太陰 Ⅳ (雛菊side)
今回は初めての雛菊視点です!!!
「いやぁー強かった…」
「ん…仕方ない…あれされたら私も厳しい…」
「でもその次のTIC TAC TOEはやっぱり家での練習様々だったぜ…まあ向こうのチームが慣れてないのにつけ込んだ形だったけどなー。」
「勝てればそれでいい…」
「もー!そこは頑張ったってオレのこと褒めてくれるとこだぞー?最後決めるきっかけ作ったじゃんか!」
「決めたのは薫じゃなくて茉莉だったもの…」
「つれねーなー…まあいつも通りか。」
少し拗ねた表情をしつつも薫がニカッと笑う。
私は桜小路 雛菊。桜小路家の長女。周りは金持ち一族だなんだって言ってくるけれど、正直お金があっても変な男に狙われたりするだけで面倒なことこの上ない。
「そんな遊びなんてやめていい加減家を継ぐ意識を持ったらどうだ…?」
これが父の口癖。今の私は半ば無理を押してダーツを続けている。
不動産会社を経営する私の父は有名人。母もまた有名な大手の企業の社長の娘、簡単に言えば政略結婚、ってこと。今ではそれなりに仲良くしているように見えるけれど、そこに愛があるのかなんてわからない。
でも母はやりたいことをやることにいちいち口出しをしてこなかった。それだけがある意味救いだ。
「次の新人戦で勝てなければダーツはやめてもらう。姉が出て行った今会社を継ぐものは誰もいないんだ。学園を移る手続きはある程度済ませてある。やめたくなかったら結果で示せ。」
父には中等部から結果を示し続けたが一向に首肯する気配は見せない。当たり前だ。姉は自由にいろんなことをやって、私は…なんでここまで頑張らなくてはいけないの?なんて弱気なことは絶対にあの石頭の前では言いたくない。
私に男の兄弟があればこんなに大変な思いをすることもなかったんだろうけれど、私がここまで努力できたのはこの逆境があったからと言うのもあながち間違いではないからなんとも言いようがない。
頑固な父を見返すために、私は血の滲むような練習をしてきた。
小学生の時に友達について行って遊んだダーツはいまだによく覚えている。その友達は今でも憧れの人。
単に矢を刺すだけなのに、時々いい場所に刺さる興奮と、思い通りにいかないもどかしさが、複雑に絡み合って…私はダーツの虜になっていた。
私は母にお願いして、父にも無理を言って家にダーツを置かせてもらっている。普段練習するのはハードダーツ、高校のリーグがあるときはソフトダーツの練習もする。
私の練習は自分を追い込む練習法。その課題を終えるまで寝ないと決めている。
01はHATを3連続出すまではどんなにSTATSが良くても終われないルール。そして1501を15ROUND以内、かつMASTER OUTであがると言うのを必ずやる。そしてBULLを封印しての練習も当然ながら行う。
日によってはこれだけで数時間が熔けることも多い。
BULLとTRIPLE20と19を投げ込んだら次はCRICKETの練習。それぞれの数字のBEDを2回出したら次の数字に。それを2周する。他にもいろんな練習をしてきている。
勿論、ダーツはやめたくない。ここまで頑張ってきたと言うのもあるけれど、やっぱり…あの人に少しでも近づきたいから。
少し不純な気持ちかもしれないけれど、私がダーツを続けているのも、練習をこれだけ頑張れるのも、やっぱりあの人がいるから。
高校で運命のようにまた同じ学園で顔を合わせてしまうとは夢にも思わなかったけれど。でもなんだか心が暖かい気がする。
勝って見てほしい。今の私を。
昔から感じるこの淡い感情の正体をまだ桜小路自身、あまり自覚していないのだった。
「おーい!大丈夫か?だいぶ惚けてたが…」
水谷に急に声をかけられ狼狽する。
「ほら!次行く2人に声かけてあげて!心配してるぞ!!って唯一LEG落としちゃったオレが言っても仕方ねーんだろうけどさ!」
LEGを落としてもやっぱり毅然とした姿が、私にはとても眩しく見える。
「じゃあ…茉莉、奈津美、頑張って…」
「はーい♡茉莉なりに頑張ってみるー!後攻だから負けても文句言わないでね?」
「がんばるよ!あーーーこのLEG終わったらまたほっぺたにうりうりさせてね!!あと私のことはなっちゃんって呼んでって言ってるでしょ!」
「あーもう…わかったから早く行ってきて…!ひっつかないで…」
「照れなくていいから!あーーひーちゃん成分が足りない…!」
