第31話 緊張
1次選考の発表から、それなりに日時が過ぎた。そして今日は2次選考の発表である。再び、私の家に部員を呼び、発表時刻まで待った。
やっぱりドキドキする。
時間のちょっと前にブラウザで事務局のサイトを表示させた。そして、更新ボタンを押した。
『2次選考を通過者』をマウスでクリックする。今度は検索する必要もないほど少ない人、チームが表示された。
どうやら、私たちと宮崎 二嗣も通過したようだ。
「やった~!!!」
みんなで叫んだ。
ただ、今回はお祝いなどしている場合ではなかった。大会への準備をしないといけなかった。いろいろと説明がしてあるので、読んでみる。
『交通費支給。ただし、チームの場合は代表者のみ全額支給。他は5名まで半額を支給』
他の部員は半額かぁ。まあ、わりと近い所が大会の会場だから、さほど問題はないね。
『プレゼンはチームの場合は代表者が行う。補佐的なことを他の部員がすることも可』
まあ、これも問題ないね。
翌日から、プレゼンの練習を再開した。
「~~の部分はどのように実装しましたか?」
「~~に影響がありますが、どう評価したのですの」
「~~は~~ですが、調整に偏りがあると思いましたか」
「~~の対策はしましたです?」
とても厳しい質問が飛んでくるが、とりあえずこなした。
練習が何日か続き、いよいよ大会が明日に迫った。
一日が終わり、就寝の準備に入った。
布団に入ると、明日の事を考えてしまい、緊張で手に汗をかいてしまう。
大会出場はとても嬉しいことであるが、怖くもあった。人前で話せるだろうか。
別に義務でもないゲームコンテストに登録するんじゃなかったとか。選考落ちのほうが良かったとか、不謹慎なことも考えてしまった。
チュンチュン……
チュンチュン……
あれこれ考えているうちに、いつの間にか寝ていたらしく、もうすでに朝になっていた。
「行ってきます」
「大会、頑張ってね」
持ち物チェックをして、家を出た。
最寄りの駅には、望月と隅野がすでに待っていた。
「ちょっと遅くなってごめん」
「こちらも、来たばかりです」
「そんなに待ってないから、気にするな」
電車に乗り、何駅か停まったあたりで、川野と音谷が乗ってきた。ここまでは合宿の時と同じ道すじだ。
そして、だいぶ都心まで来たあたりで、カーブが多いのか電車がノロノロ運転になり、次の停車駅で顧問の小海先生が乗ってきた。
「おはようございますですの」
「おはようございます」
「おはようございますです」
「おはようございます!」
みんな元気に挨拶をしたが、私はまだ緊張していて、声が上手く出なかった。
「お…… はようございます…」
「緊張しているの? 大丈夫大丈夫。先生が付いているから!」
そうは言うものの、私はまだ緊張していた。
そして、不安の中、電車は私たちを終点まで導いた。この駅、終点なのだが、一つ手前の駅で降りる人が多く、そこまで混雑はしなかった。
結構不便な場所にある駅で、会場までそこそこ歩いた。
地図の通りに行くと、大きなビルが現われた。この中で行われるのだろう。小さな部屋でやってほしいなと私は思った。
中に入り受付へ向かう。
パソコンで印刷した、大会出場者の証明書のようなものを見せて、奥へ向かった。
控室へ案内されたが、特に準備をするようなことはなかった。上着を脱いで、それなりに整った格好をするだけだ。プレゼン用のファイルもすでに渡してある。
30分ぐらい経った頃、大会が始まった。控室ではなく、会場の客席の近くに移動することも可能だったので、そこで他の人たちのプレゼンを見ることにした。
最初の紹介されるゲームは、どうやら1人で作ったもののようだ。多少緊張気味に見えたが、解説をテキパキとこなしていた。質疑応答もあったが、簡単な事を聞かれるぐらいだった。あんなに練習しなくても済んだかもと私は思った。
次々とゲームが紹介され、『カニツインテール』の番になった。
ゲームを見ると、どうやら私たちと同じ横スクロールアクションのようだ。
大会には慣れているのか、説明をスラスラとスムーズに説明していく。
話を聞いていると、アイテムを取ると超高速移動ができたり、ステージは分岐があったするみたいだ。
そして、ゲームの説明も終わり、質疑応答の時間がやってきた。
「アイテムを取ると超高速移動になるとのことですが、敵にすぐに当たってミスになったりしませんか?」
審査員がそう言った。
これはなかなか厳しい質問である。カニツインテールこと、宮崎 二嗣はどう答えるのか。
「加速中は無敵になるので、敵にやられることはないし、敵の配置等、バランスもしっかりとってある」
ちゃんと考えて設定しているようで、しっかりと答えていた。
その他、質問もあったが、とくにつまることなく、こなしていった。
「次のゲームは、ホーリーベルさんの作品です」
私の番が来てしまった。




