第5話 シナリオを作ろう
三日後。
私が昼休みにお弁当を食べていると、文芸部員がやってきた。部員のひとり、望月 唯草だった。この人はぐいぐい進めるタイプじゃなく、比較的おとなしいので話を進めやすい。その分、画期的なアイデアとかは望めないけど。
「あの、約束していたノートです」
ノートを差し出してきた。中を見ると、『タイトル:5年後を映す鏡』とあり、一通りシナリオが書いてあった。また、それに分岐するシナリオもあった。ノートを凝視していると、望月は帰っていった。目の前で読まれるのが恥ずかしいのかもしれない。
友達の支子にはゲームの原画を描くようにお願いしている。このノートを読んだら、支子へ渡そう。シナリオがないと描けないしね。
放課後になった。ちょっと茶道部にも顔を出しておこう。スタスタと早歩きをし、部室のドアをノックをすると、川野が出てきた。どうやら、あの音谷は居ないらしい。良かった。
茶道部は基本的に直接ゲーム作りには参加しないが、これからの予定は報告しておいた。そして、お茶をいただいた。川野は音谷と違ってヒステリーでもないし、お茶の飲みかたも、やさしく教えてくれた。
さて、お茶も飲んだし、帰るかな。教室で帰る準備をし、校舎を出たところで、友達の支子が話しかけてきた。
「今、おかえり?」
「そうだよ!」
偶然ではなく、支子は待っていてくれたらしい。
「これがシナリオなんだけど、イラストお願いできる? パソコンではシルエットしか出てこないけど」
そう言って、私はノートを差し出した。
「大丈夫よ。頑張って描くね!」
他にもいろいろ話をしながら、歩いていたら、家の近くまできてしまったので、別れた。
「じゃあ。ここで」
家に着いて、しばらくして夕ご飯を食べ、お風呂に入った。
湯船につかりながら、プログラムの事を考えていた。
うーん。グラフィックの描画や音声の再生は用意されている関数で良いし、シナリオが分岐したりするときの選択は、キーボードの0~9を押すのが簡単だけど、やっぱりカーソルキーで動かして選択できるのも追加したいね。カーソルキーの動きは、アクションゲームなどの動きの流用でなんとかなりそうね。
今日、お風呂、温い。ちょっと、つまみをひねろう。
ギギギギギ……
しかし、このお風呂はどうにかならないものか。古すぎる。今時、追い焚き式とは。あと、つまみじゃなくて、ボタンで操作ができて、デジタル表示にしてほしい。
「あちっ」
ちょっと、熱くなりすぎた。もう出よう。
ザバーッ。
私は着替えをし、髪を乾かしながら、今日のノートのシナリオを思い返していた。
『5年後を映す鏡』
主人公とその友達が下校途中に鏡を拾う。ただの鏡かと思っていたら、それは5年後を映し出す鏡だった。またその鏡に手を合わせると、5年後の世界へも行ける。そこで未来で起こる出来事とは……。
うん。なかなか興味深い話ね。ちゃんとゲーム化できるかしら。
髪を乾かし終わって、明日の準備をし、私は就寝についた。