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第22話 新しい要素

 部室へ入ると、みんなはすでにそろっていた。最近は私が一番遅く来るようになった。


 みんなマップを必死に作っているようである。マップを書き換えて、実際にプレイし、またマップを書き換える。


 なんとも面倒な作業である。


 私は敵のアルゴリズムを作っていた。今作っているのは最後に出てくる敵である。このステージのマップ作製は最後になる。


 最後の敵、すなわちボスは巨大ウサギである。半裸のお兄さんは途中のステージの中ボスだ。半裸が最後だったら、このゲームは台無しだ。まあ、途中に出てきても台…なわけだけど。


 そして、ボスの巨大ウサギを倒すと涙を流す。そしてエンディングへ。そんな感じだ。


 スタッフロールも時間があれば作っておこう。



 カタカタとプログラムをしていたら、だいぶ外も暗くなってきた。


「今日はもう帰りなさい」


 顧問の小海(おうみ)先生がドアを開けて、帰るように促した。


 教室へ戻る途中、美術部をチラッと覗くと、まだ支子の姿があった。美術部員も文化祭の準備で忙しいのね。


 私は邪魔にならないように、一人で帰った。


 校門を出て、あらためて空を見ると、月が浮かんでいた。周りもほどよく暗くなっていたので、月がより綺麗に感じた。


 パソコン部を作るときは、まだまだ陽が長かったので、それからだいぶ時間が経ったのだと感じた。


 家に着き、部屋へ入ると部活の疲れか、体のバランスが崩れてしまった。



 ドスンッ


 床に尻もちをついてしまった。



 コトコト…コトンッ


 その振動に棚に置いていた、置物が倒れてきた。


 私のお気に入りのニワトリの置物だ。よく見たけど、壊れてはいないっぽかった。



 うん?


 その瞬間、私の脳裏を何かが刺激した。


 プレイヤーがヒップアタックで床を振動させると、敵がミスをするっていうのはどうだろう。


 是非、この要素を追加したい。



 翌日。


 ヒップアタックで床を振動させるアクションを追加しようと、皆に提案した。


「うーん。でもアクションを追加すると、前みたいにマップも替えないといけないのですの」


「今からだと、間に合わないのでは」


「そうだな。ちょっと時間が足りない」


「無理っぽいです」



 まあ、断られるとは思っていたので、自分の考えた案を提言してみた。


「まず、マップ上にアイテムを取ると、ヒップアタックができるようにする」


「ヒップアタックの効果は次のステージには持ち越せない」


「こう考えたのですが、どうですか?」



 すると、音谷が立ち上がり、こう言った。


「たしかに、その条件だとマップを書き換えるところはだいぶ減るね。いいんじゃない?」


 他の3人も、それならと賛同してくれた。



 と言うわけで、マップ作りはとりあえず止めて、私はその要素をプログラムを開始した。ヒップアタックのパターンも1枚だけ私が用意した。中間パターンは後で支子に作ってもらおう。ただ、支子も忙しいし、出来なければ1パターンで済ませる。


 私はプログラムをしている間、隣ではお茶会が始まった。


 音谷がいるから大変そうだ。


「正座する!」


「ちゃんとお茶碗を回す!」



 ほら、やっぱりこんな感じになっている。


 音谷の小言を聞きながら、私はプログラムを継続した。



 カタカタ……


 カタカタ……


 ……よし終わった。



 さて、またみんなにマップ作りを再開してもらおう。


 望月と隅野がくたびれた顔でパソコンに向かった。川野は慣れているので、そうでもなかったけど。



 数日後。


 なんやかんやでゲーム制作も一応は終わった。後は文化祭の時のパソコンの設置のレイアウトなどだ。ゲームのインストールは特に難しいことはしてないので、ファイルをコピーするだけだ。


 川野と音谷は隣にお茶コーナーを作りたいと言っていた。絶対に譲らないという顔をしていたので、隅に作ることを決めた。


 部室をそのまま使うので、機器の運搬などは基本的になかった。茶道用の道具や畳もここにすであるし。


 おおよそのレイアウトを企画の用紙に書いて、顧問の先生に提出した。


 まだ時間があったので、アーケードゲームのように、タイトル画面でしばらく何も押さないと、デモプレイ画面に移動するようにプログラムを始めた。


 キー入力をフレームごとに記録するモードを作って、後はそれをゲーム中に再生するだけだ。もちろんこの時は本物のキーボードの入力は受け付けない。ゲーム開始のキーなどは受け付けるけど。偉そうに言っているけど、この辺の知識は前に貰った本に書いてあったものです。


 今回、敵の動きにランダム性は無いので、デモによって、異なるミスをしたりはしない。ただし、映像効果、例えば敵を倒した時に表示されるエフェクト、星屑のようのものが散らばったりするものはランダム性があるが、ゲームには直接影響はないので大丈夫だ。



 カタカタ……


 カタカタ……


 そして、その作業も終わった。


 試してみたら、ちゃんとデモモードで勝手にプレイヤーキャラが動いた。


 うん。感激だ。自分で動かしてないのに、動くんだよ。



 あとはレイアウトの許可が出たら、実際に机などを動かして、パソコンを再設置して、だいたい終わりだ。




 さて、今日はもう帰ろう。



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