第十章 史朗との再会
仲良しのお友達を誘って、華那が史朗が住む1DKのマンションを訪ねたのは初めて会ってから一ヶ月も過ぎていた。
史朗は華那にもう一度会いたいと思って時々CDショップに足を運んだがまだ会えずにいた。二度ほど電話をしたが変な応対にあったから電話をかけるのを躊躇していた。あれからもう一月近くになる。
「教えてもらった電話番号は間違ってなかったようだけど、おかしいな」
ひとりぶつぶつ呟きながら三度目の電話をかけてみた。
「はい、土田でございます」
電話に出たのはどうやら年配の婦人らしい。
「もしもし、山形と申します。そちらに華那さんと言う方はいらっしゃいますか?」
「華那なら娘ですが、何かご用ですか?」
母親なら知らない男性から電話があれば一応警戒するものだ。
「華那さんは今ご在宅でいらっしゃいますか?」
相手の丁寧な受け答えに少し警戒感が薄らいだ君子は、
「今は出かけておりますが」
と答えた。
「恐れ入りますが、090-XXXX-XXXXにご都合の良い時ご連絡頂くようにお伝え頂けませんでしょうか」
君子はメモを取り伝えておくと答えた。
「華那に誰から?」
側で聞いていた咲恵は先ほどから聞き耳をたてていた。
「山形さんって方からよ」
「あたし、その人知ってるよ。なんか不良っぽい男だよ。華那に話さない方がいいよ」
「そうなの?」
「へんな人と付き合わない方がいいよ」
夕飯の時、君子は華那に聞いた。
「あなた山形とか言う人と付き合ってるの?」
「一度しか会ってないから。付き合ってるとは言えないかも」
「どんな人?」
君子は咲恵から聞いてはいたが華那にも聞いてみた。
「K大の一年生ですってよ。お友達を誘って遊びに行く約束してるんだ」
「本当にK大なの」
「ウソをつくような人じゃないと思うけど」
君子は咲恵の言葉が気になっていた。
「そう? 電話を欲しいそうよ」
君子が華那にメモを渡そうとしたらさっと咲恵が取って、ポケットにしまい込んだ。
「お姉ちゃん、あたしに見せてよ」
「あんな奴と付き合っちゃダメよ」
「お姉ちゃん知ってるの?」
「知ってるよ」
その夜、華那は夜中に起きてこっそりと咲恵のポケットをまさぐりメモを見付けると電話番号を書き写し、また元通りメモを咲恵のポケットに戻した。
翌日華那は史朗に電話を入れた。