第3話 パソコン部を作りたい
今日は朝早く起きた。
うーん。どうも一人じゃゲーム作りも難しいな。
テレビでニュースを観ながら、ご飯を食べていると、どこかの会社の合併話が始まった。
「A製鉄と、B電機が合併をするようです。新設合併のようです」
製鉄と電機、どういう組み合わせだろう。そう思っていると、学校へ行く時間になっていた。
早起きしたのに、時間が経つのは早いわね。私は学校へ向かった。
学校の校門の前で生徒がチラシを配っている。なにやら必死な形相で私に紙を向ける。私はちょっと後退しながらチラシを受け取った。
チラシを見ると、茶道部が作ったもののようで、部員募集をしている旨が書いてある。今2名しか入部してないようで、あと3名入らないと廃部らしい。要するに全員で5名必要だ。
チラシを読み終えると、またまたチラシを配っている生徒がいた。こちらもなんとなくの流れで受け取ってしまった。こちらのチラシも部関係で、文芸部のようだ。読んでみると、茶道部と同じような感じで、後3名入らないと廃部らしい。こちらももちろん全員で5名必要だ。
教室に入って、椅子に座り、あらためてチラシを見てみた。茶道部の内容はだいたいわかるとして、文芸部は何をやっているのだろう。活動内容の説明を見ると、小説や俳句、そして短歌などを書くことが主な活動内容らしい。
……
ふと私に悪魔が舞い降りた。2名と2名と私で5名。まだ存在しない私がいるパソコン部と、茶道部、文芸部が合わさればいいんでは? あっ私自身は存在するよ。パソコン部は存在しないです。突っ込み回避です。
でも、よく考えてみると私は1名で他は2名ずついる。要するにパソコン部は1名だ。まだパソコン部は無いけど。この流れだと、私が茶道や文芸をしないといけなくなる。それはまずい。まずすぎる。
うーん。ふと手に持った学級新聞を読んでみると、デジタル化推進の記事が載っていた。世の中、まだまだデジタル化には程遠いのに、学校でなんかはまあ、無理だね。うん? そうだ! 部員に小説や俳句をパソコンで書いてもらうように説得して、こちらに引き入れてはどうだろうか。そうだそうだ。そうしよう。
放課後、私は文芸部の扉の前に来ていた。ドアを開けようとした瞬間……
ドアのほうから自然に開いた。もちろん自動ドアではなく、中にいる部員が開けたのだけど。
パーン。パッパーン。
突然、クラッカーようなものが鳴った。なんか紙の紐みたいのも出てきたので、やっぱりクラッカーだろう。
「いらっしゃいませ~」
私は中にいた2人に引っ張られ、椅子に座らされた。
これはアレだね。私が文芸部の一員になってしまったような。
しかし、1時間、こちらが説得して、文芸パソコン部という形で部を作ることに成功した。まあ、かなり危なかったです。すでに向こうはワープロを使っているんだもん。ただ、ワープロがモノクロだったので、パソコンだとカラーだよってことで、納得してもらった。
次は茶道部だ。ドアを開けて中へ入って見たら、部員が正座して、茶碗をぐるっと回してから、なにやらお茶っぽいものを飲んでいた。まあ、お茶だろうね。お茶じゃなかったら、なんなんだ。そして、こちらに気づいた部員が話しかけてきた。
「なにか御用でしょうか?」
相手はちょっと不審がっていた。
「文芸パソコン部を立ち上げようとしているのですが、お茶が欲しいです」
私は本心なのか、そうでないのかわからないが、相手を怒らす言動をとってしまった。
とりあえず、いろいろと説明して怒りを収めてもらった。
そして、このままでは部を統括できないので、私も茶道をやるという条件で、オッケーとなった。
あとは生徒会を納得させることだ。生徒会長なら、まだ学校に残っているであろう。なにしろ、生徒会長だし。なので、すぐに生徒会室へ向かった。
生徒会室の前だ。緊張するが仕方がない。私はコンコンとノックをした。
「はーい!」
なんだか声が高く、テンションも高そうな感じだ。
私はドアを開け、中へ入った。
会長は真ん中にある机に座っており、机に肘をついて顎を両手に乗せていた。女の子がよくやるポーズである。そして左に女の生徒会員、右に男の生徒会員が立っている。男は眼鏡をクイッとやるポーズをしていた。
「なんか用?」
今度はテンションの低い声で話しかけてきた。白春 茜。この学校の生徒会長である。
私は新しい部を作りたいこと。そして部員は5人そろっていることを伝えた。
「うーん」
なんか雲行きが怪しいね。
「茶道文芸パソコン部? これって3つの部が合わさって、やっと5人ってことでしょ? 大丈夫なの?」
私は何か言い返さないといけないと思った。そして……
「茶道文芸パソコン部です! 略してパソコン部です。大丈夫です!」
意味不明な返しをしてしまった。
すると……
生徒会長はこう言ってきた。
「パソコンが主体なのね。じゃあ、なにか実績が無いと。今度の学習発表会で何かしらのソフトかゲームを展示して、評判がよかったら、許可しますよ」
学習発表会。日頃の生徒の成果を発表する会である。教室に成果物を展示したりするもので、文化祭のような出店などはない。
そういうわけで、私は6月の学習発表会までにゲームを作らないといけなくなった。