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二十五番連隊所属第四小隊

更新は基本不定期です。ごめんなさい。

リアルが忙しく無くて、気分がノリノリになると割と早くなります。

――翌日――


再び俺はメイナードに司令室へ呼び出された。

ちなみに、昨日宿泊するべき部屋を聞きそびれてしまい、もう一度聞きに行くのも面倒だったのでその辺の椅子で寝ていたら警備員に不審者として捕まったのはまた別の話だ。


「何が別の話だよ。ちゃんと僕の所まで報告来てるからね」

「ぐ、人の心を読みやがって。だいたい場所を言わないそっちが悪い」

「それは確かに悪かったけど、聞きに来るくらいしても良いと思うけどね。まさかそのまま寝るとは思わなかったよ、やれやれ」


メイナードはあからさまに肩を落とす。何だよこっちはベンチで寝てただけだってのに。


「はいはい、悪かったよ。で、用件はなんだ」

「……その切り替えの速さは見習うべきなのかもね。まぁ良いや、とりあえず君の所属する部隊が決まったから今日からそこへ行ってくれ」


そう言って渡されたIDカードの様な物にはこう書かれていた。


「『世界連合軍二十五番連隊所属第四小隊 ブラッド・ハーヴェスト軍曹 Ⅱ級インフェクター』、ね。大層な肩書きなだこと」

「Ⅱ級のインフェクターは無条件で軍曹相当の階級が与えられるからね。ま、でも肩書きよりも何を成したかが大事だよ」


そう言うとメイナードはどこかへ通信を入れる。


「僕がこの先案内しても良いんだけどね、生憎今日はちょっと仕事が入ってるんだ。代わりの者が隊の所まで案内してくれるはずだから付いて行ってくれ」

「あっそ」


すると、直ぐに司令室のドアがコンコンとノックされる。通信を入れてからそう時間は経っていないのに大した手際の良さだ。


「入って良いよー」

「し、失礼します」


そういって入ってきたのは眼鏡を掛けた小柄な女性だった。どこか緊張した面持ちで静かに歩いてくる。

というか、この顔どこかで見たような……。


「あれ? あなたは先日の……」

「何だ、書類ぶちまけた奴か」

「あうぅ……あんまりその事は言わないで下さい……」


そう言うと恥ずかしそうに少し俯く。先日あった時と同じような感じだ、恐らくこれが地の性格なのだろう。


「何だ、知り合いだったのかい? それは丁度良かった」

「まぁ知り合いと言うか何というか微妙なラインだがな……」


何とも奇妙な縁でまた会ったものである。


「君、この人をセシル君の隊まで連れてってやってくれ」

「セシルさんの……。はい、分かりました」


小柄な女性は了解したらしく返事をすると、司令室の入り口のドアを開ける。


「こちらです、着いてきてください」

「はいはい」

「また何か伝えることがあったら呼ぶよ。色々とかなり心配だけど頑張ってね、とりあえず問題は起こさないでくれると助かるんだけど」

「余計なお世話だっつの」


俺は微笑を絶やさない司令官に別れを告げると。司令室を後にした。



………………

…………

……


司令室を出てエレベータに乗る。

俺が入る隊は今は演習中らしく、ここから外へ出るらしい。


「それにしても驚きました。あなたメイナード司令とお知り合いだったんですね」

「? いや、ここに来て初めて会ったが」

「えっ!? じゃあつい昨日会った人にあんな風な口利いてたんですか?」

「まぁ敬語なんぞ使ったこと無いからな、あれが俺の普通だ」

「……そ、それは直した方が良いと思いますよ」

「善処しよう」


適当に返事をごまかしていると、エレベーターは一番下へと到着した。

そこから入り口へ行き、IDカードを見せ簡単なチェックを受けて外へ出る。


「そういえばまだお名前聞いてませんでしたね。私はロザリー・シャリエールって言います。普段はオペレーターや受付なんかを勤めてます。苗字が長いのでロザリーって呼んで下さい」

