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【コミカライズ予定】私、平穏な生活を望んでおりますから!!  作者: みなと
第二章 二つ目ももちろん回避します

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餌を撒いて見事に食いついた

 ミーシャが国王と対峙している少し前のことである。


 レノオーラは慣れた足取りで王宮の図書館へとやって来ていた。

 入れる人が限られているこの図書館は、一般的な図書館では置いていないような本が多数置かれている。その中でのお目当ては、かつてこの世界にあったとされている『魔法』についての本。


 使えるものは限りなく少なく、魔法が使えると判明すればあれよあれよという間に国からの保護を受けることになる。

 保護されれば、その後、最悪死ぬまで保護施設からは出られないのだが、家族や己の一生涯の生活は保障される。

 その人を国に『売る』ような取引でもあるが、失われたものを取り戻したい研究者たちは必死だった。


「とはいえ、魔法の使える人なんてそうそう見つかるものでもないですし……見つかったとしても国にとっては研究対象だからこそ、即保護……ですものね」


 手にした本を捲りながら、レノオーラは小声でぼやく。

 かつてこの世界にも多数存在したと言われている魔法の使い手がほぼいなくなった理由は単純明快、戦争である。

 普通の力ではないそれを忌み嫌うものも多く、結果として根こそぎ魔法の使い手は殺されまくった。魔道具の核となっている魔石に関して、かつて世界に魔法があった証として空気に溶け込んでいる魔力が長い時間をかけて堆積し、それが特殊な石となって核に使われている。


 起動するためには魔力が必要ではないのか、と魔道具が出始めた頃に騒がれたものだが、発動するための術式を組み込んであること。

 また更に研究を重ねていくことで判明したことではあるが、魔法を使える人と使えない人の決定的な差と言えば、体内の魔力量の差にある。

 魔法を使うほどの魔力でなくとも、そもそも魔力を人は有している、という発表に沸き立ったものだが魔法が使えなくとも魔道具が使えるなら、それで生活が便利になるなら問題ない、と考える人が圧倒的多数だったことに加え、仮に魔法を使えたとしても国にあっという間に保護されてしまい家族が離される結果となったところで、生活の保障が一生涯、という特典があれば何かをしようと考える人もいない。


「……まぁ、そうよね」


 本を読みつつ、今まで意識的に考えたことではなかったが、改めて考えるとかつて起こった戦争がなければ、今はもっと違った世界になっていたのかもしれない。

 魔道具と魔法が共存する世界で、もしも……魔法の力を戦争に使わないような平和な世界があれば……。そこまで考えて、レノオーラはふるふると首を振った。


「幸いなのは、魔石に含まれる魔力量がごく微量で、兵器使用しようとしてもできない、というところなのかしら」


 次に手に取ったのは、魔道具の歴史について。

 ミーシャもそうだが、魔道具を一番最初に作った人はこれまでの魔法についての仕組みや魔石が一体何なのかを研究することから始まっている。

 それらを更に解析・研究を重ねてここまで実用化するに至っている。


 魔石の起動を簡素に、そしてスムーズにできるような術式陣を確立したミーシャが重宝されているのは、こういったことがあったからこそ。


 魔力が高い人であれば、魔石を握っただけで込められた力を発動することが出来るのだが、一般的な人はそこまでではない。

 起動のためのスイッチを押し、そこに体内にあるほんの少しの魔力を流すことで魔道具として発動することが出来る。

 例えば、料理をするために火を起こすため、かまどにセットされている魔石を起動させる。更に、入浴するために浴槽に入れた水を温めたり、と。用途は多岐にわたっている。


「……ここまでは学院でも勉強することだわ。基礎的な知識に関してはヴィアトール学院のみならず、他でも教える内容。そうではなくて、もっと原初の……」


「まぁ、レノオーラ夫人ではございませんか!」


「え……?」


 本棚の上の方にある書物を手に取ろうと、レノオーラが踏み台を使っていざ、と手を伸ばした時のことだった。


「(……あら、ちょうどよくかかったわ)」


 お目当ての人物が今まさにやって来てくれた。

 わざわざ人目に付くようにして図書室の中を移動したことと、ここに来るまでに顔を知っている知り合いという知り合い、会えばにこやかに話しかけて挨拶もしておいたことも良かったらしい。


