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第17話 キャラクターを描こう

 ガラッ


 部室のドアを開けると、誰もいなかった。


 じゃあ、ちょうどいいや。みんなのパソコンにも開発環境を入れておこう。


 本体にメディアを入れて、インストールを試みた。その間、ちょっと時間がかかるので、自分のパソコンで昨日見たお茶ゲームのことを調べた。いろいろと情報を集めていると、次のことが分かった。結構人気があること。ゲーム終了時にスコアが出るので、それをもとにした大会があること。


「なに? 大会だって?」


 思わず口から洩れた。大会なんてあることが知れたら、音谷が頑張ってしまう。しかも皆を巻き込んで。なので、黙っていようと思った。


 そうこうしているうちに、インストールが終わった。残りのパソコンもインストールを開始して、その間はまた自分のパソコンでいろいろと情報を集めてを繰り返して、そして、すべてのパソコンのインストールが終わった。


「こんにちはです」


「こんちは」


 元文芸部員がやってきた。



「こんにちはですの」


「こんにちは」


 元茶道部員がやってきた。


 開発環境は入れたが、すぐには理解できないと思うので、とりあえずいつも通りにしてもらった。



 私は昨日のプログラムに手を入れていた。


 カタカタ……


 カタカタ……


 1時間ほどが経ち、スーパーマ〇オのように、ブロックの障害物があり、その中でプレイヤーがジャンプをできるようにした。


「なかなかいいね」


自分で言うのもなんだが、左右に操作で来て、ジャンプができるだけで感動してしまう。


「よくわからいですの」


「わからない」


「なにをしているのかわからないです」


「何の画面か、よくわからないな」


 後ろから、部員全員の声がした。もちろん、私の声は後ろからしないが。


 まあ、何故そう言うのかはだいたいわかる。プレイヤーはドットだし、ブロックも白い豆腐のような矩形だ。はたから見ると何が何だかわからあにであろう。


 しかし、感動する。作成者にしかわからないであろう。この気持ちは。


 このままではあまり評価されないので、ドット絵を作るために、支子に原画を作ってもらおうと思った。


「このゲームのプレイヤー、どんなキャラクターが良いかな?」


 私はみんなに聞いてみた。



茶筅(ちゃせん)がいいのですの」


「茶碗だな」


元茶道部員が言った。うん。無理だね。聞かなかったことにしよう。


「ウサギさんがいいです」


「人型で良いんじゃないか?」


 元文芸部員が言った。こっちのほうが現実味があるね。


 ウサギに人型かぁ。仮に人型だとどんなのがいいだろう。ちょっと聞いてみた。


「人型だと、どんなキャラが良いかな?」


「若い男だな。敵も若い男にしよう。敵に触れた場合は……」


ちょっとヤバそうな感じがしたので、すかさずこう言った。


「よし。ウサギにしよう!」


 というわけでウサギに決まった。たぶん他の動物も出すだろうし、動物関連のイラストを支子に頼もう。



 カチカチ…


 カチカチ…


 ふと横を見ると、川野がパソコンに向かって、何かをしている。画面を見ると、ドットエディタが立ち上がっていた。何か描いているようだが、まだ何かよくわからない。じっと見ると、なにやら見たことがある物が描かれた。


 これ、茶碗だ。まさかゲームに使わせようと描いたのか。それにしても結構上手い。


「ドット絵、上手いですね」


 私は思わず、褒めた。


「ちょこっとなら、描けます」


「だけど、プレイヤーとかは描けないですの」


 どうしてなのかを尋ねようとしたら、川野がこう言ってきた。


「プレイヤーはいくつかのパターンを描かないといけませんの。歩きとかジャンプとか。それを破綻なく描くのは難しいですの」


 確かにそうだ。一枚は描けても、それを歩かせるには数パターンいる、歩いているように見せるのは確かに難しい。


「でも、アイテムとかなら、大丈夫ですの。使ってほしいのですの」


「えっ!」


 思わず口に出してしまった。茶碗がアイテムって、なんの効果を得られるんだ。まあ、考えればいくらでもそれっぽく辻褄は合わせられるけど。



「こっちも、できましたよ」


 声を方向を見ると、音谷がこちらを見ている。画面を見てほしそうな合図を私に送っている。そして画面を見てみると、画面に茶筅(ちゃせん)のドット絵が映っている。


「これも、ゲームに出せますよね?」


 その、音谷の言葉にちょっと私は言葉を失ったが、出さないとめんどくさそうな気がした。


「大丈夫、大丈夫。出せますよ」


 頭の整理がよくできてなかったが、私は思わず口走ってしまった。もう採用するしかないだろう。


 しかし、こんなキャラクターが出るなら、シナリオも普通のものではなくなる。元文芸部の望月と隅野も困るだろうなと思った。


 さて、ゲームの方向性を示す話も出来たし、今日は帰るかな。


 教室へ戻ると、支子が席で本を読んでいた。私を待っていてくれたのかな。



「おつかれ~」


「おつかれ」


「あの、お願いがあるんだけど」


 私と支子は一緒に校門を出た。




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