白虎聖騎士
「悪行はそこまでだ、とでもいっておこうか。」
白髪の少年は右手に持った剣を振りかざす。
剣はキラキラと輝きその刀身に氷を宿して氷刃と化す。
突如現れた乱入者に死の騎士は斬りかかって、排除しようとする。
「バカか?」
少年が剣を一振り。
それにより彼を襲おうとした死の騎士の胴が斬り裂かれ、その傷口には氷が張る。
「白虎聖騎士のクテシフォン=シルヴィス……。」
1人の兵がルナヒスタリカ王国の誇る最上級聖騎士の1人の名を口にする。
そして、絶望に打ちひしがれていた兵たちに活気が戻る。
援軍の到着、しかも四大聖騎士の一角。
兵たちは攻勢の風が吹いているのを感じていた。
「はぁぁぁぁぁ!」
迫る死の騎士は4体、それをたった一撃の元に倒し、次の敵へと移る。
「氷剣流、凍剛刃。」
刃に氷を纏うその技は氷剣流において基本の技である。
それを操るクテシフォンの通る後に残るのは傷物の氷像だけ。
死の騎士たちに動揺が生じる。
というのも、突如現れたクテシフォンのみならず、後ろ(門の外)から聖騎士軍が現れたのだ。
前と後ろ、挟撃されると悟った死の騎士は散り散りになり単独行動を開始する。
兵士たちや聖騎士は集団となり個の暴威である死の騎士に対し、数の暴力で攻める。
街中のいたるところから聞こえる剣と剣のぶつかる音が戦闘の激しさを物語っている。
クテシフォンは単騎で死の騎士の軍勢の中に飛び込む。
「氷剣流奥義、白虎爪撃!」
その言葉と同時に、クテシフォンの持つ剣が氷の巨爪へと変貌する。
そして左手もまた小さめの爪を形成する。
氷の乱舞、ブリザードを具現化したその乱撃が死の騎士を引き裂き、凍らせ、地に伏せさせる。
両手の爪を何度も何度も振るい、強固な黒鎧を断ち切って突き進む。
その爪は屍人の血、機能を失った血を浴びて赤く染まっていた。
鎧が砕かれ肉が裂ける音が響き渡り、それが絶えないところからクテシフォンの強さが手に取るようにわかる。
「死の騎士、C級か。あいつはもっと強かったな。」
立ちはだかる魔物を次々と斬り倒しながら想いを馳せるは、かつて剣を交えたあの男。
負け知らずの自分に惨めな敗北を贈った人物。
超越した力を持つあの黒髪の少年、カゲミネ・ゲツヤ。
彼と戦ったときの充実感はクテシフォンにとって人生最大のものであった。
だが今クテシフォンが身を置くのは圧倒的な力を体感したあの戦いの興奮には全くもって及ぶことのない温い戦い。
(あいつは今一体どこにいるのだろうか。)
行方のわからない好敵手との再戦を夢見る。
「こんな奴らに苦戦するようじゃ、恥ずかしくて顔向けできねぇがな!」
そう言って、目の前にいる巨体を縦に引き裂く。
ズシンッ と重いものが倒れる音が響き渡り、再び生を受けた死者の鎧は崩れ去る。
「ふぅ、こんなもんかな。」
クテシフォンの振り返る先、そこには息絶えた黒い鎧が何体も何体も横たわっていた。
その全て胴が斬り刻まれている。
辺りを見渡す。
聖騎士軍は数における不利を物ともせずに死の騎士を着実に倒していた。
街中に攻め込んできた死の騎士1000体のうち300はこの混乱の中討ち滅ぼされ、残りの700体は一時離脱していた。
「第二波はあると思え!撤退した奴らは補給後に確実に攻めてくる。それまでこちらも補給に入る!」
クテシフォンの号令のもと、聖騎士軍及びにサザンカ軍の補給が始まった。
いまだ、門の外からは戦闘音が止まない。
ときどき現れる業火が、戦っている者の実力を示している。
「あとはサザンカ軍の司令の者に任せる。俺は前線に飛び出る。」
「了解しました!」
直近の部下の聖騎士にそう述べ、クテシフォンは門の外へと走り出す。
剣に再び冷気を送り、氷剣流を構える。
「さあ、さっきの奴らよりかは面白いのがきてくれよ?」
強敵との遭遇を望み、白虎聖騎士は敵陣へと突入を開始した。




