追われる道具
「ほい、到着!あっ、言い忘れとったけど、この時代ちいとばかし危ないから絶対はぐれたらあかんで」
「危ない?なんで?」
「そこかしこで、あの子が使われとるからや」
「あの子?」
輝界は笑って答える。
「ダイナマイトや」
「ダイナマイト⁈あの⁈」
「どの、かは知らんけど、思い浮かべとるのであっとると思うで」
そう、この時代はダイナマイトが生まれた年。
ノーベルが人々のためになるようにと必死に作った。
けれど、それがかえって戦争を悪化させるものになってしまった…
彼はそれを思い悩んだ。
だが、戦争のためだとしても使われるようになったダイナマイトは女性の姿で、喋れるようにもなっているのだ。
そんな彼女は、これ以上自分を作ってくれた科学者の心を闇に沈めたくないと、使われないように必死に逃げている。
「すまん!ちょっと匿ってくれ!」
「えっ⁈」
一人の女性が灯の後ろに隠れるようにしてしゃがんだ。
その直後に、バタバタと男達が駆けていった。
「ふぅー行ったか…」
「あの、あなたは?」
「あぁ、匿ってくれてありがとな!私は大那 舞人だ!」
「だいなまいと……もしかして、ダイナマイト⁈」
灯がそう言うと舞人は目をぱちくりさせた。
「よく分かったな〜私はノーベルに作られたダイナマイトだ。あいつが私を作ったのは人々のためだっつーのに、私を戦争の道具に使おうとすっから逃げてんだ」
「そんな事情があったのね…」
「まっ、逃げんのは別に苦じゃねえけどさ!だって悪い奴らに使われる方が嫌だし!」
そう言ってニカッと笑う舞人。
そんな舞人に灯は問う。
「舞人ちゃんの役割ってなんなの?逃げるとかしてたら、なんにもしてないことになるんじゃ?」
「役割ー?んなの考えたことはねえや。だって、私を作ってくれた奴が笑ってられるならそれでいい。そのためには、私が悪い奴らに使われねえことが一番だろ?だから私は全力で逃げて使われねえようにする。強いて言うなら、それが私の役割だ」
舞人は拳を握る。
これからも逃げることを決意するように。
自身を作ってくれた発明者のために。
「そっか。自分を作ってくれた人のため、か——
またなにか見つかった気がする!ありがとう」
「なんか分かんねえけど、よかったな?」
「うん!」
二人がニコニコと話していると、また何人かがこちらに走ってくる音がした。
「あんさん、また危ないんやないか?」
「はっ、そうだな!じゃ、私はまた逃げるぜ!じゃあな!」
舞人は走っていった。
「なにか分かりそう?」
米が灯に聞く。
「うーん、分かりそうなんだけど…あと少し?」
「ほな次行くか!」
「輝界ちゃんなんか面白がってない?」
「やってこんな一気にとぶことないんやもん」
「そうなんだ」
灯が言い終わって肩に手を乗せたら、すぐにとんだ。
次の時代でもなにかを掴むことができるのだろうか?灯が最後に見つける答えは?