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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter2:サザンカ動乱
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極限の冬

 ここは悪魔信仰者ディモニスト本陣。


 そこの中心に置かれた椅子、それに腰掛ける1人の人物は、手招きをして側近を呼び寄せる。


「あららぁ、ニカレ?やられちゃたねぇ。」


「失礼ながら、ニコル(・・・)でございます。」


「ちっちゃいことは気にしない気にしないのぉ。そんで、彼はもう直ぐ近くまで迫ってるんでしょ?」


「はい、ここに到着するのも時間の問題かと……。」


「そっかあ、なら彼とは私が直々に相手してあげないとなぁ。そんで、ポチ(・・)たちを聖騎士たちと遊ばせようと思うんだけど?」


 そう言って椅子に腰掛ける女は気怠げに天を刺す指をくるくると回している。


「ポチ様等ですか……。それでは彼らに対してあまりにも過剰戦力ではないでしょうか?」


「んー、でも死の騎士(デスナイト)じゃ聖騎士たちと力量的には大差ないし、普通の信者じゃ歯が立たない。」


「ポチ様等に遊んでもらおうと?」


「そーゆーこと!負けたら天の枢機卿様にどやされるし、クローノのやつに馬鹿にされるし、さらにはアフナスの馬鹿女にも嫌味言われるもんねぇ……。」


 側近の女にそう言って笑みを送る。


 そんな彼女、マーズの最大戦力がサザンカを襲おうとしていた。


 その名もポチ、クロ、シロ、アルクレシアス=セルメニア。


 マーズのペットである4匹の魔物である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 氷剣流奥義の白虎爪撃、自身最大最強の技で敵をなぎ倒しまくる聖騎士ことクテシフォン=シルヴィスは敵陣の中でこちらに迫る異様な存在感を感じ取った。


 数は4。


 そのどれもがクテシフォンの上空を通りその先にあるサザンカの街を目指している。


「なんだってんだよ……。」


 クテシフォンはその醸し出された雰囲気の元を探る。


「そ……空か!?」


 最もその存在を強く感じる場所、自身の上空を見上げた。


 天高く飛翔するその4匹の魔物、伝承クラスの神々しくかつ禍々しいその存在にクテシフォンは呑まれた。


「おいおい……C級の化け物じゃ満足しねぇのかよ……。」


 クテシフォンが今まさに目にしている空飛ぶ化け物。


 それこそがかつて一つの国を滅ぼしたとされるA級の魔物、骸龍ネクロドラゴンであった。


 骨と化した龍。


 死して再び生を受けたその屍は生前よりは劣るものの龍種の強さは健在である……という。


 天を舞い、ニンゲンを見下すその骨のドラゴンたちはサザンカを目指す……


 いや、1匹がクテシフォン目掛けて向かってくる。


 サザンカ周辺において、クテシフォンの強さが群を抜いていることを察したからなのだろうか。


「おいおい、冗談じゃねぇよ……。」


 徐々に大きくなる影。


 クテシフォンは全速力で骸龍ネクロドラゴンの着地予測点から離れる。


「うおぁぁぁぁぁ!」


 激しい風が吹き辺り一帯の瓦礫や土石を吹き飛ばす。


 それがただの着地の衝撃なのだから、骸龍ネクロドラゴンの強さが伺える。


「ギシャァァァァ!」


「そう吠えるなよ……。」


 こちらを睨みつけ、雄叫びをあげる龍に対してクテシフォンは自身の剣を構える。


 クテシフォンの剣。


 天下十剣のうちの一本、雪月花剣フロスティアがその魔力を解放する。


 普段の聖剣とは違う本気用の剣、ただし反動として自身へのダメージはおろか周囲の環境すら変えかねない故に緊急時しか使用が許されていない。


「サウンズさんは滅多なことがない限り使うなって言ってるけど、これが緊急事態じゃなきゃ何が緊急事態か解んねぇもんな。」


 封印を破ることを決心したクテシフォンは雪月花剣フロスティアの鞘を抜く。


 それと同時に辺りの天候がガラッと変わった。


 光に満ちていた戦場が徐々に、徐々に陰りを見せてふと気づけば深々と雪が降りだしている。


 気温が下がり、骸龍ネクロドラゴンの着地時の衝撃に負けるとも劣らない激しい風が吹く。


 ブリザード。


 その天候を彼の剣、雪月花剣フロスティアが呼び起こしたのだ。


「寒……いくら耐寒上げてもこの寒さだけは慣れねぇな……。」


 そのような愚痴をこぼしながら、骸龍ネクロドラゴンを見る。


 勿論のことながら


「まったく効いてねぇな……。」


 クテシフォンの予想通りこの寒さの中、ビクともしない骸龍ネクロドラゴン


「やっぱ斬り倒す……しかないのかな。」


 クテシフォンは雪月花剣フロスティアにありったけの魔力を込める。


(俺がここで1匹、残り3匹か……。)


 事態の深刻さは想像を絶する。


 仮にクテシフォンがこの骸龍ネクロドラゴンを数分以内に撃破したとしても残り3匹の街への到達を妨げることはできない。


 いかに早く撃破し、いかに効率よく防衛に回れるかが勝負だ。


 クテシフォンは一分一秒でも早く街に向かえるよう、警戒度を最大限まで引き上げる。


「氷剣流奥義、白虎爪撃!」


 雪月花剣フロスティアを起点に創造されるのは氷の爪……ではない。


 この剣の持つ圧倒的な魔力、それがこの奥義をさらなるステージへと登らせる。


「まあ、最早爪ではないな……。」

 

 クテシフォンが見つめるのは雪月花剣フロスティア、そしてそこから放たれる圧倒的な魔力を含有する冷気……。


 その冷気が創り出した氷塊は、透明で光を反射する鎧となり彼の体を包み込む。


 将に相応しい威厳ある鎧が形作られている。


 そして右手に握られた雪月花剣フロスティアは刀身の外側にさらなる氷の刃を形成し、大剣へと変貌している。


 開いた左手、そこには氷で形成された長剣が握られている。


 そのクテシフォンにおける最強形態、それを彼はこう呼ぶ。


冬将軍アブソリュート・ゼロ……。」


 クテシフォンは双剣を握る手に力を込め、伝承クラスの化け物へ斬りかかった。


「我こそはルナヒスタリカ王国上級聖騎士四天王に座し白虎聖騎士ブラザーナイトの名を冠する者、クテシフォン=シルヴィス!覚悟しやがれ!」


 こうして最強クラスの聖騎士と伝説の龍との激戦の幕が切って落とされた。

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