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謎茸奇譚  作者: 鹿島
6/6

レストランで

『カランカラン』


悟がレストランの扉を開けると店内に吊り下げられたベルが鳴り響いた。


「いらっしゃいませー!あら!悟ちゃん!待ってたわよ!」


3人が入店すると女の店員が声をかけてきた。どうやらこの女が悟の叔母の妙子のようだ。どことなく冴子に似た顔立ちであり、醸し出す雰囲気はそっくりであった。


「ちゃんはやめてくれよ!もう高校生だぜ!」

「いくつになっても可愛い甥なんだから、いいじゃないの!あら?その2人が明日からお店のお手伝いをしてくれる子かしら?」

「はい!同級生の明石泉です!」

「竹野真奈です。しばらくの間ですがよろしくお願いします。」

「あらあら、こちらこそよろしくお願いしますね!私はこの子の叔母の妙子よ。今日はたくさん食べてゆっくりしていってね。じゃあ、席に案内するわね」


店内は一般的なファミリーレストランくらいの広さで、厨房に面した壁以外はガラス張りになっており明るく開放的である。パークの広場やアトラクションがよく見え、食事をしながらも雰囲気を味わえるようになっている。

真奈たちはそんな店内で最も広場がよく見える席に案内された。


「もうすぐショーが終わってパレードが始まるのよ。そしてパレードはこの広場でフィナーレのショーをするの。この席ならよく見えるし楽しめると思うわ。少し子どもっぽいかもしれないけれどね!」

「叔母さん、ありがとう!ここに来たの久しぶりだから嬉しいよ!」

「あら!いつになく素直じゃない!泉ちゃんと真奈ちゃんがいるからかしら?ふふふ!それじゃあ、料理を運んでくるわね。少し待っていてね。」


普段とは違う甥の姿に笑いながら妙子は厨房へ消えていった。


「ったく!叔母さん、何言ってんだよ!」

「あんた、いつもは妙子さんにどんな態度なのよ(笑)」

「うっせーよ!」

「まぁいいけど!それより料理も予約してくれてたの?悟にしては気が利くじゃない!」

「ふん!当たり前だろ!これでも俺なりに明石と真奈をエスコートしようといろいろ考えたんだからな!」


泉と悟がいつものようにじゃれあう姿を見ながら、真奈は広場を眺めていた。


(本当に広場がよく見える。特等席ね。この席の正面にあるステージでフィナーレのショーをするのかしら。あら?)


真奈はレストランの席からガラス越しだが真正面に見えるステージから少し目線を上げると、御茸寺が見えることに気がついた。


(あれは本堂か。ここからだと本堂の側面がよく見える。それにあれは奥の院か。お参りしていた時には分からなかったけれど、こうして少し離れて見てみるとよくわかる。本堂からは150メートルくらいのぼるのかしら。傾斜がきつそう。誰にでも参拝できるよう本堂が作られたのも頷けるわ)


奥の院は本堂と同じような作りだが、二回りほど大きいようだった。


(そういえばさっきの騒動はどうなったのか。御軸主様と言っていたかしら。きっと信仰者たちを束ねるような存在ね。その方がご病気?もしくは…)


「お待たせしましたー!」


もう一歩、真奈の思考が深まりそうになったとき、妙子が大きなワゴンを押して戻ってきた。磨きあげられた銀色のワゴンには悟がオーダーしておいてくれたたくさんの料理が乗せられていた。


