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華那……たった十円の奇跡  作者: 梓理(あずおさ)
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第二十七章 高校三年生の夏

 華那は高校三年生になった。周囲の友達は大学受験勉強一色になり、普段友達同士でお茶する機会も減った。

 華那は相変わらず進学塾に通わず自分流に勉強を続けていた。史朗とは次第に疎遠になり、もう一年間以上会ってない。

 姉の咲恵は最近華那に意地悪をしなくなったと言うか大分大人っぽくなった。大学生になるとこうも変わるものかと思ったが、華那は最近姉が中年の男性とお付き合いしていて、男性の家庭に入り浸りになってしまっているなんて全く知らなかった。利昭との交際は君子も父親の敏夫も全く知らなかった。


 進学塾に通っていないのに、華那の成績は相変わらず学年で上位をキープしていた。都内の有名進学校でこの成績なら一流大学に余裕で進めるはずで、華那も自信を持っていた。

 成績が悪いやつは勉強嫌いが多い。勉強嫌いだから成績が悪いのか成績が悪くて投げやりになっているのか、兎に角世の中はそんな傾向を示している。成績が良いやつは努力して勉学に励むからか、勉強を面白いと思っているからか様々だが、進学塾ばかりでなく家庭教師を付けてもらうとか、兎に角家計にゆとりがある富裕層の子供の方が成績が良いのも世の中の傾向とも言える。一昔前は最高学府に集まった学生の大半が苦学生だったと言われるが、現在では富裕層の子供たちで占められているそうだ。だから家計にそれ程ゆとりがあると言えない家庭環境で成績が良い華那は現在ではレアなケースだと思われた。


「高校最後の夏休みだからさぁ、あたしたち仲良しが集まって旅行に行く計画があるの。土田さんも行かない?」

 華那は相変わらず少ないお小遣いでやりくりしていたから、余裕がなかった。

「あたし、お金ないから無理かも」

「大した予算じゃないから、パパに相談して出してあげるわよ」

 誘ってきた友達は大企業の重役の娘で高校生のくせにブランド物で身をかためている。

「そこまでして頂いたら悪いよ」

 尻込みする華那を友達が皆で引っ張り結局友達が費用負担してくれて出かけることになった。


 出かける先は南伊豆、日帰りの予定だ。総勢六名が揃って出かけた。


 綺麗な砂浜で六人の女子高生たちははしゃぎ回った。華那は楽しくて来て良かったと思った。交通費や飲食代は約束通り全て最初に誘ってきた友達が出してくれた。母親の君子にはちゃんと旅行に行く場所やメンバーを話しておいたが、費用負担については何も話していなかった。授業料、交通費、参考書代など家計をやりくりして出してもらっており、そんな費用を捻出するために昼間パートで働きに出ている母親に余計な費用をおねだりする気はなかった。やはり実の娘でない負い目のせいだ。


 夕方は海鮮バーベキューだ。最近では食材や道具一切を用意してくれる地元の業者が増えていて、旅行者は食べて飲んでも後片付けは業者任せだからいいとこ取りで遊べる。


 バーベキューを始めると五人ずれの大学生のグループが近付いてきた。

「よかったら僕たちと合流しませんか?」

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