10歳
どうも、HALです。これが初めての小説です。中学生が書いた未熟な文ですが、最後まで読んでもらえると幸いです。
地球から約250万光年。アンドロメダ銀河の外れに、その惑星はあった。
名を、タ・ネチェル。
その惑星は美しい自然に覆われ、そして魔法に満ちていた。
そして、文明があった。「人間」と呼ばれる種族が造り上げた文明だ。地球の中世さながらのその文明は、その惑星に彩りを与えていた。
だが、この話は「人間」の話ではない。少し特別な種族、一人のエルフの物語。
悠久の時を生きる種族、エルフ。そんなエルフの、一人の少女の物語だ。
◆◆◆
青々と育った草原。陽の光を浴び、煌めく小川。風は花を揺らし、小鳥は空を舞って歌う。誰もが見惚れる、絵のような美しい景色。そんな中にある小さな丘の上に、その小屋はあった。
白い壁に、赤い屋根。とても簡素な作りだが、それは景色とよく映え、まるで絵画のようだった。
そんな小屋の中に、少女が一人。7歳ほどだろうか。鮮やかなコバルトブルーの長髪に、細く尖った耳が特徴的。着ている白いワンピースのような服も相まって、それは美しいを超え、天使のような神秘ささえも感じられた。
彼女は机に座り、何やら絵を描いている。花びらを潰して塗られた絵。花の汁で線はにじみ、お世辞にも上手とは言えない。しかし、藍と黄色で塗られたその絵は、カラフルで、とても綺麗な色をしていた。
「――できた」
少女はそう言って、絵を目線の前へと持ち上げる。出来栄えに満足したのか小さく頷くと、少女は立ちあがる。そして、椅子を蹴って、外へと走っていった。
花咲く丘を、彼女は駆け下りる。風が草の匂いを運ぶ。向かうは、小川の向こうにある小さな村。少女は、小さな身体をめいいっぱい動かして走る。
しかし、疲れてしまったのか。彼女は小川の手前の、小さな岩で立ち止まってしまった。
「めんどくさいし……いいやっ」
少女はそう言うと、両手を前に突き出す。すると――
ひゅ……
風が、揺らいだ。ゆらぎは段々と大きくなり、やがて、少女を包んでいく。
「――よっと」
少女は岩を蹴る。次の瞬間、彼女は宙へと浮かんでいた。
彼女は風に支えられるように、その青い髪をなびかせて浮かぶ。
「それじゃっ」
そう少女が言うと、一際大きな風が草原を凪いだ。少女はその風に乗せられ、村の方へと飛んでいく。花びらが少女のそばを舞い、柔らかな陽の光がそれを包む。
それは、夢のような、ただひたすらに美しい景色だった。
◆◆◆
少女は小さな村の、小さな石造りの建物前に着地した。建物からは煙突が生えており、そこから灰色の煙がもくもくと出ている。
少女はドアノブに手をかける。しかし、そのドアノブは彼女には重いのか、なかなか開くことができない。
ガチャ
しばらく悪戦苦闘をしていると、誰かが中からドアを開けてくれた。いきなり空いたドアに、少女は前に倒れそうになる。
「あぁ、すまんすまん。大丈夫か、トートちゃん」
中から出てきたのは大柄のひげがもじゃもじゃのおじさん。耳は尖ってない。鍛冶で使う分厚いエプロンを付けて、相変わらず煤で黒くなっている。
「――ジェフティさん」
少女――トートは、そう言ってジェフティを見上げる。
「お、どうした?トートちゃん。何を持ってるんだ?」
ジェフティは、トートの手にある、丸められた紙を見てそう聞く。
「だめ。ジェフティさんには、見せない」
「えー、なんでさ。おじさんにも見せてくれよ」
二人はそんな会話をしながら、建物――鍛冶屋の中に入る。中は薄暗く、黒く煤で汚れている。そんな中で、炉の火だけが煌々と光っていた。
「お母さんとお父さんに、これ見せる」
トートは、どこかふてぶてしい話し方で、そう言う。
「そっかぁ。それじゃぁ、おじさんは見るわけにはいかないな」
ジェフティは笑いながら、そう言う。
「二人なら、今なら裏の畑にいるんじゃないか?」
彼はそう言って、裏口のドアを開けようとする。しかし、トートが彼のエプロンをひっぱていることに気がついて、立ち止まった。
「――んっ」
トートはジェフティに向かって右手を差し出す。それを見て、ジェフティは大笑いした。
「ハッハッハッ。トートちゃんにはかなわんな。よし、少し待ってろ」
ジェフティはそう言うと、鍛冶屋の奥へ行く。そして、戸棚から小さな飴のようなだが、キラキラと光っている何かを取り出した。そして、トートの小さな手に、それを乗せる。
「ありがと、ジェフティさん」
トートは無表情だったが、その目は喜びで輝いているように見えた。彼女はもらった飴のようなものを口に放り込むと、店の裏口へ走っていく。
「気をつけるんだぞー」
ジェフティは、トートの姿がドアの後ろへと消えていくのを見ると、鍛冶の仕事へと戻っていった。
◆◆◆
「――お母さん、お父さん」
ジェフティさんの言った通り、裏の畑にトートの両親はいた。まだ青い小麦の絨毯の中で、二人は小麦の世話をしていた。
「あら、トート。来たの?」
トートの声に気づいた母親が、トートに向かってそう言った。彼女の髪は金色で、そして耳は尖っていない。
「こら、家で待ってろって言っただろう」
そう言う男性は、おそらく父親だろう。茶色の髪の毛に丸眼鏡。そして、こちらも耳は尖っていない。