「うわぁー!こんなにたくさん!」

「ああ!明石と真奈に食べさせたいものを選んでたらこんなに増えちゃってさ!」

「食べきれるかなぁ?」

「大丈夫さ!どれも一人前しか頼んでないから、3人で取り分けながら食べたらちょうどいい感じになると思うぜ!」

「いろんな味が楽しめるんだ!待ちきれない!ねえ、食べよう!」


たくさんの料理に目を輝かせる泉と悟の様子を見て、真奈はさっきまで考えていたことを一旦忘れ食事を楽しむことにした。


悟の言う通り、レストランの料理はどれも絶品で、たくさんあった料理はあっという間になくなってしまった。


「あら!さすがに若いわね!あの量を3人いたとは言え、ペロリと食べてしまうなんて。嬉しいわ!」

「はい!とってもとっても美味しくてホントにペロリでした!」

「まあ!ふふふ!ところであと少しお腹はあいているかしら?デザートを用意したんだけど」

「え?叔母さん、デザートは頼んでないよ?」

「折角、甥が好きな子を連れてきたんだから、デザートくらいはサービスさせて!」

「ばっ!叔母さん!好きな子とか!!」

「ふふふ、慌てなくても大丈夫よ。冴子だって知ってるんだから。どっちの子なのかしら?もちろん2人でも大丈夫よ!」

「えっ!?母さんも!?ふ、2人って!!」

「ふふふ!」


本気なのか冗談なのか、妙子は悟をからかうだけからかってから3人の前にデザートを並べて戻っていった。


「ったく!叔母さん、悪のりしやがって!」

「いーじゃない、悟が真奈のことだーーーーーーい好きなのはみーんな知ってるんだし!ね、真奈!」

「そうね。学校の人たちはみんな知ってるわね。家族まで知っていたとは驚いたけど」

「それは悟が分かりやすすぎるからでしょ!あはは!」

「ぐぅ…そりゃ、そうだけどさぁ…まぁいいや!食べよーぜ!」


そうこうしながら3人がデザートを食べ始めたとき、広場がにわかに騒がしくなった。見るとパレードの集団が到着したようだった。


「美味しいデザートに楽しいショー!いいねー!」

「だろ!ここでこれを見たかったんだよな!計画した通りにいってよかったぜ!」

「悟にしてはなかなかいい計画ね。やるじゃない」

「うぉーーー!!真奈に誉められたーー!!うぉーーっぶべっ!」


怒れる泉に地に伏す屍(悟)。


(うん、平常運転)


真奈はそう思いながら華々しいフィナーレを迎えているショーをながめていた。

すると、何かの光が真奈の目に飛び込んだ。


(何?どこから光が?)


真奈は回りを見渡すが広場やレストラン内に変わったところはない。


『キラッキラッ』


また何かが光った。しかし真奈以外、気が付いた者はいない様子だ。


(泉も悟も気がついていない?周りの人たちも…何?)


自分だけが感じる異変を不審に思いながらも、真奈は辺りをじっくりと観察し始めた。

広場やレストラン内以外に真奈の席から見えるのは、御茸寺と奥の院だ。今度はそっちをじっと見据えると…


『キラッ!!!』


一際目映い光が奥の院の方から放たれた。


「っく!」


あまりの眩しさに手をかざし目をつむる真奈。


「真奈?どうしたの?」

「ん?真奈、頭でもいたいのか?大丈夫か?」


(私にだけしか見えていない…?)


同じ方向を見ていたのにも関わらず、真奈の様子に驚き心配する2人。


「大丈夫よ。何か眩しくて。」

「ショーの演出の光が目に入ったんじゃない?チカチカしない?見える?」

「俺は全然気が付かなかった。座る位置がずれてるからか?」

「さぁ…どうかしら…まぁ、なんともないから大丈夫よ。ありがとう」


3人の異変に気がついた妙子がやってきた。


「何かあった?」

「真奈が急に眩しがってさ、大丈夫かって話してたんだ」

「ショーの演出かなぁって話していたと頃なんです」

「大丈夫です。少し驚いただけなので。ただショーの光ではなく、山の方が光ったように思って…でも2人は見てないようなので勘違いだと思います。」

「え?山が?…まぁ、なんともないなら大丈夫ね。突然の出来事は誰でも驚いてしまうわよね。さぁそろそろ次のプランがはじまる頃じゃないの?色男さん!ふふふ!」

「ばっ!色男とか!そんなんじゃねーし!」

「はいはい!悟ちゃん!あはは!」

「明石!ちゃんはよせ!!もー!次行くぞ次!観覧車タイムだ!」

「あははは!はーい!」

「行ってらっしゃい!2人ともまたいらっしゃいね!」


赤面し慌てる悟の様子に笑う妙子と泉。ざわついた雰囲気はあっという間になくなってしまった。ただ真奈だけは妙子の言葉と謎の光が気になったままだった。

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