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【3/22~ コミカライズ連載開始!】私、平穏な生活を望んでおりますから!!  作者: みなと
第三章 からくりのお披露目

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未来のお義姉さまとの遭遇

「……そう、不思議なお方なのね」

「驚かないのかい?」

「何となく、色々な予感はあったから。あぁでも……」


 ぱちん、と扇を閉じて通信用の魔道具を指先でつつ、と撫でる。


「厄介なのは、貴方が可愛がっていらっしゃる妹君ではなく……もう一人の妹君、でしたっけ」


 表情は通話の主には見えないままだが、にこりと微笑む。


「見た目こそ愛らしいけれど、厄介なことこの上ない……無自覚なお方に関しては、色々と対策をいたしましょう」

「ありがとう、君が婚約者で良かったよ。それから、君もこちらに顔を出すんだよね?」

「ええ勿論、わたくしの愛しいディル様にもお会いしたく存じますもの」


 和やかな会話ではあるものの、彼女の目の奥は一切笑っていなかった。


「ではディル様、また明後日に。妹君にはどうぞよろしくお伝えくださいませ」

「分かった。気を付けて」

「まぁ、少し馬車で移動するだけなのだから問題ございませんわ」


 それでは、と伝えてから通信を切った。

 ぷつん、という音が聞こえたのを合図に、もう一度扇をぱらりと広げてひらりと扇ぐ。


「……何だかよろしくないものが絡みついているご令嬢がいたけれど、そう……あれが、わたくしのディル様の妹君……」


 呟いた後、すっとメイドがやってきて頭を深く下げる。


「お嬢様、手土産にこちらをご用意させて頂きました」

「ありがとう」


 差し出されているのは、最近有名になりつつある砂糖菓子。

 フルーツをコーティングしていて、見た目も華やかで味も良い。ただ甘いだけのものではなく、飴の薄さも丁度よく、歯ごたえも味も、色々と楽しめる品物。

 売り切れが続いているから買えるかどうか、というところではあったが、メイドが頑張ってくれたらしい。


 彼女――宰相の娘であるリリーナ・フォン・ガレスティルム侯爵令嬢は、目の奥が一切笑っていない状態で、口元だけに笑みを浮かべた。


「さぁ、悪い子は……だーれだ……」


 リリーナにとって大切なのは、ディル。そのディルの負担になっているらしい妹が()()()なのか、ということ。

 ルミナスとマリアのことは聞いている。

 だがしかし、名前は聞いていない。個体を表すものに興味があるわけではないし、名前を聞いたところでどちらがどちら、ということをリリーナは持っているスキル……もとい特殊能力故に、とても忘れやすいのだ。

 だから、名前は聞かずに、どちらがどちらなのかを、会って判断する。

 決してディルのことを疑っているわけではないが、念には念を、というやつだ。


「手土産も用意したし……でも、ローズベリー家……だなんて」


 名家なのに、一体何が起こっているのかしらね、と呟いてからリリーナは学校の準備をする。

 リリーナもガレスティルム侯爵令嬢という立場があるものの、リリーナ自身は四女のために家を継ぐ、ということはない。既に兄が爵位を継承している。


「どんな悪い子なんでしょうねぇ……」


 また一人で呟いて、リリーナはもそもそとベッドに入った。就寝前のディルとの通話は、最早日常の一部。

 ああそうだ、久しぶりに会えるんだ、とまどろみながら微笑んだリリーナは、自然と眠りに落ちていったのだった。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「緊張する……」


 がたがたと震えるルミナス、平然としているディル、何で私らまでいるんでしょうねぇとぼやいているアリアと、ルミナスをどうにか落ち着かせようといつも通りのアリューズ。

 そんな面々を微笑ましく見ている祖父母と両親。


「お、お義姉様になる人……なんですものね!」

「落ち着きなさいルミナス」

「だだだ、だって」

「ガレスティルム侯爵家令嬢、という肩書はあれど、とても優しい子だから大丈夫だよ」


 それはアンタが婚約者だからじゃないんだろうか、と思わずジト目になってしまうルミナスだったが、さすがの兄。

 心を見透かしているかのように、遠慮なくルミナスの脳天にチョップを落とした。


「んぎゃ!」

「はしたない」

「……すみません……」


 うぐぐ、と頭をおさえているルミナスと、そこをよしよしと撫でてやっているアリューズ。

 とても平和なシーンだが、ルミナスはこの平穏が崩れてしまうことを何より恐れている。このまま何事もなく人生を謳歌したいんだ!と心の中でガッツポーズをしながらも、ガラガラ、と馬車の音が近付いてくると、ぴっと背筋を伸ばした。


