第26話 エントリー完了
文化祭も終わり、片付けを始めた。
パソコンのレイアウトはそのままでも良いかなと思いつつ、やっぱり元に戻しておこうということで、パソコンを下ろし、机を移動させた。
茶道コーナーも、一応片付けた。小説コーナーは特に重い物とか無いので、すぐに片付け終わった。
そして、パソコンのほうも再設置し終わった。
「よし! 終わったぁ」
とりあえず、元に戻り、一安心である。
「そういえば、ゲームプログラムコンテストがあると言っていたね」
パソコンでちょっと検索をしてみた。
『第12回 ゲームプログラムコンテストのおしらせ』と言うページがヒットした。
どうやら冬に大会があるらしい。作品の提出期限があと1か月ぐらいで、選考に残ると、会場でプレゼンをするみたいだ。ジャンルの例に横スクロールアクションもある。なので、今日、文化祭に出したゲームも大丈夫そうだ。
宮崎 二嗣の事も調べてみよう。検索してみると、『カニツインテール』がヒットした。どうやら、それがハンドルネームのようだ。
フリーゲームをいくつか発表していたこともわかった。ダウンロードランキングにも上位に位置し、いくつかのメディアで紹介されていた。パソコンの雑誌にも紹介され、付録のCD-ROMにも入っているようだ。
まあ、それはさておき、さっき見たコンテストにエントリーしよう。その前に部員にも協力してもらえるか確認してみよう。
「私のできることなら、やりますの」
「できる範囲なら」
「大丈夫です」
「ああ。大丈夫だ」
カタカタ……
カタカタ……
カタッとね。
よし、エントリー完了。後は後夜祭だ。
……
……
キャンプファイヤーとか、いろいろあったけど、とにかく疲れて、あまり記憶に残らなかった。
家に着いたら、眠くなって、すぐに布団へ向かってしまった。
すぅ~。
すやぁ。
……
……
チュンチュン……
チュンチュン……
「ん? もう朝かぁ。早いなぁ」
ご飯も食べ終わり、鞄を持って玄関を出る。
ガラッ
太陽の光が目を攻撃する。力は弱いのだけど、角度が良いのかすごい威力に感じる。
あまり正面から見ないように移動して、学校へ向かった。
そして、授業も終わり、部の活動を始めた。
パソコンの前に座り、プログラムを見る。左右へ移動しようとしたときの、移動量を見直し、いろいろと変えて試してみる。
移動は素早く動いてほしいけど、反対方向のキーを押したときに、制御できずに進みすぎるのも良くない。この微妙な調整が難しい。数値を変えて、プレイして、また数値を変える。
1時間ほど、繰り返し、良さそうなパターンをいくつか作った。後ろを見ていると、望月、隅野、川野、音谷、みんなこちらを見ていた。
また、集中しすぎて気がつかなかった。
「話しかけづらかったですの」
「あまりに集中していたので」
「近づきがたかったです」
「話しかけないほうが良いと思ってな」
まあ、それはいい。とりあえず、いろんなパターンをテストプレイしてもらった。
きびきび動きすぎとか、想像したより止まらないなど、いろいろと意見が出ながらも、一つのパターンに決まった。
じゃあ、これで行こうとなったところで、隅野がこう言った。
「地面を移動していても、ジャンプしていても、左右の動きが同じなのはちょっとおかしくないか?」
それを聞いて、川野がこう言った。
「でも、思った通りに操作できるし、良いのではないのですの」
う~ん。どうしよう。どちらの意見も正しそうだ。
「じゃあ、ジャンプ中は地面を移動しているときより、ちょっとだけ左右の移動量を少なくしてみるといいのはないですか。ほんの少し」
音谷がそう言った。
「それが良いです」と望月がぼそっと言った。
なので、ちょっとだけジャンプ中、左右の動きを変えてみようと言うことで決まった。
動きを変えるので、またマップの修正をしないといけないことに。まあ、文化祭も終わったし、いろいろと作り変えないとって思っていたから、いいのだけど。
さて、そろそろ帰る時間だ。顧問の先生が来ないうちに帰ろう。
みんなで校門を出て歩いている中、私は今のゲームにもうちょっと変化が欲しいと思っていた。操作感を変えて、難易度を調整しても、コンテストで良い賞がもらえるとは思えない。いろいろと考えながら歩いていると、みんなが騒ぎ出した。
「ああいう車って久々に見るなぁ」
「珍しいですの」
移動販売している自動車が停まっているのが目に入った。クレープの移動販売だ。キッチンカーってやつかな。
お腹が空いているのは共通のようで、皆、顔を合わせた。
「食べようぜ!」
そう、隅野が言うと、みんなキッチンカーへ向かって走っていった。私もその後を追った。
「いらっしゃい!」
メニューを見ると、そこそこの種類がある。私はイチゴかなぁと思っていると、望月はチーズ、隅野はチョコを頼んでいた。川野と音谷は何にするのかなぁって思ってみていたら、抹茶だった。まあ、そうだよね。
「美味しいね」
みんながそう言って食べていると、望月が下を見ながら、何かを考えている感じだった。
「どうしたの?」
「最近、自分の体重が気になるのです」
まあ、多少は気になるけど、こういう時は食べないと。って思っていると、隅野がこう言った。
「月の重力は6分の1らしいぞ。そこへ行けたらいいのにな」
それを聞いた、川野がこう言った。
「むしろ、重力が反対になって、浮いてみたいのですの」
いやぁ。それはちょっと怖い。宇宙へ放り出されちゃうよ。
うん?
反対? 放り出される?
「これだ~!」
ゲームの世界も重量が反対になったりすれば、より面白くなるかも。
私は重力反転のプログラムをしたくなって、うずうずしてしまった。
そして、すぐさま、クレープを平らげた。
「ちょっと用事思い出したから、先に帰るね」
そう言って、私は駆け足で、家へ向かっていった。
ポカーンとした顔をしている、みんなの顔をよそに、私の頭の中はゲームのプログラムのことでいっぱいだった。




