同盟 Ⅳ
透宅に移動しまして続きです。
俺は透、虹渡とともにダーツバーへ来ていた。
ダーツバー&カフェ『SPIRITS』。
「……………ただいま。」
「おー。おかえり。今日は虹渡くんも一緒かい?」
「マスター!遊びに来たよー!!」
店内に入ってみるとお酒や食事が楽しめるスペースと、たくさん並んだダーツ台があった。広い。うちの学園のダーツバーと同じくらい環境がいい。
「……………あとこちらが八神翔君。高等部で編入してきて、今は僕のクラスメイト。同じAクラスだから実力は本物だったよ。」
「透にもう友達ができるなんて…」
あ、マスターがなんか感動してる。
「自己紹介がまだだったね。私は御影 明。透の父で、このバーのマスターをしている。透がいつも世話になってます。」
「八神 翔です。よろしくお願いします。こちらこそお世話になっております。」
かなり人当たりがいい人みたいだ。
「透!早速で悪いがこっち手伝ってくれ!」
「……………了解。」
透は親父さんの手伝いをしに行った。
「じゃあ俺たちはあっちでダーツ投げようぜー!」
「そうしようか。」
俺と虹渡はダーツを投げにダーツ台へ。
「なんのゲームにする?」
「STANDARD CRICKETかな!ボク01よりもこっちの方が好きなんだよねー!」
「俺苦手だよぉ〜…」
そう言いつつ俺は練習スローを開始する。いつも通り3本のダーツを投げ、虹渡に場所を渡す。
虹渡を見てみると、背がやや低いためBULLもやや見上げる形で投げることになるらしい。そして―――
…タンッタンッタンッ
透に比べるとやや投げるテンポが早い。それなのにあまりブレがない。投げるテンポが早い、ということはすなわち狙えるタイミングが短くなる、ということなので、必然的に精度は落ちるはずだ。しかし虹渡の場合はそのブレがかなり少ない。これが彼の中での自分のリズムなのだろう。
俺がこのリズムで投げたら恐らく3本に一本BULLに入れるのも厳しいかもしれない。
「じゃあやろっか!」
虹渡が先攻でゲームスタート。
STANDARD CRICKETとは、15〜20、そしてBULLにヒットして得点を競うゲームだ。これらのことをTARGET NUMBER、又はCRICKET NUMBERと言う。これらTARGET NUMBERを3MARKすると自分の陣地にでき、3MARKした箇所をヒットすると得点が加算される。プレイヤー全員がそのNUMBERを3MARKするとそのNUMBERは無効になり、以降ヒットしても得点は加算されない。自分の陣地にすることをOPENと言い、NUMBERを無効にすることをCLOSE、又はカットと言う。
『STANDARD CRICKET GAME ON !』
『ROUND 1』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…ピー『SINGLE 20』
…シュッ『TRIPLE 5』
※ 20
19
18
17
16
15
BULL
光倉 虹渡 20 八神 翔 0
虹渡の陣地になった20に、1MARK分得点が入っている。OPENだけでは得点は取れない。その上で加点することが必要で、得点が多いほうが勝者になる。常に相手より得点が多い状態を保つのが理想的だ。
次は俺のスローだ。
…ピー『SINGLE 19』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
『/ ※ ※』
※ 20
19 ※
18
17
16
15
BULL
光倉 虹渡 20 八神 翔 76
1ROUNDで5MARK以上入れるとAWARDが出る。各ダーツに対応したMARK数が表示される。
よし。普通このゲームでは1MARKあたり加点できる点の大きい20から狙う。しかし既に20は虹渡の陣地なので、これから20に入れてもCLOSEするだけで加点はできない。その為次に大きい数字の19を狙って、加点した。
ここまでうまく入ることはあまりないが、チームメイトともあってやはり気持ちが高ぶっている。
楽しい。
そしてお互い得点を重ねながら、20と19の打ち合いが続き―――
『ROUND 5』
次は俺のスロー。俺の得点をオーバーできないままスローを終えた虹渡。
「ううぅ…」
さっきの勢いが嘘みたいだ。そしてさっきまで元気に立っていた寝癖(?)がシュンと垂れ下がっている。おそらく虹渡の調子や感情のバロメーターになっているのだろう。
※ 20
19 ※
18
17
16
15
BULL
光倉 虹渡 160 八神 翔 171
俺が狙うのはこれ以上虹渡に得点させないことだ。そのため―――
…ピー『SINGLE 20』
…ピー『SINGLE 20』
…ピー『SINGLE 20』
「あ゛!!」
「よしっ!」
CLOSEでガッツポーズの俺と対照的に涙目になる虹渡。なんだかその泣き出しそうな顔が捨てられた子犬みたいだ。そんな顔を見ると罪悪感を感じるのだが…
お互い18〜16のOPENと点数オーバーとカットを繰り返し、迎えたROUND10。
『ROUND 11』
―※―20―※―
19 ※
―※―18―※―
X 17 ※
―※―16―※―
15
BULL
光倉 虹渡 278 八神 翔 281
大接戦だ。20、18、16はCLOSEしている。正直なところ、俺は本当は19や17を利用してもっと得点差を付け、虹渡が簡単に得点をオーバーできないようにプレーすることもできる。しかしせっかくなので攻めてみようと思い、得点をオーバーしている間はたとえその差が小さくてもとにかくカットする方針にしている。
「むうううこうなったら…!」
「?」
どうしたのだろう。
虹渡は目を瞑り、そして深呼吸をして再びボードに向き直る。
「これがボクの必殺奥義!レインボーショットー!!!」
「!!?」
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
『THREE IN A BED』
「よっしゃぁぁぁ!!!」
「えぇ…」
ネーミングセンスが欠片も感じられない名前で放たれたダーツは吸い込まれるように全てTRIPLE 15に。気がつくとさっきまでしゅんと萎れていた寝癖が戻っている。調子が復活したみたいだ。
THREE IN A BEDは、同じNUMBERのDOUBLE或いはTRIPLEに、3本のダーツ全てを入れるという高難度の技。同じNUMBERでもDOUBLEならDOUBLEに3本、TRIPLEならTRIPLEに3本入れないとこのアワードは出てこない。
ここからは俺もミスが許されない。
追い込んでいたはずの俺が急に立場が逆転した瞬間だった。
いかがでしたでしょうか。次回は透のお父さんのある事実が明かされます!
コメント、ブックマークなど、よろしくお願いします。それではまた次回。




