第24話 文化祭の準備
部室へ入ると、珍しく顧問の小海先生がいた。
「レイアウトを変更するから、念のため来たのよ」
他の部員が来てなかったが、私と先生で、部室のレイアウトを変更を試みた。まずパソコンを机から降ろし、隅へやる。パソコンを机に乗せたままの移動だと、ちょっと怖いからだ。
ちょうど、パソコンを隅へ移動し終わった頃に、他の部員がきた。
「もう始まっているのか」
「遅れてしまったのですの」
「遅れましたです」
「遅れてすまんな」
パソコンは5台あるので、すべてゲームの展示に使う。ただし、ゲームは1つしか作ってないので、すべて同じゲームの展示を行う。椅子と椅子の間はそれなりに幅を取る。あんまり近いと腕と腕がぶつかりあってゲームもやりづらいだろうし。
机をレイアウトどおりに設置し、パソコンは各々で運んでもらった。音谷と隅野はちょっと運びづらそうだった。まあ、いろいろね。
パソコンを机の上に置いたら、ケーブル類を繋いでもらった。モニターとキーボード、マウス。あとはゲーム用のコントローラーかな。
あとはゲームのファイルをコピーした。これは開発環境が無くても動くようにした、実行可能ファイルだ。このファイルでの動作も、一通りテストプレイしたので、大丈夫であろう。たぶん。
あとは隅に畳を敷いて、茶道コーナーを作るだけだ。おっと、あと望月と隅野の要望で小説を閲覧できるコーナーを作らないといけなかった。
「柊いる~?」
支子が部室に入ってきた。
「遅くなってごめん。プレイヤーの残っていたパターンの原画を持ってきたよ」
そう言って、ノートを差し出した。
「!!!!!」
おっと、忘れていた。ヒップアタックのアニメパターンを入れてなかった。無くても何とかなるけど、まだちょっと時間があるので、入れておこう。
私はすぐに開発環境を起動して、プログラムを開始……っと思ったけど、ノートに描いてあるのはヒップアタックの中間のパターンだった。
なので、ドットエディタで作らないといけない。まあ、あと2パターンぐらいだから、なんとなるかな。茶道コーナーと小説コーナーは当人たちに任せて、私はドット打ちの作業をしよう。
カチカチ……
カチカチ……
外を見ると、ちょっと暗くなってきた。早くしないと……
カチカチ……
終わった。
次はこのキャラのパターンを表示するだけだ。これは割とすぐに終わる。
さらに集中して、プログラムをする。
カタカタ……
カタカタ……
ふぅ。終わったようだ。
カタッ
「どうぞ」
川野がお茶を出してくれた。周りを見たら、茶道コーナーも小説コーナーも出来ていた。
あと、またゲームのテストプレイだ。ちょっとパターンを追加しただけだから、当たり判定とかそういうのはあまり気にしなくていい。軽く動かして、ちゃんと表示されていれば大丈夫だ。
とりあえず、みんなにテストプレイしてもらった。
「う~ん。大丈夫そうね」
「大丈夫ですの」
あとは、また実行可能ファイルを作って、各パソコンにコピーするだけだ。
窓の外を見ると、もう真っ暗になっていた。
早くコピーを済ませて、帰ろう。
カタカタ……
さて、終了っと。
「明日に備えて、帰りましょう」
小海先生に促されて、私たちは学校を後にした。
昨日より時間が遅いのか、より寒く感じた。昨日と同じように風が吹き、ひらりと落ち葉が舞った。
明日の文化祭はどうなるのだろう。ゲームをプレイしてくれる人はいるのだろうか。面白いと言ってくれるのだろうか。
そんなことを考えながら、帰宅した。
そして、すぐにお風呂場へ向かった。
「今日は机を移動したりしたし、パソコンも設置したりしたし、おまけにプログラムもやった。疲れすぎ」
ぶつぶつ言いながら、体を洗い、湯船へ入った。
勢いよく入ったので、湯船の底から無数の小さな泡が浮いてきた。
「そういえば、水中に入った時に、口からちょっとずつ泡が出るような処理はしてなかったね。明日には間に合わないけど、いずれやっておこう」
ぼけ~っとしていたら、結構時間が経っていた。
「そろそろ出ないと」
湯船を出て、着替えて部屋へ戻った。
さて、明日に備えて寝よう。
しかし、布団に入ったが、眠れない。
うん。あれだね。旅行へ行く前日みたいな感覚。眠れないと困るのだけど、なかなか自分を操作できない。目をつむって、静かにしていると、時計の針の音がする。いつもは気にならないが、こういう時はやけに気になる。
コチッコチッコチッ
コチッコチッコチッ
うーん。気になる。気になる。長針を見ると、ちゃんと1秒ごとに動いているのがわかるんだよね。初めて気づいたときは感動したよ。
……
……
すやぁ。




