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買い食い王

作者: 雉白書屋

「おーい、トオルくーん! もー、探したよー!」


「え、あ、ごめん……その、えっーと」


「あ、僕? 僕はジュンイチ。ほら、トオルくん、今日が転校初日だから

君と家が近い僕が一緒に帰ってあげなさいって先生が言ってたじゃない」


「あ、ああ、そうだったね。ごめん」


「ううん、いいんだよ! いやー、校門に向かって歩いているところが

窓から見えて良かったっと、そんなことよりトオルくん……」


「ん、何?」


「君、お金は持っているのかな?」


「え、ま、親が非常用に持っておきなさいって少しはあるけど……え、お金取るの?」


「取らない取らない! あはははっ!」


「そ、そうだよね、はははは」


「じゃあ、行く?」


「ん? 行くって……?」


「買い食いさ」


「買い食い? 駄菓子屋とか?」


「うーん、そうとも言えないな、実は、あ! あ、あ、あれは!」


「え、何? 前を歩いているあの男子?」


「二組の買い食い師、豪傑の東山だぁ!」


「うわ、おっきな声で、え、え、何? 買い食い師?」


「はぁはぁはぁ、そう……うちの学年にはね、各クラスに買い食い師がいるんだ。

彼らは買い食い王の座を手に入れようと日々、競い合っているのさ!」


「買い食い、王? ごめん、ちょっと聞きなれない言葉が続いて

頭が追い付かない……それで、彼すごいの?」


「ふふふふふふふふ、すごいなんてもんじゃないよ。彼はスーパーの総菜パン

それも値引きシールが貼られているものを狙うのさ!」


「駄菓子じゃないんだ……。がっつり食べたいなら家に帰ったらいい気が……」


「あ、あそこにいるのは!」


「聞いちゃいないね」


「三組の買い食い師! 資産家の西野!」


「資産家? お金持ち? 大量に買うの?」


「いや、彼はカードがオマケについているウエハースを主軸にしているのさ。

小腹を満たし、その上、カードという資産も増やす。

二兎追いかけ、両方を手にした人生の勝者さ!」


「どっちかに絞ったほうが良いと思うけど……」


「……おいおいおい、ふぅー、僕は夢でも見ているのかい?」


「知らないけど、今度は何?」


「ご覧よ少年。あそこにいるのは四組の買い食い師、三つ首の南沢だあああああ!」


「うわ、びっくりした。興奮を抑えきれなかったんだね」


「彼らは三つ子特有のコンビネーションを活かし! 買った物をシェアするのさぁ!」


「別に三つ子じゃなくてもできる気が」


「あ、あ、あ、あが、あばばばばば」


「ジュンイチくん!? だ、大丈夫!? 言っちゃ悪いけど、君、だいぶおかしいよ!」


「はぁ、はぁ……HAHAHAHA! おかしくなるのも当然だよ、ボーイ」


「ボーイって……」


「あそこにいるのは我が一組の買い食い師、試しの北原さ」


「試し……? 番人的な?」


「彼はスーパーの試食コーナーを縄張りとしているのさ」


「いや、それ、買い食いなの? ん、あれ? こっちに来るみたいだけど」


「よう」


「あ、あ、あ、みなひゃん! お揃いであ、あ、すごいオーラ!

いや、すごい買い食い力だぁ……」


「僕には見えないけど……」


「君は……うちのクラスの転校生と、それにジュンイチくんだね?」


「ふえ!? ぼぼぼぼ僕の名前を知ってるの!?」


「いや、ジュンイチくん、同じクラスなんだからそれは当然じゃ……」


「いや、俺たちも知ってるぜ、なあ」


「ふぇ、ふぇえええ!? な、なんで!?」


「お前、仙人のジュンイチだろ? うちのクラスにも噂は届いているぜ」


「ふぉおおおおおおう!」

「仙人?」


「ああ、食べていると匂いを嗅ぎに来るって評判だ」


「いやー、へへへへへ光栄だなぁへへへへ」

「ジュンイチくん、君って……」


「それで、君は確かトオルくんだね?

ジュンイチくんが嗅ぎつけたとあって、君には期待しているよ」


「え」


「そうだぜ、俺らにお前の買い食い力を見せてくれよ」


「トオルくん! これはやるしかないよ!」


「いや、僕はいいよ……」


「なんでだよ! 君だって小腹くらいすいているだろう!? 怖気づいたのかい!?」


「いや……帰る前に給食室で給食の余りのパンを貰ってきたから。

ほらジャムとマーガリンもたくさん」


「お、おおおおおぉぉぉ!」



 お母さん。転校初日で不安だったけど友達ができそうだよ。

みんな、少し変わっているけど基本、良い人そうなんだ。

 ……でもね、お母さん。できたらでいいんだけどお小遣い、上げて貰えないかな?

ほら、物価も上がったしさ、小学生も辛い……うん、駄目だよね。

 うん、いいんだ。僕らには知恵と工夫があるんだから……。

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