「これ、見て」
トートはそう言って、持っていた絵を広げる。そこに描かれていたのは、黄色と碧で描かれた、夜空と星の絵。紙いっぱいに描かれたその絵は、色が滲んで不格好ながらも、とても元気な絵だった。
「お、どれどれ」
「あら、すごいじゃない」
二人は持っていた鎌を置いて、トートに寄った。
「頑張って書いたのね」
母親は腰をかがめてそう言うと、トートの頭を撫でた。
「うん」
ふてぶてしさは相変わらずだが、トートは満足そうに、そう言った。
「すごい綺麗だな、これ。何を使ってこんなきれいな色を塗ったんだ?」
父親は、トートの描いた絵を眺めながら、そう聞いた。
「えっと、きれいな花がたくさん咲いてたから、潰して色塗った」
「へぇ、すごいなー」
トートの説明に、父親は感心した様子を見せる。
「それにしても、トートはお星さまが好きなのね」
「うん、好き」
トートは星が大好きだ。それも、夜中にこっそりベッドを抜け出して、徹夜して星を眺めるほどに。
「だけど、夜はちゃんと寝ないとだめよ」
「……やだ」
トートの徹夜は、ここ最近の両親の悩みである。
「父さんたちはもう少し仕事があるから、少し待ってな。テトたちも、水車小屋の向こうで遊んでるみたいだし、お前も一緒に遊んできたらどうだ?」
父親は、草刈り鎌を持ち直しながら、そう提案した。
「ん……うん」
トートは少し考えたあと、そう言って奥の水車小屋の方へ、トテトテと走っていた。
両親はそれを、笑顔で、少しさびしそうに眺めていた。
◆◆◆
「――テト」
「あ、トート」
走ってくるトートを見つけた、金髪の少年――テトは、トートに向かって手を降った。
トートはテトのそばまで近づく。身長差があるので、トートがテトを見上げる形になる。
「ねぇ、テトたちは何してるの」
テトと、あと3人ほどの子どもたち。彼らが木の棒のようなものを持っているのを見て、トートは聞いた。
「えっとね、魔法の練習!」
トートの言葉に、3人の子供の一人が、元気よくそう答える
「そうそう。なぁ、トート。教えてくれよ。どうしたらそんなにうまく空を飛べるんだ?」
テトは悔しそうな顔をして、そう聞く。三人の子どもたちも、「風は出せるのに」や「きっとトートは何か隠してるんだ!」など、口々に言う。
彼らの言葉を聞いて、トートは相変わらずの無表情で、自分の足元を指差す。
「――こう」
次の瞬間、トートの足元に風が生まれる。土埃が舞い、小さなつむじ風がトートを包み込む。トートが地を蹴ると、トートの体は風に乗せられ、宙に浮く。青い髪がなびき、陽に照らされ輝く。それは、とても神秘的な様子を見せた。しかし、
「――だから説明になってないんだって!」
とても説明とは言えないそれに、テトは怒る。
「え、だからこうだよ」
トートはそう言って、宙でクルンと一回転する。
「だから、こうってなんだよ!」
話の通じないトートに、テトは苛立つ。三人の子どもたちも、「おかしいよ!」「こうってなに?」「わかんないよ!」と文句を言う。
「えー、わかんない」
トートはそう言って、宙に浮いたまま寝始めてしまう。
「おい、教えろよ!」
「教えて!」
「起きて!」
テトたちは、トートを起こそうと、寝ているトートの手を掴み、揺らす。
「あ、ちょっと――バランスが崩れ――」
ドスンッ
バランスを崩したトートがテトの上に落ちる。
「いったぁ」
テトはトートといっしょに転ぶと、背中を地面に打ち付けた。もろに衝撃を受けたので、なかなか痛い。
「テト、手」
トートの言葉に、テトは自分の手を確認する。すると、テトの右手はトートの胸を鷲掴みにしてしまっていた。
「あっ。ご、ごめん……」
テトは慌てて手を引っ込める。
「まぁ、いいけど……」
少し頬を赤らめながら、起き上がるトート。
「わぁ、テトのスケベ!」
「へんたい!」
「しょうがないじゃん。いきなりだったんだから!」
3人の子どもたちからのからかいの声に、テトも頬を赤らめて反撃する。
子どもたちのワイワイとした声が、夕暮れの空へと響いていた。
◆◆◆
「それにしても身長、だいぶ開いたよな」
テトはそう言って、トートを見下ろす。二人でベンチに並んで座っても、テトとトートの身長は、頭半分ほど差がある。
「うん。お母さんが、もうこれ以上はあんまり伸びないかもって、言ってた」
トートは周りの子達とは違ってエルフだ。エルフには不老期があり、それが訪れる時期には個人差がある。
トートは今年で10歳。同い年のテトと比べても、かなりの身長差ができてしまった。
「いいなぁ、トートは。だって、まだまだ働かなくていいんでしょ。僕なんか、あと4年もしたら働かないといけないんだよ」
テトは夕日を眺めながら、そう言った。下の畑では先程の子どもたちが遊んでいる。
「――テト」
トートはテトの服の袖を小さく引っ張る。
「先におとなになるの、ずるい」
少しムスッとした表情で、そう小さく言うトート。その言葉に、テトは笑いながら答える。
「ハハッ、分かったよ。僕がおとなになっても、一緒に遊ぼうな。トート」
「うん」
日が沈む。遠くから両親の声が聞こえてくる。もうすぐ夏がやってくる。




