第25話 口の悪い少女
チュンチュン……
チュンチュン……
スズメの鳴き声が聞こえる。どうやら目が覚めたみたいだ。いろいろな朝の準備をし、朝食を食べる。
さて、そろそろ学校へ行かないと。緊張するなぁ。ゲームを展示するだけだけど。
ガラッ
ドアを開けると、陽が目に入った。この時期は太陽の位置が少し下にあるので、まぶしかった。まあ真冬ほどではないけど。
道路にはまだ葉が覆っていた。風は吹いてなかったが、肌寒かった。
学校へ着くと、早くから来て準備をする姿があった。
教室へ行き、しばらくすると鐘が鳴り、いったん出席を取った。
その後は文化祭の用意のため、各自それぞれ移動した。
私が部室へ入ると同時に、他のみんなも来た。私はパソコンの電源を入れ、ゲームを起動した。そして、ゲームの説明のパネルを横に置いた。
川野と音谷は茶道の準備をしていた。望月と隅野は小説のコーナーのチェックをしていた。
少し経つと部室に人が入ってきた。外部の者も来ることができるが、まずはこの学校の生徒だった。
2人組だったが、パソコンコーナー、茶道コーナー、小説コーナーをちらちらと見て、茶道のほうへ進んだ。やっぱり飲食は強いのだろうか。
「ちゃんと、正座する!」
「はっ、はいっ」
マナー関連で音谷に怒られていた。学習発表会の時はもうちょっと寛容だった気がするけど、今日は気合が入っているのかな。
茶道コーナーに気を取られていたら、いつの間にかパソコンコーナーにも人が来ていた。説明のパネルを見ていた。その後、コントローラーを手に取って、ゲームを始めた。
ステージ1の序盤でミスをしたけど、またちゃんとプレイし続けてくれた。まずは第一関門通過かな。
「う~ん。タイミングが……」
「ここの浮遊感いいね」
ずっと見ていたけど、どうやら水中のステージまではプレイしてくれた。及第点には達しているようだ。
小説コーナーに目をやると、望月と隅野が書いて小説も結構読まれていた。
「ここの表現は結構苦労したのです」
「ここで出てくるお兄さん、本当はムキムキなんだけど、いろいろあってその表現は紙面には書いてないんだ」
お客の質問にも答えているようだ。
そうこうしているうちに、支子も来てくれた。ゲーム自体はどんなものか知っているので、遠くから眺めているようだ。
そして、またお客が入ってきた。
「やあ! ひいらぎ」
「ひいらぎ~」
学習発表会の時にも来てくれた、清水と川上だった。
「またゲームを作ったって言っていたから、来てみたよ」
「今度は横スクロールアクションゲームかぁ」
2人に説明パネルを見せて、パソコンを2台使用でプレイしてもらった。
ゲームは横スクロールアクションで、右へ右へと進み、そのうちゴールポイントが出てくるので、それに触れるとステージクリアである。アイテムを取ると、弾が撃てるようになり、それを使って敵を攻撃する。
また、ジャンプ中にさらにジャンプボタンを押すと、ヒップアタックモーションになるので、その状態で床に着地すると振動が起きて、周りの敵へ攻撃ができる。
複雑な操作は無いので、2人とも割とすいすいと進んだ。
途中、水中を移動するシーンがあるが、ジャンプボタンを押すと、ちょっと浮き上がるようになっている。2人とも特に説明しなくても、私の意図した操作をしてくれた。これは自分的にポイントが高い。
「なかなか楽しかったよ」
「途中で出てくるボスがアレだったけど、良かったよ」
なかなか好評で良かった。途中のボスは半裸のお兄さんだ。うん。アレだよね。
ホッとしていると、また誰かがゲームを始めた。他校の制服を着たツインテールの女の子だ。見た感じ、私と同い年か1つ上ぐらいの感じだ。
うん? どこかで見たような。
そうだ。学習発表会の時に来ていた人だ。あの時はゲームをプレイして、無言で帰っていった。
今回はどうだろうか?
プレイを見ていると、ゲームはなかなか上手いようで、割りとすいすいと進めていった。
みんなはだいたい中盤あたりのステージでやめてしまうのだけど、この人は中盤もこなし、最終ステージへ突入した。
そして、ミスは何度かしたが、すべてのステージをクリアした。
今まで部員以外は見たことのない、スタッフロールも流れた。
彼女の顔を見ると、笑ってはいなかった。むしろ、ものすごく厳しい表情をしていた。
「あの~、どうでしたか?」
私は彼女に恐る恐る話しかけてみた。
「あんたがあのゲームを作ったのか?」
なかなか口の悪い人である。私はビックリしてしまった。
「はい。そうですけど。グラフィックなんかは手伝ってもらってますが、プログラムはすべて私です」
私はそう言うと、彼女は怖い顔して、話し始めた。
「う~ん。後半のステージが難しすぎる。このゲームは敵に触れると、すぐにミスになる」
「あと、左右の動きだが、慣性が働きすぎだ。ジャンプ中でも、普通に左右に動けるが、それでも後半のステージでは敵に当たってしまう」
確かにそうである。私はその的確な指摘に、体のバランスを崩して、床に尻もちをついてしまった。
「だが、いくつか調整すれば、化けそうなゲームでもある。あんた。名前は?」
「柊 鈴と言います」
「私は宮崎 二嗣だ。そうだ。今度、ゲームプログラミングコンテストが近くで開催される。あんたも参加したらどうだ」
そう言って、ツインテールの人は去っていった。ただ、去り際に支子と一言二言、会話をしていたような気がした。どういうことだ。
宮崎 二嗣はどんなゲームを作っている人なんだろう。
ゲームプログラミングコンテストとは?
そして、夕方になり、文化祭も終わった。




