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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter2:サザンカ動乱
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幕間

 暗い闇の中、水の滴る音がポツリポツリとその中を駆け巡る。


 光明一筋入ることを許さない深淵の闇の奥、そこに佇む1つの玉座は辺りの闇に似合わないほど煌びやかな装飾が施され、異色さを際立たせている。


 闇の中に目立つ白いフード、それがいくつもいくつも玉座の前に並ぶ。


 平伏する彼らの敬意の先にはこの闇の原因とも言えよう禍々しいオーラを纏う男が煌びやかな椅子に腰掛けていた。


 男は全身を黒で包む。


 漆黒のコートに漆黒のズボン。


 挙げ句の果てには漆黒のフードと、一切素肌が見えないように暗闇に溶け込んでいる。


 男が黒い手袋を身につけた手を上にあげ、そして下ろす。


 その動作と同時に平伏していた白いフードがさらにその姿勢を低くする。


 その一連の動作はピッタリと揃っており、男への信心深さが如実に表れているようであった。


 彼らの敬意を確認するとともに、黒いフードの奥から重々しく低い声が静かに鳴り響く。


「諸君らも知っての通り、サザンカへの聖戦は失敗に終わった。我らの目指す統一世界への道は未だ遠いということであろうか?否、今こそ我々七曜全てが手を取り合うのだ!」


 最後の一声とともに男が拳を掲げる。


 それとともに暗闇の中に歓声が巻き起こる。


 それを心地よさげに男が聴き、再び口を開く。


「次なる目標は座標が示す。地方統制を兼ね勤勉であられる大教皇様が密偵の情報を元に我々にお教えくださるのだ!あぁ……なんたる御慈悲、なんたる信仰心!あの生ける伝説たる大教皇様のお力になるべく我々は存在するのです!今こそ我々の理念を!世界の統一、そして愚かな人間を統率する悪魔神様の降臨を!」


 男の演説とともに闇にこもる熱気が高まる。


 それが彼ら、悪魔信仰者《ディモニスト》の団結力である。


 今ここに、7つの派閥に分かれた彼らが1つに纏まろうとしていた。


「さあ、ともに行こうぞ!この我ライルス=カヌウス枢機卿、偉大なる大教皇様、そして我らが神、悪魔神様に栄光あれ!」


 この日一番の歓声がこの時巻き上がった。


 そしてそれが世界に変革をもたらした結果である。


 今後の世界を覆す変革であると変革者……異世界人は気づかなかった。




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 この日、ある情報により世界が震撼した。


 大国が滅びたのだ。


 世界でも名高い国が。


 軍事力最大と誉れ高い聖騎士を従えたルナヒスタリカ王国が……


 それは突然のことであった。


 天高く上がる爆煙。


 悪魔信仰者《ディモニスト》が侵攻すると事前情報があったサザンカ方面から上がる黒煙が事態を急速に進めた。


 ルナヒスタリカ王国の国王は急遽、白虎騎士《ブリザーナイト》を筆頭に全聖騎士の三分の一をサザンカへ派遣。


 予定より3日早い出発に誰もが驚いた。


 何せかの貴族、セルジューク=メナスの予言が外れることなど前代未聞であったからである。

 

 彼の情報によると悪魔信仰者《ディモニスト》が攻めてくるのはまだ先のこと……しかし、それは見事に外れた。


 こうしてルナヒスタリカ王国はサザンカの救援へと兵を送った。


 残りの三分の一は城の中に、残りはルナヒスタリカ王国の国土中に散らばっている。


 そう、丁度……丁度守備が薄い時であった、悪魔信仰者《ディモニスト》が攻めてきたのは……。


 攻めてきたのは〈水〉と〈月〉の派閥。


 圧倒的な物量の前にさしもの聖騎士もなす術なかった。


 それ以上に大司教が〈水〉、〈月〉、そして〈土〉と三人も参戦していたのが不味かった。


 その三人との戦闘に王国最大戦力である四大聖騎士(クテシフォンを除く)らと聖騎士長が付きっ切りであった。


 玄武と〈水〉、青龍朱雀と〈月〉、聖騎士長と〈土〉という対立であったが、玄武は耐えることに専念せざるを得ないほどの力量差に倒れ、青龍と朱雀はどうにか敵を撃破。


 聖騎士長は互角以上の戦いを繰り広げるも、他の騎士のカバーや国王の逃亡経路確保にも奔走せざるを得なかったため引き分けることとなった。


 その上に敵は城の構造を完全に把握しており、普通の道はおろか隠し通路までも利用され、ルナヒスタリカ王国の首都コルトニア、テミスト城は陥落した。


 生き残った聖騎士は散り散りとなり、唯一あげた戦果が〈月〉の大司教、セレナ=ネルを討ち取ったことであった。


 それだけ見ると多大な戦果だが、国が滅びたのでは元も子もない。


 寒空の下、ルナヒスタリカ元国王は馬車に乗り敗走するのであった。


 夜空の中、陥落したテミスト城の玉座に座り不敵な笑みを浮かべる男。


 この世界では特徴的な黒い髪が肩まで伸びている。


「大教皇様、城に残存勢力はありません!」


 白いフードの男が彼の前に跪き、調査報告をなす。


 仕事の鉄則は報告、それが大教皇のモットーである。


「よくやった〜、これからもよろしくね〜!」


 静かな王の間に楽観的な声が響いた。


 優しく語りかけたその声はどこか人間味のある暖かさは感じられない。


 凍てつく氷のような冷たさが醸し出されているのであった……。

 

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