太陰 Ⅴ (愛良side)
絶体絶命の愛良。続きです。
「いよいよ追い込まれたわね…」
予想通り、と言えば予想通りだ。桜小路さんが出る種目出る種目で男子のCクラスレベル、下手すればBクラスレベルにバチバチ入れてくる。ここまで上手いと正直私の理解の範疇を超えてしまう。本当にどうやって入れているのだろうか…
しかも弱点らしい弱点が見つからないのもまた苦しいところでもある。
「でもまあやってみるしかないわね…」
「………愛姉ならできる。」
「相手みんな強ぇけどなんとかなるっしょ!ここまで勝ち上がってこれたんだしその勢いで!」
「緊張しますが…がんばります。」
次は5LEG目、TEAM CRICKET。この前のDOUBLESは編入生の規定がなかったにもかかわらず相手は羽海野さんが登場し、見事に勝利を奪って行った。ここで勝てなかったのが痛すぎる。
しかもさらに前のTIC TAC TOEというビンゴゲームもかなり難しかった。これも経験の差が出てしまった。初手15のTRIPLEを2本入れられ陣地を奪われ、ほぼ防戦一方で押し切られてしまった。真ん中を取りきれなかったのが痛い。こればっかりは運で、真ん中が舞の苦手な青いNUMBERだったこともあって、厳しかった。
圧倒的な実力差に加えて、ルールすらわからないものが来て完全に流れを持っていかれた。そして次のLEGも作戦がなんとなくしか立たないものが控えている。
全てが手探り。何も見えない暗闇の中をただひたすらに光を求めて徘徊しているような心持ちだ。
「とにかく私たちにも勝機はある…と思っているわ。だからとにかく得意な数字から一気に攻め込むわよ。」
「できる限りついていきます!」
泰乃と軽く言葉を交わして次の準備をする。幸い負けチームが先攻というルールが活き、先ほどブレイクされたものの、ある程度巻き返すチャンスが与えられていた。
『SINGLES TEAM CRICKET GAME ON !』
『ROUND 1』
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
…ピー『SINGLE 17』
…ピーピーピー『TRIPLE 17』
『 ※ / X 』
…ピーピーピー『TRIPLE 20』
…ピーピーピー『TRIPLE 18』
…シュッ『TRIPLE 3』
『 ※ ※ ― 』
『両チームいい滑り出しを見せました!次の編入生2人はどうなるでしょうか?』
『羽海野選手はこの桜小路選手と組むと高確率でSTATSが上がっているわ。対する花巻選手はプレッシャーをあまり感じさせないプレーをしているように見える…成績も新人のプレイヤーの中ではかなり安定してると言っていいんじゃないかしら?』
『神楽坂さんから見てこの2人はいかがですか?』
『2人ともまだ腕を頑張って振っている感じね。手の出す位置がまだまだブレているからまだまだ伸び代がありそうな感じ。』
『っとぉ!2人ともエリアをオープンできず!』
純麗が19を2本入れるも最後の1本を僅かに外す。対する20を開けに行った羽海野さんは1MARK止まり。私と桜小路さんは共に互いにセカンドのプレーヤーがNUMBERを開けるのを待つ。
試合はお互いに加点できないままにしばらく進んだ。
『ROUND 7』
…ピー『SINGLE 20』
…ピーピーピー『TRIPLE 15』
…シュッ『SINGLE 13』
…ピー『SINGLE 15』
…ピーピー『DOUBLE 15』
…シュッ『TRIPLE 8』
桜小路さんは失敗しても顔色一つ変えない。お互いにエリアを保持、ここから互いに加点合戦となった。
※ 20 ※ ※
※ ※ 19 ※ /
18 ※ ※
※ 17 ※
※ X 16
※ 15 ※
BULL
(A)星宮愛 (H)花巻 (A)桜小路 (F)羽海野
38 20
『羽海野選手の開けた20がかなり活きていますね!』
『今のところは後攻がいい攻めをしてるけれど…花巻さんの安定感に期待ね。ほとんど同じMARKを入れ続けられることも一つの才能。どう攻めるか見ものね!』
解説人も興奮している様子。私としては攻めるのもいいけれど出来る限り純麗に負担をかけたくない。
しかもいつも通りの成績で打っているのに桜小路さんがエリアを開けようとプレッシャーをかけてきている。お互いにエリアを5つ持ち合う展開。
その後もなんとか食らいつくがどうにも桜小路さんの壁が崩せない。でも純麗のおかげで得意な数字を失わないままゲームは進められた。しかし
『FINAL ROUND』
「あ…」
桜小路さんが呟いたのを私は見逃さなかった。
このゲームのROUND数は15で設定されている。このROUNDを終えるとその瞬間、点数が高かった方が勝利となる。
桜小路さんが一瞬声を漏らしたのはおそらく点差を見ていなかったことが原因。私たちはROUND12まででエリアを失っていなければ、新しいエリアを開拓するのではなく、加点して相手の逆転の目を摘む作戦で行くと決めていた。
桜小路さんは絶対的な強さ故に、本来ならば意識をするROUND数をここで初めて意識させられたことになる。
点数を頭をフル回転させ計算する。
…今必要な点数は………………相手との点差は124点………よし!!!!!
大きく深呼吸をして肩を回す。脱力をしてバードにゆっくりと向かう。
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
…ピー『SINGLE 19』
これで180点差。でも最後に、全部のエリアを開けている桜小路さんがTON80を決めちゃうとこれでおしまい。
手から汗がどっと出て思うようにダーツがグリップできなくなる。
しかしこれまで練習してきたみんなの顔を思い出しつつ心を落ち着ける。
…こんなところで終わるような私じゃないってところ、みんなに見せつけなくちゃ!
…ピーピーピー『TRIPLE 19』
『 ※ / ※ 』
「ありがとうございました!!!!」
桜小路さんと握手をして舞台を降りる。
相手のミスが思わぬ形で私たちに幸いした瞬間だった。
いかがでしたでしょうか。試合の極限状態の中でのダーツはとても私にはできません。スポーツ全般でプロとして活動する人のメンタルはどなたも素晴らしいなと感じます。
大学の中間試験がレポートになって、「良かった…」と胸を撫で下ろしていたらそのレポートが4つ、しかも別々のテーマでレポートを書けと言われ………完全に落ち込んでます。勉強するときはしっかりしないといけないのかもしれません。日頃はまだ遊んでいるツケが回ってきたのかな…と内心思いつつレポートを書いている今日この頃です。
ブックマークや感想など、皆様よろしくお願いいたします!!!!!!
良い一週間を!




