プロローグ「襲い来るは宵闇の者達」
まぁ、慣れないことはするもんじゃないなと。使ったこと無い題材で冒険してみました。悪評立たない程度に頑張りますよ(´∀`)
「退くな!奴等を町に入れるな!」
「くッそ!数が多すぎる!」
宵闇から騒動の声が聞こえる。
そして、鋼と鋼がぶつかり合う音と、何かが焦げた様な匂い。
月明かりに照らされずとも、その喧騒の場所は朱い光で照らされている。
その光は…火矢、か。
サラディンの町から渓流を挟んだ先にある森、火の上がる場所はそこだ。
サラディンの町人が手に武器を持ち、森で戦線を展開している。相手は…人に在らざるモノ、
「異形」
の者共の軍勢である。
異形は各個体によって思考、行動が違うものだが、殆どのものは人や同族に対して攻撃的であり、度々各地の村などを襲っては略奪、虐殺を繰り返す。
サラディンの者達も、幾度かは体験しているはずの襲撃。
しかし、今夜のものは今までと違って苦しい戦のようである。
「くッ!数が多い!」
「これじゃあキリがないぞ!」
次々と倒れていく町の戦士達。
防衛線は町に向かってじわじわと、確実に下がっている。
「森を突破させるな!町を死守しろ!」
檄は飛び交うものの、やはり多勢に無勢か。
慟哭や叫喚も聞こえ始めている。
このままでは…!最悪の状況が、皆の頭を掠める。
「皆さん、どうやらお困りの様ですね!」
突如、背後から大声が上がった。よく響く声だった。
「異形を退ける方法が有るんですが、どなたか指令塔役の方、話とか聞いてもらったり出来ませんかね!」
一瞬だけ、
あまりに突拍子もない、緊張感のない叫び声に、戦闘がストップする。
ほんの一瞬だったけれど。
町の守護兵団長、サーライルは一瞬、耳を疑った。
戦線は優勢とは言えず、むしろ絶望的な状況に有る。
それを覆すことが、果たして可能なのかと。
「えぇい、仕方有るまい!」
藁にもすがる気持ちで、目の前の異形を振り払いつつ、声が上がった方向へと走った。