「照れてない…!てかひーちゃんって呼び方やめてって言ってるのに…!もう…」
私なんかに付き合ってくれる友達はみんな酔狂な人ばかり。
ふわふわとしておっとりとした雰囲気を持つ東雲 茉莉。彼女はモデルとして雑誌によく載る有名人。でも趣味は絶対に守る主義で、所属事務所のほうも手を焼いているみたい。私と似た境遇で一緒になって、よく話しかけてくれて、チームのある意味ムードメーカー的な感じ。
そして見た目は可愛いけれど1番厄介なのが編入生の羽海野 奈津美。風紀委員として先輩から抜擢されて、仕事や勉強の時には真面目。でも私相手だとどういうわけかベタベタしてくる。
「小さくてお人形さんみたいーーー!!!かわいいー!!!!あぁぁぁ!!…ごめんなさい、名前なんて言うの?」
出会いが壮絶すぎてこれは忘れたくても忘れられない。
本人曰く、
「可愛い女の子をとにかく愛でたい!!」
の一心だそう。迷惑だからやめてと言っても聞く耳を持たない。まあ男の子にされるよりはいいけど。
「でも本当に表情豊かになったよなぁひーちゃんって。」
「誰がひーちゃん…もういい…どういうこと…?」
私はそんなに感情を顔には出さないほうだと思ってたけれど、私も知らないうちにこの数ヶ月で変わったみたい。
「だってオレ普通に楽しめたらいいなーくらいの気楽さで投げてたからさ。正直あんだけ殺気放ってると怖くて初めて一緒に投げた時震えたよ。」
「そう…?意識はしてなかったのだけれど…」
「怖かったよー?中等部上がりの人たちに聞いても口を揃えて近寄りがたいって言ってたもん。」
「友達なんて所詮は人生の中で一瞬道を同じくするだけのただの他人よ…」
「そう?まあオレはこの高等部での生活にかなり期待してるぜ?やっぱりダントツで強いひーちゃんと組めて練習も教えてもらえてさ。オレ中学ではどっちかっていうと友達らしい友達いなくて大変だったし。
正直誘ってくれた茉莉にも、新人でも必死にくらいつくなっちゃんにも、チームを支えてくれるひーちゃんにもみんな感謝してるんだよ。」
私にはどうにもその感謝という気持ちがあんまりよくわからない。何事にも1人で全て打ち込んできたから。同じステージに立つ友達が居られればなんて夢はとうの昔に捨てたはずだった。
私の周りには、誰も居なかった。
強いて言えば心の中の、あの憧れの人しか。でも小学校で別れてから、中学では友達も作らずにただ1人でいた。
でもそれでいいと思っていた。諦めていた。ダーツ の道をただひたすら進むために。
長い父からの圧力の中で、それに押しつぶされまいと抵抗するだけの人生。全てを捨ててダーツに何もかもを全力で注いでいた。
「なんでこんなに私とみんな一緒にいたがるの…?」
ふとそんなことを呟く。
「ん?なんか言った??」
「なんでもない。」
「そう?なんでもないならいいけれど………お!!なっちゃんさすが!!!よーし次勝てば優勝だぞ!頑張ってこーい!」
バシッと背中を叩かれる。
向こうからこのLEGを制した2人が戻ってきた。
LEGカウントは3-1。これで勝てばダーツが続けられる。
「もー♡固い表情はだーめ!お姉さんがよしよしするから元気出して?」
「…生まれたのは私の方が早いから…お姉さんじゃない…!」
「あぁぁぁひーちゃん成分がほしいーー!!」
「も…みんな抱きつかないで…苦しい…」
「そー言いつつもオレから見たらだいぶ安心した表情に見えるけどなぁ?」
「…うるさいうるさい…!」
本当に私のチームのみんなは酔狂な人たちだ…と煩わしく思う桜小路な表情はなぜか心なしか緩んでいたのだった。
今回は今まで短編だったので少し多めに書きました!!!いかがでしたか?いまだ知られざる雛菊の過去はまた別のお話で。
次回はチームValkyrieの戦いの視点に戻ります。次で決まってしまうという後のない星宮姉妹たち。どうなるのでしょうか!!お楽しみに。
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コロナの影響で部活動もできず、勉強もそこまで多くなくて暇なので家でずっとゲームをしています。みなさんがよくやっていらっしゃるゲームを、感想にでもいいんで書き込んでください(笑)
ちなみに私はス○ラトゥーンと、抽選で当たったどう○つの森をやってます。
良い一週間を!




