夏休み side涼
部活が終わってふと顔を上げると、見覚えのあるシルエットが学校内へ入っていくのを見た。
「おい、涼、俺ら帰るけどお前は?」
「あー、いーよ。先帰って。俺、先生に聞きたいことがあるんだ。」
「なんだなんだ?優等生は夏休みも勉強か?」
「まー、そんなとこ。でも、みんな宿題は早めに終わらせた方がいいよ?」
「う、まぁ、じゃーな。」
「おう。」
部活のみんなは帰っていった。
俺はさっきのシルエットが向かったであろう場所に向かった。それは図書室だ。「うぉ、涼しっ」外とは違うエアコンの効いている部屋にびっくりして思わず声が出た。さっきのシルエットはすぐに見つかった。
「よっ、沙羅。お前が夏休みに学校来るなんて珍しいな。」
沙羅は部活に入っていない。
「あ、涼。いやぁ、ちょっと補習みたいな……アハハ」
「お前バカだもんな。」
「ちょっと!涼は頭いいからってバカにしないでよ!あたしだってやれば出来るもん!」
「へぇー?出来るんだ、やってみろよ。」
目の前に置いてある数学の課題を見て言う。涼は本を取ってきて目の前で読み始める。
………10分後。
「おい、沙羅、手止まってるけど?」
涼がニヤニヤしながら言う。
「今考えてるの!」
「そーかそーか」
涼は引き続き本を読み始める。
……さらに10分後。
「沙羅、全く進んでねーぞ?」
「だって……わかんないんだもん」
「教えてくださいは?」
「うぅ…涼、教えて?」
沙羅が泣きそうな潤んだ瞳で言う。俺はこの顔に弱いんだよな。
「しょーがねーな。教えてやるよ。ただし、ちゃんと聞いてちゃんと覚えろよ。」
「うん!」
「……ここはこの公式を使って、こーやるの、わかった?」
「うん、うん、……ん?わかんない」
「だから――――――」
「あー!わかった!涼ありがと!」
「はぁ、分かってなさすぎ。まぁ、今日はいつもよりは早い方だったから帰りにアイス奢ってやるよ。」
「ほんと!?やったぁ」
最初は落ち込んでた沙羅の顔がぱぁっと明るくなった。うぉ、、破壊力満点。俺、ほんとこの顔に弱いわ。
「んじゃ、帰るぞ。」
「はーい」
2人は並んでアイスを食べながら帰る。
これでも2人はは付き合ってない。
今は俺の片思い。