「ブラッド・ハーヴェストだ。高貴で崇高なるブラッド様と呼ぶ事を許可しよう」

「……自分で言って恥ずかしくなりませんでした?」

「……少し後悔した」

「くすっ。面白い人ですねブラッドさんて。軍人さんぽく無いです」

「それ、人に会うたびに言われるが俺はむしろ褒め言葉として受け取るようにしてるね」

「そ、それはどうかと思いますけど」


そうこうしていると射撃場のような場所が見えてくる。時々大きな爆音が聞こえるところから、今実際に訓練しているのだろう。


「今あそこで訓練中みたいですね」

「ほう、どれどれ」


離れたところから訓練を見学する。今行われているのは射撃訓練のようで、離れた位置から的の中心を狙って撃つものらしい。

俺が見ていると、白くて厳ついライフルような物を担いだ金髪の男が塹壕に伏せた。あの位置から的を撃つようだ。


「おいおい、あんなとこから撃つのか? どう見ても1000メートル以上離れてるぞ」


俺が驚いている間に、金髪の男はバイポッドでライフルを固定し、照準をつけ始めた。そしてやがて引き金を引く。

青白い閃光が迸り、その閃光は的の真ん中へと吸い込まれるように命中する。間髪いれずに男は再度引き金を二度、三度と引き、合計で5つの閃光が発射された。

5つの閃光はどれも的に正確に命中していた。


「あちゃー! 一発外しちまった。今日は調子悪いぜ」


撃ち終わった後金髪の男が額に手を当てて悔しがる。


「あの連射速度で5発中4発がど真ん中、一発がど真ん中のちょい上だってのに調子悪いのか。十分な精度だと思うがな」


俺は命中した的を確認して呟く。


「ブ、ブラッドさんよくあんな遠くにある的のどこに当たったかなんて分かりますね。私なんか的があるって言うのがやっと分かるくらいですよ」

「鍛え方が違うからな。その気になれば100メートル離れた女の胸のサイズまで分かる」

「……尊敬して損しました」


ロザリーに白い目で見られていると、金髪の男がこちらに気付いた様子で歩いてくる。

すると近づいてくるにつれ、この男が俺とそう変わらない年齢の若者であるという事が分かった。


「よっ! ロザリーちゃんおひさー。最近あんまり来てくれなくて寂しかったぜ」

「こんにちは、アルヴィンさん。ごめんなさい仕事が忙しかったもので……」

「いいっていいって! また暇な時にでも会いに来てくれよ、紅茶でも飲みながらお喋りしようぜ。主に男女の問題について」

「ま、また機会があったらお邪魔します」


ロザリーは苦笑いで曖昧な返事をする。どうやら苦手なタイプのようだ。


「で、こっちはどちらさん?」

「あ、こちらはブラッドさんです。今日からこの隊に配属になるそうです」

「へぇ、お前さんが例の……。なるほどね」


アルヴィンと呼ばれた男が興味深げにこっちを見る。しかし、それは悪意や侮蔑が混じった視線では無かった。


「アルヴィン・ダレッシオだ。初っ端に恥ずかしいところ見せちまったけど、ま、よろしく頼むわ。俺はああいう噂とかあんま気にしねぇから」


どうやら性格は結構お人好しのようだ。まぁ、辺に敵視されるよりその方がこっちとしては楽で良いのだが。


「ああ、よろしく頼む。というか4発もど真ん中に当たってんだから上出来だと思うぞ」

「……へぇ、お前さんあれが見えてたのか。なかなか良い目してるじゃねーか。……これはまた面白そうな奴が入ってきたな」


アルヴィンは面白そうに笑みを浮かべる。


「? ブラッドさんがどうかしたんですか?」


ロザリーが不思議そうな表情を浮かべている。どうやら俺が噂の死人だと気付いていないようだ。


「なんでもねーよ」


別に自分から言い出す事でもないので適当に言葉を濁して本題に入る。


「あんたのとこの隊長に会いに来たんだがどこにいるんだ?」

「ああ、ウチのお嬢ね。今は演習所の詰め所にいると思うぜ」

「お嬢? また変なあだ名だな」

「ははっ、会えば分かるさ」


なにやら意味深な微笑を浮かべる。お嬢と呼ばれるからにはそれなりの威厳があるのだろうか……分からん。

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