赫奕 Ⅲ
「……おーい…おい!!」
思うようにグリップがいかず、パニックになる俺を元の世界へと引き戻してくれたのは相手チームの西園寺だった。
なんとしても投げようと無理をする俺の腕を掴んで引き戻す。
今まで見たことのない複雑な表情をしていた。あれだけ女子のファンたちに笑顔を振りまいてきた彼が見せる表情に思考が完全に停止する。
「この決勝の大舞台でそんな闘い方を見せていいのか?見る者の気持ちも考えるんだ…編入試験の腰の重さはどこに行ったんだ!?」
俺にしか分からないような声で呟く。
「君みたいな上位クラス所属の人間が情けない姿をみせるのはどうかと思うが。」
西園寺は煽る。その言葉の刺々しさにさすがのおれもすこしむっとする。
そして先ほどの編入試験のことを持ち出されたことを思い出してピンとくる。
「編入試験のこと何か根に持ってる…??」
「…!!…そんなことはいい!魅せてこそのトッププレーヤーだ。こんなところで無様な負け方を晒すようならクラスを入れ替わってもらうぞ。」
それはなんだか困る…気がする。仲の良い人も多いし。
一瞬だがダーツの試合であることを忘れて思考をリフレッシュできた。それが俺の気持ちを落ち着かせるトリガーにもなった。
「…これで昨日の件の借りは返したぞ。」
『警告です。次に相手チームのプレーの妨害となる行為を行った場合は退場とします。』
審判からの注意に西園寺は素直に謝罪する。
普通で考えればあり得ない行為だ。チームメイトならまだしも対戦相手のチームのプレーヤーがわざわざこうして話しかけるというのは外から見たら妨害行為以外に考えられない。
しかし今回はかなり特例としてルールは緩く設定されていた。新入生だからこそのルールの穴をうまくついた形だ。
もしかしたら西園寺はあんな風体でも実はめちゃくちゃ頭が回る奴なのでは…?
『西園寺選手!急に試合を止めて八神選手に話しかけていましたが…何を話していたのでしょうか…』
実況人含め会場がざわつく。会場は先ほどの応援よりも、ただでさえLEGを取られているのになぜ相手に塩を送るようなことをするのか、という心配の声が上がっているようだ。
俺には色々と考えすぎてしまう癖がある。それがいつもならば…キャパオーバーすることはないが、何せこの決勝の舞台ともなれば話は違ってくる。
ここで勝てるか勝てないかで今後の学園生活が大きく変わる。具体的な内容は明言はしていないものの、学園長からそれを示唆するような言葉が発せられていたことを俺はよく覚えていた。
しかしこれは敵ながら西園寺に助けられた。
正々堂々と勝負し、勝ちたいという気持ちがひしひしと伝わってきた。
裏表のない性格だからこその、失格スレスレの行為。
敵だからと見捨てることもできたはずだがそれを見過ごさないというのが…男らしい。そういう人の方が女子にモテるのかなぁ……
…ピュン『SINGLE 12』
…ピュン『SINGLE 12』
…ピュピュピュン『TRIPLE 12』
今やるべきことを俺はやるしかないんだ。
そう心に喝を入れて切り替える。
―12― 18 2
10 (13) 7
17 BULL 9
(B)西園寺 昴 (A)八神 翔
(B)猿飛 冴助 0 (A)御影 透 12
(D)青野 未来 (C)光倉 虹渡
そういえば模擬戦でもこんなことがあったか…本当に俺は周りに助けられてばかりだ。
そうこうしているうちに全てのエリアが埋まった。しかし3エリアを連続させることができなかったため勝負は加点合戦に持ち込まれた。
次回以降も決勝戦の模様をお楽しみください!
ここ最近テストに向けた勉強の影響でやや短くなっていますがご了承ください…夏休みにはしっかりとした物を書きたいと思いますのでそれまでどうかお待ちください…………
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良い一週間を!!




