第21話 テストプレイ
秋になった。そして、文化祭が近づいてきた。
ゲーム制作は、見た目はだいぶできてきた。タイトル画面からゲーム画面への遷移、ミスやゲームオーバー時の遷移もできている。ステージは今のところ5つほどで、ボスキャラも2体ほど出した。もうほとんどできているんじゃ……と思っていたが、ゲーム制作の経験がある知り合いに聞いてみたら、実はまだまだ完成してなくて、せいぜい3割ぐらいらしい。
なので、これからフルスピードで作業をしないといけない。
望月と隅野にはステージ後の会話データを作ってもらったので、今は追加のマップ作製をしている。
川野と音谷は、意外とマップパーツを作るのが上手いので、すべてを使うかは分からないが、いろいろ作ってもらっている。
私は敵の動きのアルゴリズムや、スコアランキング、その他細かい所を作業していた。
しかし、みんな作業しているので、お茶を淹れてくれる人もいなくなったなぁ。まあ、あれはあれで困ったりもするけど。
「ひいらぎ~」
私の名前を呼んでいる者がいる。顔を横へ向けると、隅野の顔が視界に入った。
「水中のステージなんだけど、水もマップパーツになっているよね。矩形で水色のやつ。ここにも敵を配置したいんだけど、マップパーツと同じところには配置できないよね?」
「あっ」
そういえば、作ったマップデータはそれができるようにはなってなかった。
「マップデータのフォーマットを確認するから、数日待って」
私はパソコンでマップエディタの仕様を見た。レイヤーがあればできるはず。
「うーん。どれかなぁ。どれかなぁ」
ヘッダーの仕様を見ると、いくつレイヤーが入っているかの情報が含まれていた。
よし、今までのマップデータも読み込めるようにして、レイヤーが2つの場合は、2層目は敵キャラ配置専用にして、それも読み込めるようにしよう。
カタカタ……
1時間ほどで実装が終わった。まだちゃんと動くかはわからないが。
隅野に2レイヤーのマップデータを作ってもらい、テストプレイしてもらった。
「うん。大丈夫みたい。これで水中に敵キャラも出せるよ。ありがとう!」
しかし、数日と言ったが、1時間で出来てしまった。まあ、でも予定時間を多めに取るのは良いことだよ。少ないと心の余裕がなくなる。
10日ほど経ち、ゲームがほぼ出来上がった。
そして、みんなにゲームをプレイしてもらった。
一通り遊んでみてもらってから、感想を聞いてみた。
「面白いですけど、なんか違うのですの」
「う~ん。普通かな」
「何かちょっと変えたら、もう少し面白くなりそうです」
「まあまあな出来だと思うけど、もう少し何とかしたいな」
みんな、若干不満があるようだ。
私がこのゲームのどこがいけないんだろうと考えていたところ、すっと川野が立ち上がった。
「プレイヤーの動きが遅いから、なんとなく爽快感がないのですの」
そして、隅野が立ち上がり、大きな声を出した。
「それだ! なんかキャラが重い感じがして、面白さが減っている気がする」
音谷と望月も、それに賛同したと思われる顔をした。
っと言うわけで、プレイヤーの移動を速くすることにした。これぐらいはすぐに終わる。
カタカタカタ……
カタカタカタ……ターン
「よし、完了!」
ちょっとプレイしてみよう。
私は軽くテストプレイをしてみた。
右方向のキーを押すと、スススッと軽やかに動く。ジャンプも長い距離が飛べることが出来て、気分がよい。
「これは、なかなかいいね!」
私は他の部員にもテストプレイしてもらった。
ステージ1はみんな満足してプレイしていた。
しかし、ステージ2からはちょっと顔色が変わった。
「ギリギリのタイミングで飛ばないといけない場所で飛んでみたけど、飛びすぎて次の壁に当たってしまう」
「やたら、壁に当たる気がするの」
確かにみんなのプレイを見ていると、なにかキャラクターの動きがおかしい。
「これ、マップをすべて作り直さないといけないんじゃないの」
音谷がそう言った。
「えっ?」
音谷以外の周りの者がそう声を出した。もちろん私も。
文化祭まであまり時間は無いが、私たちは急いでマップ作製の作業を開始した。




