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異世界転移は孤独な私を笑わせる  作者: 鈴谷 卓乃
Chapter2:サザンカ動乱
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迫る危機

久々の投稿です。

短いですがご勘弁を……

  壮絶な魔法が地を揺らし、天を貫き、大気を震わせる。


 とてつもない衝撃、そして爆発音が幾度となく生じている。


 衝撃のあまりに崖が崩れた音が街道に響く。


  爆心地で起こっていることの凄まじさを物語っているかのようなその音はもう何回目なのだろうか。


  サザンカ中が遠いが近い、その場所から届く轟音により不安に包まれている。


 サザンカ中心の役所、より一層緊張が走っているその場所で


「今すぐにでも住民共々避難に徹するべきだ!交戦などしてはならない!」


 白髪で、痩せ細った身体の老人は叫んだ。


  役所内の会議室に、その老人の意見に賛成するものはポツポツといる。


 しかし、この会議は不公平であった。


 緊急時ということで、集まった人間の8割は軍人であった。


 当然のごとく、交戦派が大半を占めていた。


「何を言っておられるか!我らの街であるサザンカを棄てると申すのか!」


  見た目からしてそこそこ位の高いであろう中年の男が、老人の意見に異議を申し立てる。


 それに賛同するかのように、会議室内に歓声が巻き起こる。


 それに抗うかのように老人は声を上げる。


「しかし、住民の命が最優先なのだ。負け戦にわざわざ身を投じる必要はなかろう!」


「なら、住民は丘の上の病院に避難させてはどうでしょう?そこで我々が敵を打ち破るのを見ていて下さい。」


 そう穏やかな声で場を沈めたのは、サザンカ軍総統であった。


 カリスマ性のあるその一言に会議室内は賛同者からの歓声で溢れかえった。


 そして、その案の可決とともに軍人たちは戦闘準備へと急いだ。


「町長、我々は早く住民とともに病院へ避難しましょう。」


  老人の賛同者の一人である若者にそう言われると老人、この町の長は丘の上に立つ病院へと急いだ。


 サザンカ病院、街の中心近くの高い丘の上に建つその建物は、何重もの強固な壁が外敵の侵入を阻む。


 丘は周りを人工水路に囲まれ、サザンカ内の最終防衛拠点になっている。


 普段は腰や膝の痛みに悩む年老いた人がチラホラといるだけのこの病院に、大勢の人間が集まっていた。


 敵襲から避難してきた人たちと赤息病患者である。


 病院の最奥、赤息病患者が眠るその部屋からは四六時中苦しそうで聞いていられない咳の音が響いていた。


 患者たちの眠るベッドは吐血で所々、赤くなっており、赤息病の辛さを物語っているかのようだ。


 そんな患者たちの1人、腰まで伸びる長い金髪に真紅の瞳の少女サリアは朦朧とする意識の中、自身の最後のハッキリとした記憶を思い出していた。


『助けるから……待ってろ……。』


 無愛想な長い黒髪の少年がそう言って、仲間たちとともに、私なんかのために命を賭して旅に出た。


 今彼女にできることはただ1つ。


(どうか皆んな無事に帰ってきて……。)


  絶えず咳が聞こえる病室内で、苦しい境遇の中、自身のために命を張る仲間の無事を案じていた。


 祈りを捧げて、その瞳には涙を浮かべながら……。








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