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華那……たった十円の奇跡  作者: 梓理(あずおさ)
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第十五章 咲恵の行動

 勢いで咲恵は裸になって史朗に抱きついたものの、まだ中三の咲恵はセックスの経験がなく、男の方が導いてくれなければどう先に進めばよいのか分からず、夢中で史朗のパンツに手をかけた。咲恵の手がベルトを外そうとしたとき、史朗の手が伸びてきて、咲恵の手首をつかんだ。

「咲恵、まずいよ。やめようよ」

 そう言うと史朗は起き上がって明かりを点けた。

「いや、恥ずかしいっ」

 咲恵は毛布を引っ張って身体に巻き付けた。その前に史朗はあぐらをかいて、咲恵の目を見た。咲恵の身体は小刻みに震えている。

「僕たち結婚してないだろ? 僕はね、こう言うことは結婚してからでないといけないと思うんだ。僕の周りには結婚もしてないのに女と寝たなんて自慢げに話をする人もいるけど、社会には皆が幸せに暮らしていくために自然に出来上がったルールがあると思うんだ。もし、もしもだよ、お互いの親兄弟も知らない者どうしがこんなことをして咲恵のお腹に赤ちゃんが出来てしまったらどうするの? 僕たちの親が反対して結婚できなかったら、咲恵は中学生でシングルマザーになってしまうだろ? 咲恵も僕もまだ収入がないからどうして生活していくのか難しいよね」

「……」

 予想もしない展開に咲恵はどう応えれば良いのか分からず、自然に涙が頬を伝って落ちた。史朗の手が咲恵の頬の涙をそっと拭ってくれると、咲恵は肩を震わせて嗚咽した。


 咲恵の嗚咽が鎮まると、

「シャワーしてこいよ」

 と言って史朗は部屋を出て行った。咲恵は言われるままにシャワーを使って衣服を着た。

「史朗さん、大人だなぁ」

 服を着終わると咲恵は思わず呟いていた。


 華那は史朗にパソコンを教わりたいのだが、また姉の咲恵と鉢合わせしたくなかった。それで、史朗にネットカフェで教えてくれないかと頼んでみた。史朗が了解すると、史朗より少し早くネットカフェに出かけた。店に着くと受付の女性の店員が華那の顔をしげしげと見た。

「身分証明書を見せて下さい」

「持っていません」

「学生証とかでもいいですけど」

「持っていません」

「あなた、何歳?」

「十八です」

 華那はウソをついた。

「自動車の免許証とか持っていませんか?」

「持っていません」

 そのやりとりを側でちらちら見ていた男が華那の所に来て顔をのぞき込んだ。

「あっ、先生っ」

 華那の前に立っているのは学校の風紀担当の教師だった。

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