「まぁ、王妃様。わたくしのようなものにまでお声がけいただきまして、ありがとう存じます」

「何を仰っているのかしら。我が国の魔道具事業において、前ローズベリー伯爵夫人のように活躍されている貴女を、『わたくしのようなもの』だなんて」


 ほほほ、と優美に笑っているが、この王妃がミーシャのファンだということはローズベリー家の人間なら知っている。

 あまりのファンっぷりに、王太子の教育係、もしくは魔道具に関して顧問になってもらいたい、とまで熱烈アプローチを仕掛けてきていたとかなんとか。

 それも、今回の王太子のやらかしで縁切り直前なのだが、王妃は知る由もない。


「今日は何か探し物かしら? ああ、もしかして何か新作を!?」

「ええと、少し資料を探しておりまして……。それから」


 一呼吸おいて、レノオーラはにっこりと微笑んだ。


「お義母様が、国王陛下と重要なお話をされておりまして」

「まぁ……!」


 きっと、これで確実に釣れた。

 王妃の目はキラキラと輝き、期待に満ちてきている。


『ほんの少しの種まきで良い、それで釣れるから』


 ミーシャの言ったとおりだった。

 ここに来ています、と少しずつ情報をまき散らせば、散歩と称して王妃はここにやってくることも予想できていたこと。

 だから、後は目的の場所に連れていくだけでいい。


「わたくし、自分の調べごとと併せてお義母様をお待ちしているところでしたの」

「そうだったの……! では、一緒に参りましょうか!」

「えっ……そ、そのような、お邪魔などできるわけ」

「良いのよ! さぁ、参りましょう!」


 ね、と少女のように目を輝かせる王妃を見ているレノオーラの目は、冷たい。

 イシュタリアを厳しく躾け直したのかもしれないが、それまでのやらかしがどうしようもないレベルなのだから、被害を受けた側の親からすれば今更何をしているのだ、と責め立ててやりたかった。できなかったのは、相手が王家だから。

 謝罪文が届いたからそれでいい、とは思っていた。

 だが、我が子を大切に想っているのは国王夫妻だけではない。


 ようやく笑えるようになって、何かに怯えているあの子を、守ると決めたのだから。


 親として、血は繋がっていないのかもしれないけれど、血の繋がりだけが親子という証明ではないと思っているから、こうして動いている。

 やっと、何かに怯える我が子を守れるようにまでなったのだ。


 あの子の未来を、何としてでも、今回は掴んでみせると決めたのだから。


「では……お言葉に甘えさせていただいても、よろしいでしょうか……?」

「勿論よ! そうだ、お話が終わったらお茶会をしましょうか!」

「ええ、王妃様がお望みになるのであれば」


 後悔しろ、とレノオーラの目が一瞬だけ剣呑な光を宿したことに、誰も気付かない。

 優しく聡明なローズベリー伯爵夫人として振る舞ってきたのだから、これくらいの演技なんて造作もない。全ては、ルミナスを守るために。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「お、王妃! 何故ここに!」

「何故、って……ミーシャ様がこちらにお伺いしていると聞いたからですわ」


 王妃が体をずらし、レノオーラの姿が見えた。

 ミーシャはにっこりと微笑んで、手招きをする。


「いらっしゃいませ。これで当事者が揃ったわね」

「え……?」


 当事者とは、一体何のことなのだろうか。

 王妃は訳が分からないという顔で立ち尽くしている。


 レノオーラにうまいこと誘導され、ここまでやってきただなんて気付かないまま。

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― 新着の感想 ―
[一言] 血の繋がりなんて関係ないですね。 こちらの義親はルミナスの為に王族にまで闘いを挑んで、行動しています。実親はルミナスにした行動は我慢をさせる事だけ。反省しているようで、何ら変わらずお兄さん…
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