「ああ、来たみたいだ。アリア嬢は……そうだな、()()()に接するみたいに挨拶をすれば問題ないよ」

「……は、はい」


 ルミナスの緊張につられてしまったのか、アリアの表情も硬くなってしまっていたが、ディルのその一言ですっと彼女は背筋を伸ばした。

 いくら騒いでいても、大商会の娘。

 腹を括る、あるいは『お客様』の前で失礼などできない、してはいけない、と両親に叩き込まれているから、スイッチを切り替えればどうということはない。


 会話の中で、ディルはそれをきちんと見抜いていたのだ。


「俺が最初はお出迎えするから、大丈夫だよ。挨拶はきちんとね」

「……はい」


 頷いていると、一台の大きな馬車がローズベリー家の正門前で止まった。

 御者に手を借りて、一人の少女が降りてくる。


 正門がぎぎぎ、と開かれて、ディルが小走りで駆け寄ってリリーナにすっと手を出した。


「リリ、ありがとう」

「こちらこそ、ディル様。お久しぶりですわ。……ご実家にいきなりお帰りになってしまったのだもの。少し……寂しかったわ」


 会話をしている二人を見ていると、とても微笑ましい。

 侯爵家令嬢だからか、所作は大変美しいし、何というかめちゃくちゃお似合いな二人だな、とルミナスが見惚れる。

 美男美女だ……と感動していると、不意にリリーナと視線がばっちりと合ってしまった。


「あ……」


 しまった、一瞬硬直してしまった。とても失礼なことを、とルミナスが思っていると段々リリーナの顔が険しくなってくる。


「……え」


 そうしていたかと思いきや、ディルの手を離してずんずんと歩いてくるではないか。


「え、え、えええええ?」

「貴女!」

「は、はいいいい!!」


 がし、といきなりリリーナに肩を掴まれたルミナスは、思わず大きな声を出してしまった。


「……っ、マナーが悪く大変申し訳ございま……」

「貴女、何を巻き付けていらっしゃるの!」

「…………?」


 何を、というか別に何も巻き付けてなどいない。


「あ、の」

「……何よ、これ……」


 ぎりぎりとリリーナの手の力が強くなっていき、指先がぐぐ、とルミナスの腕に食い込んできてしまう。


「い、いたい……」

「何をどうしたら……こんなことに……」


 みるみるうちに真っ青になったリリーナの元に、ディルも駆けつけた。


「リリ、一体……」

「ディル様、貴方が厄介だと……手を焼いているのはこちらの妹君ではないわね!? もう一人の方ね!?」


 叫ぶように言われた内容に、ディルも顔が強張った。


「お兄さま、マリアのことを……」

「教えていない」

「……え」

「俺は、妹が二人いて、一人が困ったものだ……としか言っていない。一人はここにいる、とは話したけれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「!!」


 何で、と呆然としているアリアの声が、やたらと大きく聞こえた。


「――失礼いたしました。改めましてわたくし……リリーナ・フォン・ガレスティルムと申します。今はほぼなき、『魔法使い』と呼ばれる特殊な存在……と、申しておきましょう」


 更に投げ込まれた爆弾に、一同目を見開いた。


 もういないはずの、『魔法使い』。

 それが、今こうして目の前に立っていて、しかもルミナスの兄であるディルの婚約者、だというのだ。

 一体何がどうなって、こうなっているのだろうか、とルミナスはアリューズと顔を見合わせることしかできなかったのだった――。

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― 新着の感想 ―
投稿感謝です^^ 最新話を拝読して「面白い作品なのになぜか微妙に記憶が薄いような?」と最初から読み返し、「なんでこんなに面白いのに、面白さは記憶通りなのに、ストーリーの記憶がおぼろなのかな?」と更新…
更新、ありがとうございます! 楽しみに待ってました! 新たな登場人物&理解者が増えてこれからに展開がますます楽しみです^_^
よかった、ディルが手を焼いてるのがルミナスじゃないって理解してもらえて。 けど、良くないものが絡みついてるのがルミナスなのは看過できない。 毒家族と手を切っただけじゃ足りないのかな? 義姉上が助けにな…
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