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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter2:サザンカ動乱
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ニコルと恐怖

久々の投稿です……。

今週末からは少し隙ができるので、更新が再開できると思います!

 ゲツヤは下級悪魔レッサーデーモンと対峙していた。


 赤黒い髪、翼を兼ね備えたその悪魔はニコルという名であることが会話の中で分かった。


 その悪魔、ニコルは大胆不敵な笑みを浮かべ、その右手に持った刀をぶらぶらと揺らす。


 ゲツヤはそれを見てニコルを内心コケにしていた。


(ああ、こいつは実力差を感じ取っていないな……)


 下級悪魔レッサーデーモンは悪魔ではあるが、最下位の魔物で、それこそ以前にゲツヤが滅した地龍ランドドラゴンの方がまだ強い。


(それにしてもこの能力は便利だ……この世界の知識が次から次に頭の中に流れてくる。正直、どんな能力よりもこれに救われてる気がする。)


 それにしてもニコルは一切襲ってこない。


 ゲツヤも自身から飛びかからないため一向に戦いが始まる気配がない。


(できれば、向こうから攻めてきてくれれば下級悪魔レッサーデーモンの強さというものが分かりやすいから有り難いのだが……。)


 ニコルにその気配は一切ない、よってゲツヤは威嚇してみることにした。


 辺りの兵や悪魔信仰者ディモニストはゲツヤとニコルを吸い込まれるかのように見入っている。


 それはゲツヤの後ろに倒れるザクスや、それを看護するメーナもなのだが……


 ゲツヤはニコルに威嚇すべく呪剣カストールに手を差し伸ばした。


 ニコルとの距離は5mほどある。


 ゲツヤはその距離を一瞬……そう、本当に誰も気づかないほどの速度で詰め、ニコルの鼻先3cmを呪剣カストールで斬り裂く。


 ヒュン……と軽快な音を立て空を斬る。


 風を呼ぶその太刀筋はニコルの背筋に冷や汗をかかせた。


 その一閃は即座にその場にいる者たち全員の注目を浴び、そして震撼させ、大胆不敵……いやただの愚かなニコルの態度を一変させた。


 薄ら笑い、それが強張ったものへと変貌を遂げる。


 恐怖、それがニコルの脳から全身へと危険信号を送る。


(あり得ない、俺は悪魔だ、絶対的強者である悪魔なのだ!)


 確実に刻まれた恐怖と、揺るぐことを知らなかった己の自尊心とでニコルは揺れていた。


 それを手に取るように把握したゲツヤは、構えを解き、ニコルの攻撃を再び待つ。


 ニコルは怯えている……いや、側から見れば依然として笑みを浮かべているのだが、それはゲツヤを誤魔化すには余りにも未熟なものであった。


 禍々しい装飾の剣が睨み、ニコルの命を狙う。


 その並々ならぬ圧迫感、そして殺意にニコルはブルブルと小刻みに震えていた。


 ただひたすらに時間だけは過ぎていく、このゲツヤとニコルに縛られた空間の中でさえも……。


 だが、ニコルとていつまでも恐れ慄いてはいなかった。


 自分を支える強いプライド、それだけが唯一ニコルを恐怖から救う光明であった。


 身に降りかかるその恐れを払拭し、その右手に下げた刀を振り上げ、飛びかかる。


 大胆不敵、自身の行いをそのまま返されたかのようなゲツヤの構え、それはニコルから理性という理性を奪い去る。


 屈辱、それを全て薙ぎ払うべくその刀を横に一閃。


 空気すらをも断ち切り、その進路の障害となるものは全てが斬り伏せられる。


 その見事なまでの一撃。


 それは決まることなく、1つの巨大なものにより進路を阻まれた。


 まるで砦、何も通さぬ巨大な力。


 それが自らの剣の先に立ちふさがる。


 ニコルはこのときたった一本の剣、それが余りにも大きく、余りにも恐ろしく感じた。


 自身最大の攻撃、それが避けられたわけでもなければ、受け流されたわけでもない。


 たった一本の剣、それに止められた……


 ありえない。


 ただそれだけがニコルの脳内を駆け巡っていた。


 ニコル最大の剣撃を受けたゲツヤは、左手に持った呪剣カストールで押し出すようにニコルを吹き飛ばす。


 10mほど飛ばされたものの、すぐさま体制を立て直したニコル。


 彼にゲツヤは冷ややかな視線を贈ったのであった。


 その視線はニコルの背筋を凍らせ、辺りの観衆までもその殺気に怯えていた。


 

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