第30話 お祝いと質疑応答
今日は学校が休みだけど、お昼の12時に1次選考の発表がある。発表はウェブサイトで行われる。
なので、インターネットが使える我が家に、部員全員が集まっていた。
「早く結果が知りたいですの」
「12時までもうちょっと時間があるわよ」
「たぶん、大丈夫です」
「早く12時にならないかな」
インターネットが使えると言っても、料金は従量制である。学校のように24時間繋がっているわけではない。
5分前ぐらいになり、パソコンをインターネットに繋げる。
カタカタカタ……
カタカタ……
カタカタカタ……
ピーガーガー
ピー
ジー
カタン……
「ん~? パルス契約なんですね」
音谷がそう言った。
突っ込むところはそこなの。まあ、家の電話の契約がそうなっているのだから、しかたがない。
コントスト事務局のサイトを表示し、1分ごとに更新ボタンを押した。
「おっ、表示が変わった」
11時59分ごろにページが更新された。
『1次選考の結果』の文字をクリックする。
チーム名やハンドルネーム、実名だと思われるものがずらずらと並んでいた。
「そういえば、どんな名前で登録したんだ?」
隅野が聞いてきた。
私はちょっと顔を赤くしながら答えた。
「ホーリーベル……」
自分の名前を英語にしてみたのだけど、やっぱり恥ずかしい。チーム名とか決めてなかったのでこうなってしまった。
コントロールキーとFキーを同時に押して、ブラウザから検索しても良いのだけど、ひとつひとつ名前を見ていくことにした。
ドキドキ……
ドキドキ……
この感覚がたまらない。ジェットコースターに乗っているようだ。
「あった!」
私はおもわず叫んだ。
「あったですの」
「ちゃんと載っているわね」
「あまりましたです」
「あるじゃないか!」
みんなも即座に反応した。
まずは第一関門突破だ。
サイトをよく読んでみると、1次選考を通過した者は後日メールでもお知らせが来るみたいだ。
ここで、もしメールが来ないと、本当に1次選考を通過か分からないし、不安になりそうかなと思った。
ピロン!
メールソフトが反応した。後日と書いてあったが、すぐに1次選考を通過のメールが来た。
内容はサイトに書いてあるような事ばかりなので、サイトを見てない人用なのだろう。
とりあえず安心した。
自分たちの事ばかりで忘れていたが、カニツインテール……本名、宮崎 二嗣も1次選考に残っていた。
「よし。お祝いにファミレスで豪遊しようじゃないか。私が奢ろう」
隅野がそう言って立ち上がった。
「ちょっと待って、宮野に電話してくる」
私はインターネット回線をいったん切って、支子に1次選考を通過した事と、お礼の電話をした。
支子はとても喜んでくれていた。
そして、私たちは近くにある、『ファミレスひばり』へ向かった。
私はイチゴパフェを頼んだ。望月はチーズがメインのパフェ、川野と音谷は抹茶のパフェを選んでいた。
うん? この流れ、覚えがあるぞ。そうだ。クレープを食べたときと同じだ。
私たちはパフェを食べながら、今後の部の活動の事を話し合った。
「仮に2次選考を通過したら、プレゼンがあるらしいじゃないか」
「もしそうなったら、とても緊張しますです」
「でも、今のうちに考えていたほうが良いわね」
「早めに練習すると、良いのですの」
みんなの意見をまとめると、プレゼンの練習をしたほうが良いと。
「っで、誰がプレゼンをするの?」
っと聞いてみたら、みんなは私のほうを向けて指を指した。
うーん。やっぱりそうなのね。まあ、しょうがないね。
そういうわけで、明日から練習することになった。
割と厳しい部活だね。
翌日。
ゲーム画面のスクリーンショットを撮って、プレゼンの資料を作った。予算がなかったので、htmlで作り、ブラウザで表示させることにした。文章や画像表示、簡単なレイアウトぐらいなら、ゲームを作っているプログラム言語よりも楽だ。
プロジェクターを借り、みんなを前に集め、ゲームの説明をした。
一通り説明を終え、続けて質疑応答に移った。
隅野が手を挙げた。
「操作方法はキーボートとコントローラーを選べるとなってますね。アナログ操作も可能だそうですが、キーボードしか持ってないと不利ではないですか? ランキングでは混同しているみたいですが」
うーん。答えづらい質問だ。
「え~。コントローラーを持っていると、より楽しく遊べるように配慮しました。あと、キーボードで遊んでいる途中に、すぐにコントローラーに切り替えもできるので、ランキングは混同したものにしました」
次に音谷が手を挙げた。
「ステージの終わりに味方や敵キャラクターとの短い会話がありますね。ストーリーは繋がっているのに、面セレクトで最終ステージ以外最初から選べてしまいますね。序盤のステージをあまりやらずに最後のほうの会話を見てしまう人もいるのでは」
これも答えづらい質問だ。まあ、簡単な事を質問されても練習にならないけどね。
「ゲームが難しくて、最後までプレイできない人のために、最終面以外は自由にステージを選べるようになってます。単にシナリオだけ読みたい人は対象になっていませんし、いきなり終盤のステージをプレイしても、ステージ最後の会話までたどり着けないと思います」
他にもいろいろと質問されたが、どうにかこなして、質疑応答も終わった。
他の部員もマイクで説明する可能性があるので、ゲームのスクリーンショットを映して、軽く説明する練習を行った。




