プロローグ
20xx年。世界は急激に進化した。
殆どのことをロボットが行うようになったのだ。
光を灯すのも、お湯を沸かすのも、何かを温めるのも、冷たくするのも。
全て、ロボットがするようになった。
そのため、偉人たちによって作られ、皆に使われてきた機器たちはしだいに使われなくなった。
忘れられてしまったと言っても過言ではないだろう。
そんな中、一人の少女が空を見上げていた。
「はぁ…」
「灯ちゃん?どうしたの?」
「あっ、米ちゃん!ちょっとね…」
ため息をついた少女の名は、明里 灯という。
もう一人の少女の名は、炊飯 米だ。
彼女達は、かつて人々のために精一杯働いてきた機械。
その機械を作った人の想いで喋ることができている。
だが、彼女達を悩ませることが起きているのだ。
「もう私達みたいな機械は必要ないのかなーって思ってさ」
「もしかして、最近、元は機械だった子達が消えてしまっているから?」
そう、米が言った通り、彼女達の仲間は少しずつ消えてしまっている。
人々が昔作られたものを使わなくなり、最新のものばかりを使うようになったため、忘れられていってるからだ。
彼女達は、機械から生まれた。
だから、元になった機械が処分されたり、生産されなくなると、文字通り消えてしまう。
それは、人間と同じく『死』を意味する。
忘れられること、使われなくなること。それが彼女達にとって一番いけないことなのだ。
「うん。ねぇ、米ちゃん。私達もいつか消えてしまうのかな?」
「そうね。使われなくなってしまったらあるかもしれないわねぇ…」
「そっかぁ。私、嫌だなぁ。忘れられたくないよ…まだ、沢山の人を明るく照らしたいよ……」
灯は涙を流す。
彼女は電灯。電球。ずっと昔から人を照らし続けてきた。
そんな彼女でさえも、居場所がなくなってしまいそうな恐怖を感じている。
「灯ちゃん。一つ提案があるんだけども…」
米は一つの案を出そうとする。
それが、彼女にとって最適なのか。それは分からない。
だが、彼女の、彼女達のまだ消えないために必要な案なのかもしれない——