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龍シリーズ

天雲

作者: 尚文産商堂

もう、どれだけ昔かは分からない。

俺たち人間と龍族は、身も心も一つだった。

だが、当時の龍族の族長を殺した、どこから飛んできたか分からない一発の弾丸が、全てを買えた。

龍族は人間を、人間は龍族を恨み、戦争が始まった。

だが、戦争はいつしか冷戦となり、緊張状態が続きながらも、互いの領域を侵さないことで、平和な状態が続いていた。

俺は、両親からはぐれて迷子になった紗由里と、そんな平和な世界で運送業をしていたが、抜け道をしようとした村で瀕死の母龍と古代の盟約を交わし、タンニーンを一生涯かけて育てると、二人で誓った。

そして、出会ってから1年後、俺たちは龍族の神に呼ばれ、小さな石を渡された。

その石を頼りにタンニーンに乗って飛んでいると、ある地点で、石が暴れ出し、そして落ちた。

その先には、紗由里の父親とその仕事の上司、さらに、タンニーンを除いては、今や唯一となった人間とともに育った龍である天雲が待っていた。


紗由里は、父親に走って近寄って、抱き合った。

そして、目一杯抱き合ってから、紗由里が聞いた。

「お母さんは…」

「それはどこにいるか、分からないんだ」

「…そう」

それだけだった。

俺はその間に天雲のそばに近寄った。

「天雲と言いましたね」

「そうじゃ。儂は天雲(あめくも)という。おぬしはタンニーンだな」

「どうして僕の名前を」

俺の後ろに立っていたタンニーンが天雲の言葉に驚いて聞いた。

「とうぜんじゃろ。龍族同士は、多かれ少なかれ、無意識の間に情報のやり取りを行うようにできとる。人間とともに暮らすようになってからは、無用の長物となってしまっとるがな。人間が情報交換をしてくれるおかげで」

俺は天雲に気になることを聞いた。

「なるほど。でも、龍族と人間と別れて数百年は経ってますが、どうしてたんですか」

「ざっと500年と言ったところか。あの凶弾に奴が倒れてから」

それから、天雲は、昔のことだがと前置きをして、生まれてからのことを大雑把に話してくれた。


「儂は生まれてからもう600年となる。当時の族長ジギスムントより名をいただいた。そして、生まれる時にちょうどいた少年であるセレン・マイテクとともに生きることとなった。彼は儂と盟約を交わしたことにより、長命となった。100年ほど経った頃、彼は銀色をした謎の物体に吸い込まれるように消えてしもうた。その物体を儂は追いかけていると、突然、銃弾を放ってきた。儂は避けたが、それははるか下にいる族長の眉間を精確に打ち抜きよった。その銀色をした物体は、儂の目の前で突然消えよって、それ以後、見ておらん」

「その話が本当だとすると、人間が撃ったことにはならないのでは…」

俺は、天雲の話を聞いて、すぐに聞いた。

「儂はそう考えた。だが、儂らはあのようなものに頼らなくても、自由に飛ぶことができる。だとすれば、やはり人間のいずれかの勢力が行ったと考えるのだ妥当であろう。当時は、龍族と交わるのを可としない人間もおった。彼らが行った蛮行であろうと断定し…以後のことは分かるであろう」

「それでセレン・マイテクとは」

「以後、会っておらぬ。儂は激昂する龍族らとは別れ、一人で暮らしておった。逸れ龍というてな、儂がその時出会うたのが、タンニーン、おぬしの祖父母に当たる龍たちじゃ」

「僕の?」

「そうじゃ、今の族長は誰かは知らぬが、450年ほど前の族長の、儂が出ていったころの族長のいとこに当たる龍じゃ。彼らが儂を仲介役として、結婚した。そして、おぬしの母親であるゲオルギウスが生まれたのじゃ」

その後のことは、天雲も詳しくは覚えていないという。

途中からは、逸れ龍の逸れと言った感じで、単独行動を取り続けていたからだそうだ。

「それで、紗由里の母親は、どこか知りませんか」

「残念ながら、儂は知らぬ。それは仕方ないことじゃ。全てを知っているわけではないからの。じゃが、調べる方法はある」

そう言って天雲は、地面に寝そべり、寝始めた。

「おぬしらも眠りんしゃい」

そう言ったので、俺たちも、タンニーンや天雲に寄りかかるようにして、眠った。

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