ニップレスガール
親愛なるカトラス様――。
四十代作家ってバカにされながらも、あいぽも、この春には大学生になります。
思えば、中学三年生で、なろうにデビューをして以来、清純派アイドルとして、その純潔を守ってきましたが、あいぽももう大人です。
この五分企画をきっかけに、これからは、ちょっと大人の作品にもチャレンジしようと思っています。
だから、だからまずは大好きなあなたに喜んでもらえるようにと、溢れる想いで描きました。
どうぞ、お読みになって下さい。
……な~んてネ!
おバカなあいぽ劇場はじまり、はじまり~☆〃
(≧∇≦)/キャハッぽ!
「え――っ、今夜も補講!?」
表参道女子高校の理事長室に、私の悲痛な叫び声が響いた。夜の補講とは、この表参道女子校を守るという、私に与えられた特別課題である。
実は、都内でも有数のお嬢様学校として名高いウチの学校は、いつからかマニアックな男たちの変態的な嗜好の標的となってしまい、夜中に盗撮カメラの設置や更衣室荒らしなどする者が続出しだしたのである。
そこで、困り果てた理事長は、そんな変態男たちと戦うために、秘密兵器として特殊なニップレスを開発して、それを身につけて戦ってくれる生徒を、昨年の願書受付時に特別枠として募った。
そして、その特別推薦に見事合格したのが、この私、星野ひかるだったのだ。
「で、今夜はどんな変態に狙われてるっていうの?」
私は、理事長にため息混じりに呟いた。
すると、理事長は机の上にあるパソコンのマウスを静かに動かし、私の目の前で、あるサイトをひらいて見せた。
『アイドルお嬢様』
そのように名付けられたそのサイトには、私たち表参道女子校の生徒を色んな場所で盗撮した写真や動画がところ狭しと溢れていた。
「いいかい、ひかるクン。村西ともると名乗るこのサイトの管理人は、今夜我が校に忍び込み新たに盗作カメラを設置すると、サイト内の掲示板に予告の書き込みを行っているんだ」
理事長は、そのサイトの掲示板にマウスを進めながら私に話す。
「私は、この学校を汚す、村西というこの男を絶対に許せない! だから、ひかるクン、ニップレスガールとして、今夜も変態男を倒しに行ってくれ!」
理事長は、まるで戦隊ヒーローの司令官にでもなったかのように、人差し指をまっすぐと伸ばして熱い雄叫びを上げた。
……っつうか、ニップレスガールって、なんだよそのネーミングセンス。
☆
夜の校舎の窓に、月明かりに照らされた私の姿が写る。
……何度見ても不気味な姿である。
スパイ映画が大好きな理事長は、映画に出てくる女スパイみたいに私をカッコよくコーディネイトしたつもりだろうが、そのセンスは極めてナンセンスである。
顔がばれないようにと、渡されたサングラスは何故か超大っきくてダサイし、上半身は裸でおっぱいにニップレスを着けているだけ。動きやすいようにとショートパンツを用意してくれたのはいいが、ブーツの丈が長すぎて超動きにくい。
サイハイって言うんだっけ!?
ニーハイよりもさらに長いブーツ。
ったく、どう考えてもこんな格好で夜の校舎うろうろしてたら、こっちが変態に思われるっての!
そんな風に、ひとりボヤキながら夜の校舎をとぼとぼと歩いていると、音楽室の方から微かな音がするのが聞こえてきた。
「……誰か、いるの?」
私は生唾を飲み込み、恐々と声を出してみた。
するとその時だった。
暗闇の中に、ぽつんと赤い光が現れたかと思うと、それは急に私に近づいてきて、突然男の人影が現れた。
「きゃぁああああああ!」
私の前に現れた少し小太りな男は、白いブリーフしか身にまとっておらず、テレビ局の人が使うような大きなカメラを肩にのせ、にやけた笑顔で私に近づいてくる。
「ナイスですねぇ~」
と、撮られてるの?
