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華那……たった十円の奇跡  作者: 梓理(あずおさ)
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第二十一章 嫉妬

 華那は中学二年生の頃から急に身長が伸び出し、高一になった時は百七十三センチに達して、クラスでも背丈が高い方になっていた。姉の咲恵に比べると小学校の時から少し身長が高かったが、今では十五センチ位の差があり、すらっとした綺麗な体型に咲恵は嫉妬した。

 子供の頃から華那が着る物はいつもお姉ちゃんの咲恵のお下がりで、華那は新しい洋服を買ってもらう姉が羨ましいと思ってはいたがあまり気にしないようにしていた。いつの間にか土田家では華那は咲恵のお下がりを着るのが当たり前になっていたが、華那の身長が伸びるに従って丈が合わなくなっていた。

 咲恵は華那より太めでウエストサイズが大きかったから、咲恵のお下がりのスカートは華那が着るとヒップハンガーのような感じになって、膝上の丈がちょうどいい感じになったが、ワンピースは丈がちんちくりんで膝上の腿の部分が大きくはみ出し恥ずかしいくらいだ。特に困ったのは袖丈が合わず七部袖のような感じになってしまうので悲しかった。

 パンツはもっと悲劇的だ。お姉ちゃんのお下がりはウエストサイズが大きく、ローライズな物は腰回りがだぶだぶで股下が短かすぎちやんとはけない。それで中三の時、洋裁が得意な友達にお願いしてウエストを詰めて丈を別の布で足して伸ばしてもらってはいていた。お直しが上手で、デザインセンスがあるこの友達は高校に進学してからも手放しがたい大切な友達になった。そんな華那の苦労を咲恵は横目で見ながら満足感を味わっていた。

 華那が都内でも有名な進学校に進んだことを咲恵は面白くなかった。それでしばしば通学定期券や参考書を隠したり、お下がりとして華那にあげる洋服をわざとボロボロにしてしまったりして意地悪をした。

 咲恵の意地悪の原因を華那は分かっていた。原因が分かったからと言って咲恵の嫉妬を避けるのは難しいから、華那は黙って我慢をした。

「お姉ちゃん、あたしがもらってきた化粧品のサンプル知らない?」

「見てないよ。あんたは素肌でも綺麗だから化粧品なんて必要ないでしょ?」

「どこに行っちゃったのかなぁ。今日はお出かけするから使いたかったのにぃ」

「高一でお化粧なんて生意気だよ」

 華那がもらってきた二十代向けの基礎化粧品セットのお試しサンプルを見付けた咲恵はこっそりと隠して、華那がいない時に使っていた。


 母親の君子は咲恵が華那を嫉妬してしばしば意地悪をしていることに気付いていなかった。咲恵の援助交際事件も元々は史朗と仲良くする華那に嫉妬したのが原因で始まったことも知らなかった。

「子供が悪さをしてここに呼び出される殆どの親は、ちゃんと子供のことをみているつもりでいるようだがね、実は子供のことがまるで見えてないんだ。うちの子に限ってなんて言い訳は耳が腐るほど聞かされてるよ」

 と君子に言い放った刑事の言葉の意味を君子は理解するどころか刑事ってやつは嫌なやつだ等と知人に愚痴っていた。

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