたっぷりと含んだ挙手をミツヒが行う。


「僕もその賢者の旅に出ればいいんですよ、ゲツヤと一緒に!」


 ミツヒの提案、それに首をかしげるアリス。それを見てミツヒは得意げに笑みを浮かべ、細かい説明をする。


「聞いた話じゃ賢者の旅ってその北の国にも行くみたいだからさ、目的は違うけど……おんなじ場所に行くって事だよ!なら、僕もゲツヤと同行して、一緒に教祖さんとやらを倒そーってことさ!」


「そう……ですね。それならば問題はないでしょう……。ゲツヤさんは?」


「問題ない……と思う。」


「やけに自信なさげですね?」


 アリスが疑問を浮かべるのも無理はない。それ程までにゲツヤは困った顔をしている……というのも勝手にことを決めてサリアやメーナ、そしてなりよりもレミーナから説教を受けるのは目に見えているからであった。


「少しは……仲間と相談させてくれ……。」


 2人の熱い視線……ゲツヤは言えなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「というわけで……俺らと同行することになったミツヒだ……。」


 サリアとメーナは無関心、それを見てゲツヤは安堵の息を漏らす……だが、その2人の後ろから何やら禍々しいオーラが立ち込めている……。


「あのぉ……レミーナ……さん?」


「また勝手に……どうしてですか!?サリアお嬢様もメーナちゃんも何で怒んないんですか!?」


 ゲツヤの勝手、それに反応を示さないサリアとメーナ、それら全てに怒りを吐くレミーナは鬼の形相である。


「いや……アリス……皇帝に頼まれたからさ……。」

 

 ゲツヤの弁明、皇帝の命令ゆえに仕方がない……だがその弁明は火に油を注ぐだけであった。


「アリス!?女性ですよね?女性の名前ですよね?たしかこの国の皇帝って女帝でしたよね?レミーナとのお買い物を途中で投げ出して、その結果が女帝様ですか?さぞお綺麗なのでしょうね!」


 ゲツヤに対しひたすら怒りをぶつけるレミーナの瞳には涙が浮かんでいる。折角のゲツヤとの買い物、それが中断された上に他の女性と……しかも、この国の女帝と一緒にいたとあらば……ゲツヤが女帝の方を選んだ、そんな気がしてレミーナは気が気でなかった。


「レミーナ……悪かった……俺が悪かったから……何でもするから許してくれ、頼む……。」


「なん……でも?」


「ああ、何でもだ!」


「……分かりました。それで許してあげます……。」


 時折見せるこのやり取り、例のごとくレミーナの怒りは収まった……が、普段のように喜ぶ様子はなく、ただ悲しそうな顔で頷くだけ。その光景を誰もが黙って見届けた。


 こうして、ゲツヤたち一行にミツヒという強力な仲間が……異世界転移者が加わった。



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