表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡界館  作者: 織優幸灔
一章
34/155

34.研修

「よし! 皆揃ったかな」

「はい質問!」

「どしたの未優」

「なんで衝羽(つくばね)がいんの?」



 未優と日蔓が治った早朝五時前、未優はウキウキ笑顔で立っている衝羽を指さした。

 日蔓は首を傾げると衝羽の肩に手を置く。



「研修生二人を頼んだよ」

「お前自分の仕事する気ないな」

「失敬な。ついて行くだけ感謝してよ」

「別に衝羽がいるなら日蔓することないだろうし……なぁトンカチ君」

「です……ね?」




 未優は頬が真っ赤に腫れた頬を押え、静璐は日蔓から一歩離れた。



「じゃあ行くよ」

「はぁい」




 西木(せいもく)課三班三人に衝羽部長と蜜列(みつら)栖樹(すのき)研修生。

 六人プラス運転手一人なので十人乗りのワゴン。


 日蔓が助手席、二列目に静璐、未優、三列目に蜜列と衝羽で後ろに栖樹。蜜列と栖樹を並ばせると喧嘩するし静璐と衝羽を入れ替えても蜜列と未優が嫌がるのでこの並び。



「今日はどこ?」

「とりあえず渋谷一件、千葉行って茨城、福島、栃木で終わりかな。一応群馬もあったけど」

「何件ぐらいだっけ? 八?」

「九だね。未優はもちそう?」

「大丈夫でしょ。ねぇトンカチ君」

「知りませんよ」


 静璐の体力は確実にもつが、未優の脚は仕事内容や相手が何体か、どういう異能を使うかにもよるのでなんとも言えない。



「そう言えば静璐、鏡瞳(キョウドウ)はどうなったの? 線蓮とずっとやってたけど」

「ある程度はコントロールできるようになりました。たまに、あられもない方にいきますけど……」

「……僕らにはやめてよ」

「それがたまにできなくなるんですって」

「怖すぎでしょ」

「使わないでよ」

「使いませんよ……」







 渋谷に着き、車では時間がかかるので歩いて向かう。

 未優は小さいのではぐれないように日蔓と手を繋ぎ、と言うか日蔓が一方的に手を掴み、他の皆ははぐれないように必死。あの二人小さいから分かりにくいんだよな。




「未優、フード被っといたら」

「見えにくい」

「また絡まれるよ」

「大丈夫でしょ」


 隣に手掴んでる男がいるわけだし。



「日蔓さん、どこの何すか?」

「店のショーウィンドウ。何人か取られてるから警察が隠してるはずだよ」

「権力こわ〜」

「大人の繋がりと言いなさい」


 皆で明らかに人が集まっている場所に向かう。



 既にブルーシートで目隠しされ、周囲には警察官がびっしり。



「うーわすごい人」

「六人だっけ? そりゃそんなんになるでしょ」

「衝羽、空いてるマネージャーに連絡よろしく」

「はいはい」


 次長(マネージャー)は戦闘の場には出ない。やるのは一つ、記憶の消去、混濁。



「中人多いのかな」

「あんま大衆の目に晒すと怒られんの僕なんだけど。もうちょっと配慮してほしいよね〜」



 日蔓は全員の社員証を預かると近寄ってきたその人にまとめて渡し、中に入った。



「ほーら多い」

「別にいいじゃん。どこ?」

「そのテープ貼ってあるとこ」



 警察官が少し集まり始め、責任者であろう警部が社員証を確認してから皆に返した。未優はテープを剥がす。


 同じ窓でもテープで反射が区切られると境界が別れることがあるのだ。そうなると探すのが面倒臭い。





「あの、日蔓さん……?」

「なにか?」

「なんです? あの子供……」

「うちの重要社員ですよ」

「開けるよ〜」



 未優の声に日蔓が返事をすると、未優はコツコツと窓を二度叩いた。窓全面にヒビが入り、破片が未優の指に集まって鏡界が開く。



「衝羽はここにいて。マネージャー来たら入ってきていいから」

「俺が部長なんだが」

「じゃあ帰れ忙しい部長サマ」



 日蔓の嫌味に衝羽は口を閉じ、四人が入ったあとに日蔓も中に入っていく。

 鏡界が閉じる前に手を伸ばす警官の首根っこを掴み、鏡界の前に立った。





「……いないなぁ」

「人はいたけどね」

「こっちにもいましたよ」


 無数のブロックが宙に浮いたような鏡界内、既に遠くに移動していた未優と静璐が若い男女を一人ずつ連れてきて、日蔓は鏡界内に鏡界魔がいないことを確認する。鏡瞳が使えるほどのオーラがない。

 いないかいないと同等の離れた場所にいるということ。



 筒のような穴があちこちに伸びているが、道がそのブロックしかない。見学に超不向き。



「んー……二人とも! とりあえず人六人探してあとは放置でいいよ!」

「了解」

「探してる先で見付けたらやった方がいいですか?」

「それはもちろん」

「分かりました」


 そう言えば二人とも息ぴったりに同じ筒に入っていき、数秒後奥から轟音が聞こえてきた。



 日蔓は蜜列と栖樹を掴むと未優が開けたままにした鏡界から二人を出す。


「なんですか日蔓さん!?」

「衝羽、上に二ランクに上がったって報告しといて。二人は危なすぎるから今回は待機。次の仕事は外であるからそっち楽しみにしといて。部長の仕事ぶりでも見学しとくんだね。栖樹は部長になりたいなら尚更」




