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謎茸奇譚  作者: 鹿島
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御茸寺の出逢い

ようやく着いた解放感に浸りながら泉は大きく伸びをした。


「うーん!やっぱ頂上は気持ちいい!」

「本当ね。それに少し涼しく感じるわ。そんなに高くまで登った感じはしなかったけど」


真奈の疑問を受けて3人が降りた頂上駅のすぐ裏にある山を指差しながら悟が説明し始めた。


「ここは標高はそんな高くないんだけど、今いるとこのちょっと上の山ん中に湖があってさ。そこを通ってきた風が降りてくるから夏でも気温が低いらしいぜ」

「湖?なんか素敵な響きじゃん!行ってみたいな~!」

「ダメダメ!結構深い湖らしくて、一般人は近づけないようになってんだよ。それでも1年に2~3人は迷い混んで帰ってこないから…やめといた方がいいぜ」

「ええー!怖い!でも神秘的でもあるよね、さすが霊山って言われてるだけあるよ」

「だろ!じゃあ早速その神秘的な霊山のメインスポット、御茸寺に行こーぜ!」


悟の話をきっかけに、3人は御茸寺へと歩き始めた。

御茸寺は駅から歩いて10分ほどの場所にある。山門をくぐるとすぐ本堂があり小ぢんまりとした雰囲気である。本堂の奥に階段があり奥の院まで続いているが、こちらは信者でもそれ相応の者しか入ることができないようだ。


「まずはお参りだな!」


悟に促され真奈たちは本堂に入った。


「おはようございます。こちらにお並びくださいませ」


本堂に入ると巫女服に身を包んだ20歳くらいの女が参拝客を誘導していた。


「あら?確かここはお寺じゃなかったかしら?」


先にお参りしている参拝客の姿を見た真奈が悟に聞いた。


「ん?ああ、ここは名前は寺だけどお参りの仕方は神社と同じだから!」

「どうして?」

「あー。それはなぁ…まぁ、細かいこと気にすんな!」

「悟、知らないだけでしょ?真奈に適当なこと言ってんじゃないわよ!」


そんな3人のやり取りを聞いて誘導を行っていた巫女が話しかけてきた。


「それは名前が後付けされたからです」

「え?どういうことですか?」


真奈の問いかけに巫女はふんわりと笑い、続きを話し始めた。


「失礼しました、私は榎と申します。日本に仏教が伝来する以前から、ここ椎山は霊山として崇められておりました。最初は奥の院にて人々は集っていたそうですが、山頂までの道が険しく体力のある限られたものしか祈りをとどけることが出来なかったそうです。そんな状況を憂い、変革をもたらしたのが第三代の御軸様でした。誰でも参拝しやすいこの場所に山頂を眺められる小屋をお作りになり、そこで祈ることができるよう整備されたのです。それから長らく信者の間では山頂を『上』、この場所を『下』と呼び親しんでいたそうです。そして仏教が伝来した後、どういう経緯からかは判然としませんが、今のような呼び方に変化し定着したということです」

「なるほど、源流は古のアニミズムなのね。だから参拝のしかたは神道の形式をとっているのね」

「ええ、そうです。しかしそれはあくまでもそういう習慣が根付いているというだけ。形はどうであれ心からの祈りは御茸様に届きますよ」


巫女、榎に色々と説明をしてもらっているうちに3人の番になった。それぞれ期待と希望と心からの祈りを捧げ参拝をすませた。その後まだ時間があるということで、辺りを散策することとなった。

本堂の外は真奈たちを含め30人ほどの参拝客でにぎわっており、パワースポットとしての人気がうかがえた。特に本堂の脇にある大きな自然石はご利益があるということで、撫でたり、お賽銭をおいたりする人の姿があった。


真奈たちもご利益を授かろうと石の近くまで歩いてきたときだった。何やら大声が聞こえ本堂付近が急に騒がしくなった。


「どうしたんだ?」

「何かあったんじゃない?」

「気になるわね、行ってみましょう」


真奈たちが騒ぎの様子を見ようと本堂の方へ駆け戻るとすでに何人かの参拝客が集まっていた。


「巫女様!傘の巫女様!!」


大声をあげているのは白い作務衣のような服を着た大柄の男だった。男は本殿に向かって巫女の名を呼んでいるようだった。男の切迫した雰囲気に集まった参拝客たちの間にも張り詰めたような空気が漂っていた。

男がしびれを切らし本堂へと駆け上がろうとしたときであった。ピンとした空気を切り裂くように、本堂奥の扉が開かれた。


「何の用だ?」


扉から現れたのは巫女装束を身に纏った女だった。年の頃は25ぐらいだろうか。長身で涼やかな美形であった。

俗世から一線を画したかのような傘の巫女の雰囲気にその場にいた者たちのほとんどは一瞬のまれてしまったが、白作務衣の男の声で我にかえった。


「主様が…御軸主様が大変でございます!」

「何だと!?分かった。支度が必要だからお前は先に戻れ。すぐ参ると伝えなさい」

「承知しまた!」


男は傘の巫女に一礼すると奥の院へ続く階段を駆け上っていった。傘の巫女は大きなため息をつき辺りに集まった参拝客を見回した後、静かに扉の奥へ戻っていった。

傘の巫女と入れ替わりに榎が出てきた。そして静かに参拝客たちの前に進み出で、ふんわりとした笑みをたたえて一礼した。


「皆様、失礼いたしました。先程はお見苦しいものを見せてしまい申し訳ありません。山門横にお茶とお菓子をご用意しましたのでどうぞ…お気持ちを和らげていただければ幸いです。」


榎の柔らかな雰囲気にざわついていた参拝客たちも落ち着きを取り戻し三々五々にその場を離れていった。


「何だったんだろうね~?」

「さぁな。身内のなかで何かあったんじゃねーか?まぁ、細かいこと気にすんな!お茶もらいに行こーぜ!」

「あんたはただで食べれるから嬉しいだけでしょ!」


(御軸主様に傘の巫女様か。それに白作務衣の男のあの様子…。なにか重大なことがあったんだろうが…)

真奈は2人のやり取りを聞きながら先程のことを考えていたが、気を利かせた悟が3人分のお茶とお菓子を持ってきたことで現実に引き戻された。


「まぁ、そういうなって!うまそーだぜ!ほらこれ、明石のな。こっちが真奈!」

「ありがとう」

「サンキュッ!」

「ところで、そろそろマッシュパークに移動しようぜ!時間もちょうどいいし、腹も減ってきたしよー!」

「うん、そうだね~!」


そうして真奈は心に少しわだかまりを残しつつ、3人は御茸寺を後にしたのだった。

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