大人の対応
「台風、上陸よ」
そう言って、岬は最後の一手を置くとパタパタと一度に10枚めくり上げた。目の前の少年の目から大粒の涙が落ちるのが見えた。”ふっ~”岬は少年の頭を撫でながら言った。
「32対32ね、有利な後手をやったお姉ちゃんの負けかな」
少年は袖で涙を拭きながら言った。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
岬もそれに答える様に言った。
まわりで見ていた小学生達の中に拍手をする者もいた。
「さてと俺達も教室に戻らないと」
「みんな、午後のテストも頑張って下さい。うっかりミスにも気をつけてね」
と岬のその言葉に、小学生達は大きな声で”はい”と答えた。
ガラガラと給食室に向かう中、高志が台車を押しながら言った。
「岬、あの子は強かったのか?」
「めちゃめちゃ強かったよ、一手でも間違えたらボロボロにされてたもの」
「へーそんなにか?でもわぞと引き分けにしたんだろ?」
「全然よあれで精いっぱいだったのよ」
「オセロって後攻の方が有利なのか?」
絶対的岬が、負けなかったにせよ引き分けた事に高志は納得できず、質問を続けた。どこか大人の対応と言うか、手心を加えた様な台詞を期待していた。
「そんな事はないよ、五分五分よ」
と高志が何か言おうとした時、
「お姉ちゃんまた僕とオセロしようね」
と少年が教室から出て手を振っていた。
「今度は負けないわよ」
岬も手を振って答えた。
その少年こそ、岬、高志、未来のみゆきに大きく関わっていく事をまだその時誰も気づいていなかった。
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