 そう言うと中に戻り、界魔を何故かこっちに連れて来た未優と静璐を見上げる。

 既に何十発も喰らわせたのだろうがそれでも界魔はピンピンしている。



 デカイな。


「未優!」

「奥に大量の人形(ドール)があった! 腐敗臭が酷かったからたぶんだいぶん昔の! 百は越えてるよ」

「おぉ……」


 想定外の数に腹の底から絞り出したような声が出て、目のない赤紫の界魔は声を出していた未優の方に向いた。

 変な方向に曲がった手足を四本ともブロックに置き、その界魔がブロックから離れるとブロックが落ちていく。異能か。




「未優さんブロック気を付けて! 界魔が離れたら落ちます!」

「はいはーい」



 未優はブロックから飛び上がると一周して界魔の背中に足を置いた。界魔が強すぎるが故に衝撃が遅い。遅い分強くなるのだが、強い界魔はその間に仕掛けてくるんだよなぁ。



 未優は関節を無視して曲がってきた手を見下ろし、その手の表面を見て顔をひきつらせた。小さな触手みたいなダニの足みたいなのが密集した手のひら。


「きもッちわるッッッ!」



 全身に鳥肌が立ち、未優が顔をひきつらせると同時に静璐がその腕を蹴り飛ばした。ブロックに着地して向きを変えると、衝撃波と同時に未優をその場から連れ戻す。



 未優の衝撃波のせいか、全体のブロックにヒビが入って一気に落下し始めた。

 日蔓はすぐに鏡界の外に戻り、未優と静璐は界魔とともに落ちていく。二人くっ付いているし大丈夫か。



「衝羽、マネージャーは?」

「世田谷に一人いたのですぐ向かうって。もうすぐ到着するらしい」

「思ったよりヤバいから手伝って。研修二人は入ってきたら送り返すから」



 腐った死体は放置として、まだ息があるなら未優があの怪異を殺すので殺される前に外に連れていかないと。混乱に陥ったら連れ出して記憶を消すのは大変だぞ。


 と言ってもあの距離、どう飛ぶか。ブロックは全部破壊されたし。




「早く行けよ」

「道がないんだよね。十メートル飛べる? ちなみに僕はいける」

「……やってやるよ」

「落ちたら死ぬし十メートル以上あるとだけ言っておこう。じゃ早く来てね」



 窓より先の足場がないので、日蔓は窓辺にしゃがむとフレームを手で押して少し高くなっている向かい岸まで飛んだ。さすがに十メートル以上はキツく、手でギリギリ掴めた。




「……嗅覚死んでて助かったかも」


 鼻炎と副鼻腔炎で嗅覚は全くないというのに腐敗臭、生ゴミが腐ったような嫌な空気が口から入ってくる。




 丸い道に立ち、スマホのライトで照らしているといきなり後ろから何かがぶつかる音が聞こえてきた。振り返れば衝羽が死に物狂いで壁にくっついている。


 それを引き上げ、二人で奥を見た。




「吐きそう……」

「相当酷い匂いでしょ。マジで嗅覚なくてよかったー」

「鼻ないの」

「見れば分かるあるだろ。嗅覚がないの。早く行くよ」



 二人で十数分歩いて奥に進めば奥の奥に生気を吸われ感情と思考を失った人の抜け殻、人形(ドール)の山があり、下の方は腐って骨が見えているのも。教育に悪いな。今更か。



「ざっと百人弱。百もいないかな?」

「上の方は餓死寸前。早く帰ろ。医療班も来るし」



 いつの間にかハンカチで口と鼻を押さえていた衝羽は人の山を登り、一番上から四人持って降りてきた。


「それ向こう飛べんの?」

「……未優さんヘェルプ!」

「未優なら行けるか……」


 でも抱えれないよな。



 とりあえず脈のある人だけ下におろし、あとは死んでいるので放置。脈があったのは三十人ちょっと。かなりの頻度で連れ込んでいたな。



「みゆ〜!」






 上から日蔓の声が反響し、気絶していた目をハッと覚ました。上に静璐が乗っかっていて、たぶん上から降ってきたブロックは全て静璐が防いでくれたのだろう。未優に外傷はない。


「静璐、静璐!」



 下から這い出て背を譲れば、手のひらに血が滴らんばかりについた。わぉ。


 でも服をめくってウェア越しに背中を見てみれば綺麗に背骨と肩甲骨を避けて一箇所怪我しているだけで、既に血も止まっていた。未優の手についたのは服に染みた血液。




 かなり暗いが視界に問題のない程度。大丈夫、これぐらいなら普段真っ暗な部屋でモニターを見る未優は慣れている。



 界魔も未優の衝撃波で顔面が凹んで気絶しているし、頭を潰せばだいたいの生物死ぬので頭を潰して早く上に戻ろう。



 今度は加減して、腰ほどの高さにある界魔の頭に登った未優は二度踏んで界魔の頭を潰した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