トラックを事故らせるとどうなるか
前に勤めていた運送会社で、高速道路を走っていたら、自分の会社のトラックが路肩で大破しているのを見たことがありました。
な……、なんだあれは……。と思いながらも高速道路上で停まるわけにも行かず、仕事中でもあったので、気になりながらも自分のトラックを走らせました。
荷物を下ろし終わり、会社に電話をしました。完了報告。
もちろんついでにさっきの事故のことも聞こうと思い──
すると『帰りに事故したドライバーさんを乗せてあげて』とのこと。
そのドライバーさんが先輩のAさんだということをその電話で知りました。
事故車は既にレッカーで修理工場まで運ばれており、その修理工場までAさんを迎えに行きました。
車庫へ帰る途中、Aさんから何があったのかを詳しく聞いたところ……次のような話が聞けました。
片側二車線の高速道路。Aさんは左側を走っていたそうです。
右から追い越して行った乗用車がAさんを抜ききらないところで謎の並走を始めました。しかもだんだんとAさんのほうへ寄って来たそうです。
Aさんは危険を感じてクラクションを鳴らしました。
後から聞いた話ですが、乗用車のドライバーは運転に不慣れな若い男性だったそうで、眠気でウトウトなっていたそうです。
Aさんのクラクションでびっくりして目を覚まし、慌ててハンドルを切ったそうです。
左へ──ええ、なぜかAさんの大型トラックがいるほうへ、急ハンドルを切ったそうです。
乗用車に運転席横へ激突され、Aさんはブレーキを踏みました。しかし、一瞬にしてブレーキが壊されていたそうです。まったく制動することが出来なかった……。
シフトダウンと排気ブレーキを使い、停止しようとするもなかなかスピードが落ちません。サイドブレーキは強力すぎて車体がドリフトするかもと判断したAさん、さすがプロです。
左側は山の側面になっていて、そこにコンクリートが貼られていました。
そのコンクリートに車体をぶつけ、ガリガリと引きずり、その摩擦でなんとか大型トラックの巨体を停止させたそうです。路肩の邪魔にならないところで、本線には一切破片を撒き散らさず。
修理工場で私が車を見ると、左側が無惨に大破。積んでいた荷物はガラス瓶で、割れなかったものも含めてすべてダメになったと後で聞きました。
過失割合は10:ゼロにはならなかったと記憶しています。数字は覚えていませんが、乗用車のほうがいくらか過失が重かったぐらい。
それでもトラックの修理(新車に変わったかも)代と荷物の損害賠償を合わせて、一千万円以上を相手に請求したと聞きます。
大型トラックが積んでいる荷物はとても高額な場合があります。
荷物がダメになったというだけで軽く一千万円以上の損害賠償を請求されることぐらい、普通だと聞いています。
事故は車の衝突事故に限りません。
大型トラックにやむを得ない急ブレーキを踏ませただけで、積んでいる荷物がグチャグチャになることだってあり得ます。
大型トラックの遅い追い越しにイライラするのか、前に割り込んでわざと急ブレーキを踏むハイエースさんとかアルファードさん、ティーダさんを見たことがありますが、損害賠償請求されても知らないですよ。
自分の体験でいえば、神戸のポートアイランド内を走っていた時、右から私のトラックの前ギリギリに割り込んで来た軽自動車が、パニックブレーキ級の急ブレーキを踏んで、ハンドルと左ウィンカーを同時に操作しながらコンビニに入ってくれたことがありました。
幸い何も積んでいませんでしたが、積んでいたら荷物がグチャグチャになるにとどまらず、重たくなっているとブレーキ性能が著しく低下するので、追突していたかもしれませんよ。
大型トラックの前に割り込むのは嫌がらせや自殺行為になりがちです。
大型トラックは乗用車以上にすぐには停まれませんよ。
それゆえに車間距離を広く取って走っています。それだけの車間距離が『必要』なのです。
我先に! みたいにトラックを無理やり追い越して前に出たい気持ちはわかりますし、トラックの前が広々としてるなら何も問題はありません。
トラックの前が『車間距離』なのに、そこにジャンジャン割り込むのは、『交通を密にしてしまう行為』です。渋滞の元になりますし、事故の元にもなりかねません。
もっと交通全体のことを考えて走りましょう。
登り坂で大型車の前に割り込む乗用車さんもやたら多いです。
特に渋滞中で坂がキツかったりすると、割り込まれて停まらされた大型車は非常に迷惑します。
一度停まると坂道発進となり、下手をすれば発進時にバックしてしまうこともあり得ます。
そんなところに後ろの車がまたベタづけしていたら……
とにかく道路交通にも『3つの密を避けること』をお願いしておきます。
・近づかない
・後ろを詰まらせない
・ぶつからない