マッシュパーク
マッシュパークは御茸寺から徒歩5分程度の場所にあった。ただしそれは出入り口の位置関係であり、敷地同士は隣接していた。
入場手続きを終えた真奈たちがパークへ入った瞬間、明るく大きな音楽が鳴り響いた。真奈たちが歩くのをやめ音楽のする方を見ると、マッシュパークのメインキャラクター5人がメインステージに勢揃いしていた。どうやらちょうどショーの時間だったのだろう。用意されているベンチは小さい子ども連れの客で満席、立ち見の客もちらほらいるようだった。
『みんなー!こーんにーちはーー!!』
「「こーんにーちはーー!!」」
『マッシュマッシュマッシュ!今日も僕たちマッシュファイブに会いに来てくれてありがとー!』
『一緒に歌って、踊って楽しもうねー!』
「「はーい!!」」
台詞の合間合間に独特のポーズを決めまくる5色のキノコモチーフ戦隊ヒーロー。そんな彼らに熱烈な視線を送る子どもたちと親たち。悟と泉も同じように目を輝かせた。
「あー!マッシュファイブか!懐かしい!」
「ホントだー!よく子どもの頃会いに来てたなー!」
「だよな!写真とってもらったりしてさ!」
そう、マッシュファイブが結成されたのはマッシュパークが開園した1990年。結成当初からパフォーマンス力で注目を集め、さらには子どもたちに向き合い寄り添う姿勢からどんどんファンを獲得していった。それから4半世紀たった今、さすがに中の人は代替わりしたようだが人気は衰えていない。
「懐かしいね、真奈!」
泉はすっかり楽しかったあの頃にタイムスリップしたような気持ちで真奈に声をかけたが、すぐに困ったような表情の真奈に気がついた。
「あっ!!ごめん…」
「ん?あっ!!バッカ!お前っ!」
「いいのよ、気にしないで。今は大丈夫なんだから」
自分の失言に気がつき涙目になりながら謝る泉と本気で泉をたしなめる悟に、真奈はにこりと微笑んで返した。
「でも…」
「本当よ。だから泣かないで、泉。それに悟も怒らなくていいわ。」
「うーん、真奈がそう言うならいいけどよ…」
「大丈夫!それに私も懐かしいなって思ったのは同じよ。部屋の押し入れにあるマッシュファイブのグッズがつまった箱のことまで思い出したわ」
真奈は幼い頃、原因不明の熱で倒れ1年半ほど入院生活を余儀なくされたことがあった。退院後も安静のため小学校に入学してからもほとんど通学できず、病院と自宅で過ごすだけの日々だった。幼なじみの泉と悟は真奈のお見舞いに行くこともあったが、原因不明の病ということもあり1ヶ月に1度程度しか会えなかった。
そんなある日、2人が久しぶりに会いに行くと激しく泣きじゃくる真奈がいた。理由はマッシュファイブ。3ヶ月ぶりに登校したとき、クラスメイトみんながマッシュファイブに会ったとか握手したとかと楽しそうに話していた。方や真奈はマッシュパークに行ったこともマッシュファイブとの思い出もなかった。
『真奈ちゃんマッシュファイブに会ったことないの?』
今になって振り返るとなんのことはないただの戦隊ヒーローなのだが、その当時はちょうどマッシュファイブに憧れる時期でずっと我慢していた気持ちがその事をきっかけにあふれでてしまったのだった。クラスメイトに悪気がないのは分かっていたし、今はマッシュパークに行けないことも理解できていた。それでも悔しくて、羨ましくて、辛くて…。
真奈の話を聞いて2人も一緒に泣いて、泣いて、泣き通しに泣いて、そして約束した。2人がマッシュファイブに会ったのと同じだけ真奈も会えるようにすると。その結果、真奈の部屋はマッシュファイブのグッズでいっぱいになった。当時はタブレットやスマホなんて無かったし、デジタルカメラやパソコンも子どもが自由に使える時代ではなかった。だからおこづかいを使ってマッシュファイブのグッズを真奈に届けることが2人の考えた方法だった。そしてマッシュファイブお土産作戦は真奈が元気に登校できるようになるまで続いたのだった。
真奈にとってそれはほほえましい思い出のひとつだが、泉と悟は泣きじゃくる真奈が忘れられず少し苦い思い出になっているようだった。そんな2人の様子に気がついた真奈は、2人まとめてギュッと抱き締めた。
「本当にあの時は嬉しかったんだから!2人ともありがとう」
急に抱き締められ真っ赤になった悟と驚きつつも破顔した泉。それぞれの反応を楽しんでから仕切り直すように真奈は声をかけた。
「さぁ、思い出に浸るのもこれくらいにして!今日はどこから回るんだったのかしら?」
「ホントだ!早くしないと遊びたおせなくなっちゃう!」
「おう!今日は俺がエスコートするからまかせとけ!まずは昼メシ!ちゃんと予約してきたぜ!」
悟がそう言った時…正午を告げるオルゴールの美しい曲が園内に響き渡った。




