第18話 いろいろなキャラクター
支子に動物の原画も頼んだ。アニメーションも数パターンなら、頑張ってみると言っていた。
家に着いたら、なんだか疲れたので、ぐったりと布団に横たわって、ちょっとしてからお風呂へ向かった。服を脱ぐと、すっと下へ落ちた。物理を勉強していると、こういう服の落下にも感動するね。スカートも落ちるところを見て、お風呂へ入った。
その後、ご飯を食べ、明日の準備をして眠りについた。
数日後。
学校へ着いて、席に着くと、支子が近づいてきた。
「おはよう。動物のイラスト、描いてきたよ」
「ありがとう」
ノートを渡されて、中を見てみた。
可愛らしい動物のイラストがたくさん描いてある。歩行パターンやジャンプしているイラストもある。
「すごくよくできている! これ見てドット絵を描くね!」
さて、これから授業であるが、早くドットを打ちたくて、うずうずしていた。
お昼になり、お弁当を食べ、授業が始まった。
窓を見つつ、早く終わらないかなぁなんて思い続けていた。
……
キーンコーンカーンコーン
やっと終わった。
ホームルームが終わり、部室へ向かった。
ガラ……
誰もいない。いつ来ても、私が一番だね。
パソコンを立ち上げ、ドットエディタを起動した。
ノートを本用のスタンドに立ててモニターの横に置いた。ノートとモニターを交互に見て、ドットを打っていく。
うーん。難しい。昨日、茶道関係の道具を資料を見ないでドットを打っていた、川野と音谷ってすごかったんじゃ。
いやいや。こっちは動きのある動物キャラだよ。難しいのも当然。気を取り直して、再び作業へ取り掛かった。
カチカチ……
カチカチ……
とりあえず、ウサギのドットが3パターンほどできた。3つのドット絵を指定して、アニメーションボタンを押した。
そうすると、ウサギがそれなりに動ているように見えた。
「すごいですの」
「なかなか良い動きだな」
「すごいです」
「よくできてますね」
振り返ったら、部員がみんなこちらを見ていた。壁にかかっている時計に目をやると、もう1時間は経っていたっぽい。
ずっと作業を見られていたのかな。それはそれで恥ずかしいね。
「ありがとう。まだまだたくさん、ドットを打たないとダメだけどね」
私が作業を続けようとすると、音谷がこう言った。
「息抜きにお茶はどうですか?」
えっ、いやいや。音谷の言うお茶は怖いよ。どうしよう。
まあ、断るわけにもいかないよね。怖いし。そういうわけでお茶をした。
お茶をしたって言うと、喫茶店とかに行くみたいだけど、音谷のお茶は茶道だからね。っというわけで部室の隅の畳の敷いてある場所へ移動した。
私が畳で正座をして待っていると、音谷が茶道の道具を持ってきた。私は両膝を握りこぶし一つ分ぐらいあけているかを確認した。
緊張している間に、音谷はお茶を点てていたらしく、私の前に持ってきた。私はお茶碗を右手で取り、左のほうへ置いて、「お先に」とあいさつした。その後、また右手でお茶碗を取り、「頂戴いたします」と彼女にあいさつした。
それからどうするんだったけなぁっと記憶を辿って、茶碗を2度回すことを思いだし、それを実行した。そしてお茶を飲んだ。
まあ、なんというか緊張しすぎて、味がわからなかった。その後、隣に人はいないけど、隅のほうへお茶碗を置いた。
彼女は何も言わなかった。ちゃんとできたって事だろうか。それにしても、黙っているのが逆に怖い。
しかし、全然息抜きになっていない。慣れれば息抜きになるのだろうか。そしてそうなるには何回、これをやればいいのだろうか。
さて、ドット打ちの再開である。私は再びパソコンの前へ向かった。
さっきは横への移動中のドット絵を描いたけど、次はジャンプしているウサギのドット絵だ。トップビュー、つまり真上などから見た全方向スクロールゲームだと、上へ移動しているアニメーションや、下へ移動するアニメーションが必要だけど、横スクロールアクションだと、それを描かなくていいのが嬉しいかな。
ポチポチと打っていると、横で音谷と川野がパソコンで何か作業している。また何か変なものをドット絵化しているのだろうか。とりあえず、私は自分の作業に集中した。
……
……
うん。なんとかできた。アニメーションさせても、それほど違和感もなかったし、これはオッケーだろう。
横を見ると、隣のモニターには饅頭や餅菓子などのドットが表示されていた。団子なんかもある。音谷と川野がドットを打ったのだろう。それにしても上手いなぁ。
これもゲームのアイテムにしてもいいけど、茶道に出されるようなお菓子が好きなウサギってどうだろう。ありなのかな。まあ、使う使わないはあるにしろ、たくさん素材があることは良いことだね。
そういえば、元文芸部の望月と隅野はどうしているだろうと、モニターを覗いてみた。こちらもなにやらドット絵を打っているようだった。
隅野は大きなキャラを作っていた。プレイヤーのウサギより数倍大きい。人型のキャラを作っているようで、ドットがポチポチと打たれた。
しばらく見ていると、なんとなく半裸のお兄さんっぽいのが徐々に出来上がっているようで、ちょっと嫌な予感がした。変に心臓がドキドキし、焦っていると、そのキャラは出来上がった。
「よし。若い男のキャラ、できたな」
隅野が満足そうに言った。
ああやっぱり、そういうキャラだったか。どこに使えばいいのだろう。
うーん。ボスキャラに使うしかないね。しかし、ストーリーに整合性を合わせなければいけない望月はかわいそうかも。いや、隅野もストーリー作りに参加するはずだから、そのまま隅野に任せればいいのか。
しかし、まだ1つのパターンしかない。これも他のパターンを支子に頼んでみるかな。どう返答するかは分からないけど。
いろいろ問題があるが、今日はだいぶ疲れたので、私は部室を後にした。