石の部屋~目覚め~
(どうしたものか)
真奈は考えあぐねていた。
自分がおかれている状況を言語的思考で表現できないなど久しぶりだった。
いついかなるときも飄々と過ごしてきた真奈にとって今の状況は本当に珍しいことで、つい思考するのをやめ過去を振り返ってしまっていた。
「思い出に浸っている場合じゃないわね」
誰もいない空間に真奈の声が響いた。
真奈はなんとも空々しいその響きを聞き、やっといつもの自分が戻ってきたように感じた。
「とりあえず、現状確認をしましょう。って言っても誰も聞いていないんだけど…まあ、声だし確認はミスを減らすってよくチーフも言っていたしね」
権力者には水飲み鳥のようによく腰の曲がるいけすかないヤツのことを思い出しながら、真奈は辺りを見回した。
真奈のいる空間はあまり明るくない。しかし行動不可能な暗さではなく、明け方のように静かな薄暗さだった。
広さは20畳ほどで、高さは約3メートルの立方体構造。
壁に向かって歩くと、コツコツと足音が響いた。
「広さと天井の高さだけ見ると、お金持ちの応接間って感じね。床は…石かしら?けっこう固い感じね」
壁も床と同じような感触がする。壁に手を付けて一周歩いてみたが、扉のようなものはなかった。
「大きな石の箱ってことかしら?これは自力でここから出るのは無理ね。出られそうにないのなら、無駄に体力を使わず大人しくしていた方が良さそうね」
真奈はそう結論付けてその場に腰を下ろした。
「周辺確認も終わったし、これからどうしたらいいかしら…。本当に面倒なことになったわ。だからあの時嫌な予感がしたのよね。そう言えば彼はどうなったのかしら…?」
自分ではどうしょうもない現状にげんなりしながら、真奈はこうなったいきさつを思い出し始めた。