男の肩にあるカメラから放たれる、赤い光が私の顔に直撃する。
不気味な赤い光と、その男の姿に、私は気持ち悪くなって思わず顔を伏せてしまう。
「ん~……、イヤがり怯えるその姿、ますますナイスですねぇ~」
ちょっ、ヤメテ!
近づかないでよ、変態。
私はその男を払いのけようと、脚をばたばたと蹴り上げた時だった。
「いやゃぁあああああああ!」
なんと、私のブーツの尖ったカカトが白いブリーフに命中したかと思いきや、急にその白いブリーフは膨らみ始めて硬くなり、私の蹴りを跳ね返してきた。
「ん~、ショートパンツにブーツ。ホントにナイスですねぇ~」
ちょっと、ちょっと、はぁはぁ言って、あんたナニ顔を赤らめてんのよ!
それに何よッ、なんで股間を触りながら、こっちに近づいて来てんのよ――ッ!
やばい、星野ひかる、絶対絶命のピンチである。
もうこうなったら、こいつを倒すにはアレをやるしかない。
私は、ピースをした両手を思いっきり前突き出しあと、ニップレスの中央の突起した部分を挟んで声を上げた。
「夜の校舎に忍び込み、夜な夜な行う変態行為、村西ともる、私はあんたを絶対許さないッ! 覚悟しなさいッ!」
『ニップレスアタ――ック!!』
その掛け声とともに、私はニップレスをはずし、それを村西に投げつけた。
その瞬間、私のおっぱいには可愛いらしいピンク色をした自慢の乳首が姿を現し、村西の興奮は最高潮に達した。しかし、私が投げたニップレスが村西の体にぶつかった時、ニップレスに仕込まれていた火薬が爆発して、村西は夜の校舎に倒れこんだ。
ニップレスアタック、それは変態男を興奮させたのもつかの間、一気に地獄へと落としてしまうという、恐ろしい必殺技である。
「村西ともるッ、なんであんた盗撮とかすんのよ! いい加減にしなさいッ!」
私は倒れこむ村西の前で、腕を組み村西に怒りの声を上げる。
「ぼ、僕は……君たち女の子が憎かったんだ」
顔を上げた村西の目には何故か涙が溢れていた。
「君たち女の子はいつもそうだ。男を容姿でしか判断しない! 僕みたいに脂ぎっていて、デブな男は常に君たちに蔑まれ生きてきた。だから、僕は君たちに蔑まれる前に、逆に君たちを辱めてやったんだ。全ては……、僕を愛してくれない君たち女の子がいけないんだ」
夜の校舎の窓から差し込む月明かりは、その場で泣きじゃくる村西の涙を蒼く光らせていた。
--僕を愛してくれない君たち女の子が悪いかぁ。
だからと言って、盗撮が許される訳ではない。
だけど、もしかしたら、彼は彼なりに何かに苦しんでいたのかもしれない。
私は泣きじゃくる村西の前にしゃがみ込み、彼の涙をそっと拭ってやり、優しく微笑んだ。
「村西……、女の子ってね、ちゃんとハートで恋してるよ」
「……ハートで恋?」
「うん、ちゃんと、ちゃんとハートで恋してる。だからあんたも盗撮なんてヤメテ、いっぱいいっぱいハートを磨きなさいよッ!」
罪を憎んで人を憎まず!
私の戦いは、もしかしたら、まだ始まったばっかかもしれない。
☆Fin☆
こんにちわ☆〃
あいぽです!
『ニップレスガール』
いかがでしたでしょうか!?
いやはや、初のコメディってことで、悪ノリしすぎて、完成してみたら、なんと5000文字オーバーに(笑)
泣く泣く編集して、なんとか五分におさまりました(笑)
って事で、この作品、皆様の評判が良かったら連載スタートしようかななんても考えてます。
なにせ、ニップレスガールと戦う、個性的な男の子もまだまだいるし、ここに書ききれなかった、秘密やキャラクターも多数あるもので……(笑)
まぁ、とりあえず、弥生さん、そして参加者の皆様お疲れ様でした。
そして、五分を応援して下さっている読者の皆様ありがとうございました。
これからも宜しくお願いします!
2010.2.27
あいぽ