風邪を!ひくな!!
蝉の声が聞こえなくなり、空も風も、秋のものに変わりつつある、今日この頃。
周辺の稲田には黄金に輝く穂が風にそよぎ、その風はそのまま、周辺に生えている彼岸花と、その光景を眺めている俺の鼻をくすぐる。
「……クシュンっ!……そろそろ涼しくなってきたな。俺も体調には気をつけないと……。」
「輝さま、お忘れですか?」
「ああ………俺が体調管理しててもな……」
「お前らが体調崩してたらい見ねぇんだなぁ!」
俺は大声とともに、城内にある双子の部屋の戸を勢いよくあけ放つ。そこには、寝具に二人して横たわる少女の姿があった。
二人が体調を崩したのは、ついこの間。原因としては……
「余裕こいて川に入って?」
「……そのまま。」
「ま、仕方ないよねぇ。ここまで冷え込むとは思ってなかったし。」
「ていうか、風邪ひくまでって、お前らどれだけ入ってたんだ……」
「二時間とかそこらは入ってたはずだよぉ?」
「多分そのぐらい。」
そんなわけで、天気も気温も見ずに川に入って二人は、見事に風邪をひいているわけである。秋は秋でいろいろあるし、こいつらはそういうこともしたことがなかっただろうから、いろいろとやりたいことがあったのだが…
『まあ、風邪ひくまで川に入れたっていうのは、それだけ満足してやりたいことができる環境になったっていうことだよな…』
ともかく、さっさと風邪を治してもらうことに変わりはない。ほかの人に移してもらっては困る。
「お前らは、熱がひどいってことでいいんだよな?」
俺がそう尋ねると、二人はそろって首を縦に振る。さっきまで話していた時も、しゃべる時は少しゆっくりだった。目も熱でとろんとしていて、まあまあありそうな雰囲気はする。
「わかった。少し待ってろ。」
「わあ~、これ輝が作ったのぉ?」
「意外と家事もできるんだ?」
「お前ら、俺のことなめすぎじゃね?」
しばらくして俺が持ってきたのは、卵を入れた出汁粥と梨だ。出汁粥の中には、体を温めるように生姜も少し入れてある。梨に関しては、水分もとれるし、秋を代表する果実の中の一つだからと思っておいている。
「梨については、きつかったら俺が食べるから遠慮しないでくれよ?」
「安心して?おかゆのほうは残すかもだけど、しっかり梨は食べておくから。水分は取らなきゃだしねぇ。」
「おい…」
それから数日。俺は復活した二人と一緒に、秋祭りに来ていた。
「輝って、いっつもその服だよねぇ。」
俺の服装は、比較的いつも通り。上下黒とこげ茶の間のような服。羽織は邪魔だから着ていないが。
「俺の象徴のようなものだからな。お前らは似合っていると思うぞ。」
今は陰は白地に桃色のにじみ、影は黒字に雪の結晶という着物を着ている。どちらも二人の印象に非常に合っている。
空に打ちあがるのは、今年最後の花火。
「来年も、見られるといいな。」
「当たり前でしょ?」
「輝が風邪をひかなければ、だけどね。」
「俺は風邪ひかねえよ。お前らの心配をしろ。」
俺がそういうと、二人は声を合わせて笑う。
俺はそれを横でみながら、星の映る空を見上げるのだった。
「やつが………………………………やはり、邪魔だな。」
そう、焔城の上で、不思議な鎧を着た何者かがつぶやくのだった。




