ニコルの本気
(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い)
ニコルは圧倒的なまでの力の差、一生埋まることのないであろう雲泥の差、それに怯え、震えて、そして慄いていた。
涙まで流した。
生まれて初めて、その瞳から溢れたその液体、不可解な気持ちを隠せない。
今すぐにでも逃げ出したい、早くこの場を立ち去りたい。
そんなニコルを支えたのは種「下級悪魔」としての誇り、それであった。
目の前にそびえるその見た目からは想像もつかないオーラは天を支配するかのごとく空へと昇る。
だが人間だ。
そうたかだか人間、下等種族の下衆で愚かで矮小な生物だ。
(絶対的強者である悪魔が敗北することなどありあることではないのだ!!)
それがバックボーンとなり、恐怖を払拭し、その人間目掛け飛びかかった……だが、結果はこのニコルの敗北だ。
最高の一撃、それがいとも容易く受け止められ、かつ弾き飛ばされた。
自身の体ごと。
このままでは決して勝てない、そう何しろ今の状態で最高の一撃が防がれたのだから。
弾き飛ばされ、距離が開いた。
それでも一切追撃に転じようとしないゲツヤはニコルを見下すかのように冷ややかな視線を贈っている。
普段のニコルならその下等生物にして傲慢なる態度に腸が煮えくり返るところであろうが、ゲツヤはそれを下級悪魔にするだけの強さを兼ね備えているためただ怯えることしかできない。
その姿勢は、剣を地に突き刺しこちらが立ち上がるのを待つかのようである。
まるで、早くかかって来いとでも言わんかのように。
「あぁ!やってやろうじゃないか、クソッタレが!」
右手に握る刀、それにありったけの魔力を込めゲツヤに斬りかかる。
火剣流、その上級クラスの威力をもつその炎剣で斬る。
「火剣流、炎刃烈波!!」
それはひたすら刀身を燃やし、精一杯振り下ろす火剣流の力技。
一瞬、鮮やかな炎が独特の刀身とともに美しく舞った。
だがその鮮やかな赤い舞踊は禍々しい剣に阻まれた。
呪剣、言い伝えの領域。
その呪われし名剣がニコルの刀を阻む。
ニコルにはそれが手を抜いた一撃であるのがわかる。
そう伝承の剣ならば自分の剣など折れているはずだと。
手を抜かれているというその事実は腹立たしく、自身の腕の無さに失望していた。
受け止められた刀身が弾かれ、押し出される。
そして強敵の口からふと溢れるため息、それは失望。
それもニコルに向けたものだ。
そしてもう用はないとでも言わんばかりにニコルの首を落とそうと左から右へ流れるような動作で呪剣を通らせる。
あくまで斬るわけではないのがその迫力のなさから手に取れる。
だが、その息をするかのような自然な動作さえもニコルの命を奪うことを容易いとする。
そんな絶望的な状況下だが、ニコルのその顔には未だ余裕が残っていた。
そして首に刃が入る、その時に変化は生じる。
「さあ、第2ラウンドの開始といこうじゃあないか!」
戦場にニコルの自信に満ち溢れた声が響いた。




